マイクロソフトが主催する学生向けの技術コンテスト『Imagine Cup 2012』の日本大会が、4月7日に東京・品川の日本マイクロソフト本社にて開催された。
Imagine Cupは、世界の貧困や格差、環境といった社会問題をテクノロジーを使って解決することをテーマとしたITコンテスト。今回は10回目となる節目の大会となっており、世界大会は7月にオーストラリアのシドニーで開催される。
Imagine Cupには、いくつかの参加部門が設定されており、日本大会では“ソフトウェア デザイン部門”と“ゲーム デザイン部門”の2つの部門でコンテストを実施。事前審査を経たうえで、“ソフトウェア デザイン部門”は4チーム、“ゲーム デザイン部門”は3チームがファイナリストとして日本大会に登場した。
■ソフトウェア デザイン部門
ソフトウェア デザイン部門は10分間のプレゼンテーションと5分間の質疑応答で行なわれた。このプレゼンテーションがImagine Cupのポイントで、いくら技術力が高くても、プレゼン力がなければ勝てない大会となっている。
しかし、4チームとも過去の大会をキッチリとチェックしてきているようで、プレゼンについてはほぼ完璧。とても学生とは思えないレベルの高いプレゼンを披露していた。
弓削商船高等専門学校“Ito is wonderful!” |
↑Imagine Cupへ初参加のチーム。子供たちを対象とした機織り支援システムを開発。 |
デジタルとアナログの融合 |
↑世界でも一般的なタイプの機織り機を使い、模様などのデザインや折り方のレクチャーをPCから支援するシステム。 |
東京工業高等専門学校 “All Light!” |
↑昨年に引き続いてのチャレンジとなった東京高専チーム。可視光通信による省電力照明システムをプレゼン。 |
設置ブースも見事 |
↑展示スペースもキッチリと作り込んであり、システムの完成度も高い。 |
同志社大学“Konnect” |
↑前年の世界大会出場者を含んだチーム。世界大会を見据えて、プレゼンの一部を英語で行なった。 |
視覚障がい者向けのウェブシステム |
↑視覚障がい者が意識せずに現状のウェブページから情報を入手し操作できるシステムを開発。 |
慶應義塾大学大学院“Dricos” |
ICチップを使って、飲料販売のソリューションを開発。すでにほかのコンペティションなどでも入賞経験あり。 |
メトロスタイルを導入 |
↑タッチパネルとメトロスタイルをインターフェースに導入。タンブラーに内蔵するICチップのデータを読み取り、購入したい飲料水の量などが調整できる。 |
■ゲーム デザイン部門
ゲーム デザイン部門はプレゼン時間5分、質疑応答5分で行なわれた。プレゼン時間が5分と短く、しかもゲーム デザイン部門のコンテストが日本大会で開催されるのは今回が初めて。そのためか、すべて説明する前にタイムオーバーしてしまうチームがあるなど、プレゼンの質はソフトウェア デザイン部門に見劣りする部分はあった。それでもゲームのできなどは、市販ゲームにも劣らないレベルの作品が集まった。
東京コミュニケーションアート専門学校“Blind Braver” |
視聴覚障がい者と健常者が同じゲーム内容でプレーできる“Blind Braver”を開発。 |
音だけでプレー |
↑サラウンド音響システムなどを使い、音だけをヒントに建物内を移動したり、モンスターとのバトルを行なう。 |
バンタンゲームアカデミー“BLUE FIELD” |
↑3.11東北地方太平洋沖地震をテーマに、効率良くガレキ除去していくシミュレーションゲーム“BLUE FIELD”を発表。 |
操作性を重視 |
↑チュートリアルをこなせば、すぐにプレー方法をマスターできるよう、誰でも簡単に操作できることに重点をおいて開発したとのこと。 |
トライデントコンピュータ専門学校“ブルーム*ブロック” |
↑ゲーム内のパズルをとくことで、荒れた大地に自然が戻っていく“Bloom*Block”をプレゼン。 |
グラフィックやキャラクターが◎ |
↑キャラクターを操作して、立体のコマの上をひと筆書きで歩いていく。システムは単純だが、キャラクターのデザインなどクオリティーは高い。 |
■栄光に輝いたチームは……?
ソフトウェア デザイン部門、ゲーム デザイン部門ともにどのチームも質が高く、ハイレベルな戦いとなった今年度の日本大会。審査員のひとり、マイクロソフト ディベロップメントの加治佐俊一社長も「どのチームも落とすのがもったいない。全チーム世界大会に出したいくらい」と、審査に頭を悩ませていた。
審査の結果、ソフトウェア デザイン部門の優勝は東京工業高等専門学校(大川水緒さん、赤松駿一さん、田畑愛実さん、Tan Tun Jieさん)に決定。このチームは昨年もチャレンジして、惜しいところで世界大会出場を逃していたこともあり、発表の瞬間、リーダーの大川さんは「やったー」と歓喜の声。目を潤ませて喜んでいたのが印象的だった。
東京高専チームが優勝 |
↑昨年の敗戦をバネに1年間、ソリューションやプレゼンに磨きをかけてきた東京高専チーム。7月のシドニーでも健闘を祈る! |
ゲーム デザイン部門はトライデントコンピュータ専門学校(馬場翔太さん、野中志帆さん、内木穂乃香さん)の優勝が決定。ただし、ゲーム デザイン部門のほうは、世界大会に進むために、さらにオンラインによる審査を通過する必要があるため、シドニーへの出場はまだわからない。ぜひとも審査を通過してほしい。
以上が今年度のImagine Cup日本大会のレポート。Imagine Cupは、技術的なスキルの高さはいうにおよばず、心も“熱い”学生の姿が見られるのが特徴だが、それは、コンテストの参加者だけではない。今回の日本大会の様子はUSTREAMを使って配信されていたが、その運営も実は学生のボランティアによるもの。
たんなるコンペティションというだけでなく、さまざまな面から学生の支援、レベルアップを担っていくというのが、マイクロソフトとこのImagine Cupの狙い。
7月の世界大会でも彼ら日本の学生たちの熱い姿を期待したい。
生中継も学生が担当 |
↑当日は、会場からUSREAMにて放送が行なわれ、配信はボランティアの学生が担当していた。このほか会場スタッフとしてもたくさんの学生が参加していた。 |
クラウディアさんもかけつけた! |
↑会場にはクラウディアさんの姿も! 彼女もImagine Cupを応援しているのだ。 |
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