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iPad『7notes』アプリから届いた、85歳母からの手紙

2012年01月01日 13時00分更新

 2011年末、週刊アスキーの年末進行の最中に、「浮川夫妻を囲む昼食会があるんですけど、牧野さん行きます?」とのお誘いメールが来ました。もちろん、ふたつ返事で承知。(浮川専務萌えの私が行かないワケがないじゃないですか……!!)

 浮川夫妻とは、手書き文字入力IME『7notes』開発会社、metamoji社長と専務のご夫婦。

metamoji

 日本一快適な手書き文字入力アプリ『7notes』シリーズが魅力的なのはもちろんなのですが、この方たちの妙に息が合ったやりとりやボケ突っ込みとかが“将来こういう夫婦になれたらいいなあ”と思うぐらいステキなのです。そんなわけで、当日。集まった他社プレスの皆さんとともに、おいしいお寿司やサンドイッチ、メンチカツ(!)をほおばりながら社長のお話を聞かせていただきました。

 パソコン黎明期の日本語変換システム開発に、ジャストシステム社長として関わった話からはじまり、昨年2月に発表した7notesにかける思い。このあたりは以前のインタビューで詳しく伺っているので参照していただくとして、やはり思いが強いのは“手書き入力”そのものについて、なのでした。

手書きだったら“誰でも”使える

浮川社長「インターネットの便利さ、ITのすさまじさ、ここ何年かでアッという間にいろいろなものが出てきて、本当に変化が激しいですけども、全部コンピューターを使えるということが大前提ですよね。そんな時代に『誰でもが、これなら使えるぞと思うもの』が欲しい。“誰でも”、がたいへん重要だと思うんです。

 私たちが当たり前のように囲まれているこのIT、インターネットの世界をまったく体験しない人たちが、日本でも何千万人もいらっしゃるわけです。でも、これから5年経ち10年経ち20年経ち、今の私のような60代……いわゆる団塊の世代も含めて、この先インターネットやコンピューターと触れ合わない生活というのは考えられない。ただ、実際にこのままいくと、インターネットを使う人たちとそうでない人たちの、巨大なグループに分かれてしまうのではないかと。日本でそういうことが起きてしまうのが、私とすれば許せないぐらいに思ってまして。

metamoji

 そこで、“手書き”です。手書きだったら“誰でも”使える。たとえば、市役所のカウンターで出生届けとか、引っ越しであるとか。公共機関、まあ銀行でもいいですが、キーボードは置いてませんよね。私たちからすれば、コンピューターでパッと打ったほうが速いでしょ。住所とかそんなもの。コンピューターがカウンターにあってもいいと思うんですが、残念ながら置いてません。おそらく公共機関の人は、こういうことを訊くのが嫌なんだと思います。

 「コンピューター使えますか?」

 (相手の人がコンピューターを)使えるかどうかは、外見じゃわからない。しかしその一方でもうひとつ、銀行や市役所のカウンターに行って絶対に訊かれないことがあるんです。

 「漢字書けますか?」

 それは裏返すと、誰でも自分のこととか必要なことは漢字で日本語を書けますね。これが当たり前ですよね。“誰でも”、漢字が書ければいいんです。ただ、紙じゃなくて、コンピューターや、タブレットに手書き入力というのが、そのうち当たり前になるだろうと私は思っています。

 電子化することのメリットはいろいろあるんです。コンピューターのかな漢字変換で漢字が書けない人を増やしてしまった私たちが、交ぜ書き変換のできる7notes with Mazecを出すのはマッチポンプではないかと言われそうですが(笑)」

metamoji手紙

浮川社長「で、えーっと、……ステージママさん?」

浮川専務「はいはい!」

浮川社長「なにをご説明したかったんですっけ?」

浮川専務「自慢話もしなきゃ」

●85歳の母親から、iPadで手紙が届く世界

浮川社長「あ、自慢話。そうだ(笑)。自慢話というよりは、こういう世界になったらいいなあというのが少しずつ見えてきたのでぜひともご覧いただきたいのですが。

 年1回、四国のお袋を東京に呼んで、東京で遊ぶんです。去年(編集部注:2010年)、開発が始まったばかりの『7notes』を渡して、おっかなびっくりで書いてもらったところ、できたわけなんですね。実は『一太郎』(PC用日本語ワープロソフト)を開発したとき……今から27~8年ぐらい前で、お袋は55~6歳ぐらいの歳ですね。キーボードを見て教えるんですよ、A、B、Cって。そしたら「ローマ字で?」、「私もういい、今からこんな勉強しても」とか言いはじめて。

 今は85歳。1年ぶりにまたお袋が来て、4日ぐらい東京にいたんですが、四国に帰ってですね、すぐに送ってきました。私たちのキャッチフレーズ、“これなら使える”は実はお袋の言葉なんです。」

metamoji手紙

「変換も教えたんですが、そういえばお袋、字がうまい(笑)。書いたままでいいから、『7notes』のままでいいから変換しないでねと。送ってきたものを見まして、私もものすごく感激してですね。あ、これはいろんな人に見てほしいなぁと思いはじめて。

 で、2週間ぐらい経ってから2通目が来まして、これもおもしろいんですが」

metamoji手紙

「人に見せるためのものではないんで生々しいんですが、“和ちゃん”は私です(笑)。60歳にもなって(笑)。

 で、法事で皆が集まるので『FaceTime』しませんかと(笑)、お誘いを受けたんですよ。いいなあと。これこそ“誰でもコンピューターが使える世界”ですよね。メールも、せっかくこういうものがあるんだったら、手で書いたらいいと強烈に思いまして。

 法事で集まった親戚から『FaceTime』のあとに寄せ書きメールももらいました。絶対“あとから変換”できなそうな達筆とか(笑)。みんな80歳近いのに、はじめて使ってあっという間に送ってくるんですよ。いいですよね。今はソーシャルネットワークとかで昔からの友達がまた集まったりとか、新しいつきあいのかたちがコンピューターで起こっているわけです。何億人とFacebookを使っている。そうするとお互いのそういうつきあいの中でなら、手書きがいい。友達だからこそ、親子だからこそ、恋人どうしだからこそ、メールは手書きのほうが絶対にいいと思いますね。

 デジタルは冷たいとかいまだに言われる人がいますけど、絶対そんなことはなくて、今までの温かい手書きで慣れ親しんだ世界とコンピューターの良さの融合は、今までなかったほうがおかしいと改めて思うんです。もちろん『7notes』や『Mazec』をビジネスの場で使うというのも一方でやっていくんですけど、こういう人間の心に通じるような事業をしたいなあと。

 インターネットがどうだこうだというテクニカルなところで世界が変わるぞみたいなことが、一種の脅しみたいなところがありましたが、そうじゃないんですよ。みんなの生活の中にコンピューターが入って、こういう世界でみんながやりとりできて、それが広がる。そうなったら今まで言われてきた世界でない、もうちょっと違った世界が探れる。改めて誰でも使える世界になるんじゃないかと。そういう世界が未来の中にあったらいいなあと。」

●キーボードに追従できるぐらい速い手書き入力を目指して

浮川社長「アメリカやヨーロッパの人はキーボードを口述筆記ができるぐらいのスピードで使うので、ひとつチャレンジとしてですね、もしキーボードを打つぐらい速い入力法が見つかれば振り向いてくれるかもしれない。それを私達がやってみるのはおもしろいじゃないかと。それが英語版のコンセプトですね。“キーボードに追従できるぐらい速い手書き英語入力システム”を目指しています。まだ中途半端かもしれませんが。慣用句やよく使うフレーズを学習して推測変換。比較的長い文章も変換候補として上げるようにしました。アメリカやイギリスでデモを見た人が、おもしろいと驚いてくれます(笑)」

metamoji

「日本の場合、文章を先々考えながら書いたりすると、変換するときに、先のことを考えている頭が現在のことに引き戻されるんです。ある作家の方が言っていたんですけど、かな漢字変換をやってると、いろんなシナリオが少なくなると。変換が正しかったのか、この言葉は正しいのか……。

 ちょっと先の文章を考えながら今の文章を打っているから時差があるはずなんです。それらのことは自然にやっているんですけど、漢字変換にエネルギーを使ってしまって先々書くことのバリエーションが少なくなる。英語には変換というものがないわけですから、手書き入力と同じことを彼らはやっているわけです。やっとこれによって欧米のキーボードで“A”と打てば“A”になる連中に追いつけるかもしれない」

●手書き用のペンツール『Su-Pen』、2012年は常時買えるようになる?

浮川社長「12時から販売開始と言っておいて、3分後に在庫なしというのは、“本当に売ったの?”と言われそうでまずいんですけど(笑)、大量生産ができなくて。一所懸命つくってもらってるんですけど……。軸を燕三条のベテラン職人さんがつくってくださってるんです。お金を出せばつくれるだろうという方もいますが、そんなことはなくて、なかなか需要には追いつかない。人気があって売り切れるのはうれしいことなんですけど、お客様には“なんぼ待ってもだめじゃー!”とお叱りを受けています。」

Su-Pen



 Evernoteとの高機能連携を果たしたiPad版『7notes』とiPhone版『7notes mini (J) for iPhone』も大好評とのことで、楽しいお話はつきなかったのですが、それはまた別の機会に。今後も牧野&KONOSUはライフワークとして浮川夫妻を追いかけさせていただきたいと思います(笑)! ちなみに『Su-Pen』に関しては、@MetaMoJi をツイッターでフォローしておくと、発売情報が得られますよ(ジャイアン鈴木はその方法でゲットしました)。

 ついでにおまけ情報として、現在、期間限定で通常980円の『7notes with mazec製品版』を 50パーセントOFFの490円、通常10日間試用可能な『7notes with mazec体験版』を30日間に試用期間延長する新年キャンペーンを1月10日まで開催していますよ。気になるかたはぜひ試してみてはどーでしょう。

matamoji手紙

■関連情報
『7notes with mazec製品版』
『7notes with mazec体験版』

『7notes for iPad』
App Store価格:800円
(バージョンと価格は記事作成時のものです)
7notes for iPad - 7 Knowledge Corporation

『7notes mini (J) for iPhone』
AppStore価格:450円
(バージョンと価格、対応OSは記事作成時のものです)

7notes mini (J) for iPhone - 7 Knowledge Corporation

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