休日に趣味でつくりはじめたスマホペンが、いつの間にか社内でいちばん評判の良いペンになっちゃってた、というお話。全4回です。
『Su-Pen(スーペン)』 ●MetaMoJi ●価格2980円
●全長 約106ミリ、重量 約20グラム
「最初は適当だったんですけど
ちょっといいのができると、みんな「おー!」とか言って喜ぶんで
うれしくなっちゃって(笑)」
――まずは開発の経緯などを教えてください。
岩田さん
「まぁなにしろ我々は『7Notes』という手書き文字入力アプリをまず作りはじめたわけです。開発に入ってすぐですかね……やっぱり「いいタッチペンが欲しいねえ」という話になって。で、最初探したんですが全然なくて。我々が初めて見つけた”使えるスタイラスペン”はゴム製のものだったんです。それはもう、すごいな~って思いましたね。
でも、1ヵ月ぐらい使ってると、書き味が変わってきて、だんだん滑らない、書けなくなって。本当のところは我々わかんないんですけど、どうやら滑るための特殊なコーティング剤がだんだんはげてきたようなんです。どうしても我々、書き味とか、手書きの気持ちよさにこだわりたいということを常々言ってましたら、開発チームの植松がですね、深夜と土日の時間を使って、ちまちまとつくりはじめたわけですよ。」
植松さん
「えっとねえ。どっかいっちゃたものもあるんですが……」(といって試作品を出す)
――おお~。全部ちょっと違いますね。
岩田さん
「試行錯誤ずっと繰り返してきて、でも途中でこれほんとに商品化するのか? とかいうのもあったんですよね。我々はソフトメーカーで本業ではないので。ただやっぱり、いろんなメーカーさんが新しいものを出してくるたびにまあ、買って使ってみるけど、どうも、このペンはひと味違うぞ、と。ならば真剣に商品化を考えようじゃないかと。」
植松さん
「だんだんわかってきたというのもあるし……だんだんこう、自作の完成度が上がってきた(笑)。最初は適当だったんですけど。工夫してるうちに、ちょっといいのができたから「使ってみて」って渡すと、みんな「おー!」とか言って喜ぶんで、喜ぶとうれしくなっちゃって(笑)。工夫してるうちにだんだん自分でもつくりながらシロウト離れしてきたぞ……みたいに思いはじめて(笑)。自作のペンの精度がどんどん上がっていっていくなか、市販のペンを買って使って、買って使ってしては、「あれ?」っていう感じになってたよね。それでもまだほんとに商品化するとは思ってなかったですけどね。」
岩田さん
「あれこれ言葉で言うより、実際に書いていただいて。」
(実際にiPadにSu-Penで書かせてもらう)
―― ……おっ!!
岩田
「ね。瞬間的にわかると思うんですけど、まったく違うという。」
植松さん
「さらさら~って、もっとスピーディーに書いていただくとわかりますよ。」
―― ……やばいですねこれ(笑)
岩田さん
「クセになるんですよ。どんどん書いていただくと、そのうち、それが普通になります(笑)。なにしろその「おっ!」という驚きが我々にとってはすべてなので。」
(狂ったようにクスクス笑いながら文字や絵を書く牧野とそれをうれしそうに見守るおふたり)
――これ、ホントやばいです!(笑)
植松さん
「書いていただくとわかるんですけど、プニプニしてない。普通のゴムのだと結構凹むんですよね。やはり字を書くときはしっかりしたタッチで書きたい。Su-Penでも1ミリ弱凹むんですが、クッと止まるんです。そうすると芯のある書き味になる。もうひとつは、滑りですよね。長く手書きで書いてると疲れるんで、それを疲れないようにすると。ずっと押さえ続ければ書けるんだけど、これは乗せて少しずらすだけで書ける。」
――自重で書けるんですね。
(社長登場)
浮川社長
「作家さんとかね、たくさん書く人の万年筆って重たいんですよ。それってね、お金があるから重たいものを使うんじゃなくて、書くことだけなんですよ。軽いと押さえつけるんですよね。これ(他社製品)なんかも非常に軽くてすばらしい製品ですけど、ついつい押してるんですよね。だからたとえば、一日中というと大げさですけど、議事録をどーっと書いたりしてるとですね、その差がよくわかるんですよね~。」
さて、次回はスマホペン『Su-Pen』の構造についてのお話です。(つづきます)
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