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美しさと圧巻のギミックを両立、扇あるいは蝶のようにカバーが開く

Bang&Olufsenが有機ELテレビ「Beovision Harmony」を公開

2019年10月27日 10時00分更新

購入すべく家族会議中、オダギリジョー氏も大絶賛

 発表会では、俳優で映画監督のオダギリジョー氏、建築家(スキーマ建築企画)の長坂常氏、Bang&Olufsen本社から来日したCreative DirectorのKresten Krab-Bjerre氏などが登壇。俳優で国際短編映画祭の代表も務める別所哲也氏の司会で、製品や映画の愉しみ方、ライフスタイルについて語った。

映画監督で俳優のオダギリジョー氏が登壇。自身が監督した映画『ある船頭の話』(9月から公開中)に触れながら、Beovision Harmonyの魅力を語った。

 オダギリ氏は、仕事柄、劇場に脚を運ぶ時間がなかなか取れず、作品にコメントを寄せる際も、家で観て答えるケースが増えているとした。結果として、シアターで見る重要性を見失いがちになっていたが、「自分で映画を作り、改めて映画は暗闇の中、大画面で観るものであり、映像と音響が一体となった総合芸術である」と改めて感じたそうだ。

 映画作品は映画館で観るために作られている。家庭ではその迫力をなかなか再現できない。一番の問題は音だろう。オダギリ氏が監督した『ある船頭の話』では、色の美しさと同時に、虫の音、川の音、鳥の鳴き声など、音楽とは異なる音にこだわりを入れているそうだ。これらの表現が劇場にどこまで迫れるか。その一端をBeovision Harmonyで確認することができた。

 デモでは、この作品から2つのシーンが選ばれた。ひとつは美しい風景の描写力。舞台は柄本明氏が演じる船頭のトイチが暮らす近代化以前の山村で、橋の建設が進む中、まだ残されている美しい情景が収められている。この再現が細かく印象的だった。また、合わせて収録された、様々な環境音のディティールも克明に再現されていた。この再現力については、映像面では「奥行きある色合い、グラデーションの深さ」、音響面では「音の一粒一粒が際立って聴こえ、高い音も低い音も圧縮されすぎず、必要なところがしっかり出ている」とオダギリ氏も高評価だった。

発表会のデモではBeolab 50を4台追加した5.1ch再生になっていた。

 もうひとつのシーンは、内面的なもので、5.1chの音響を利用して、衝動的に湧き上がるトイチの言葉が空間の様々な場所に浮かんでは消えていく様が表現されている。四方八方から回り込んで聴こえるトイチの声がシーンの迫真性を上げていた。さらに、モノクロの映像は、クッキリとして深いコントラストを持ち、明暗や皮膚の微細な質感まで再現していた。この映像には、暴力性を強調するため、一部には鮮烈な赤が用いられているが、その発色の良さが、映像の衝撃性をさらに強くしている。オダギリ氏も「赤がくっきり出る」点と高評価。「漆の赤が好きでその赤に近づけたかった、その意図をしっかり感じられる色が出ている」とした。

 オダギリ氏は、最もいいのは映画館に脚を運ぶこと。しかしそうできない人でも、この水準のシステムがあれば、作品に込められた意図や狙いを感じられるのではないかとコメント。「(Beovision Harmonyは)本当に欲しい製品で悩んでいる。いまは家族会議中」と話し、見るだけでワクワクする画面がせり上がってくるギミックなど、自慢したくなる製品だと絶賛した。

リビングにとどまっていることってありますか?

 木組みのフレームの上にBang&Olufsenの様々な製品を並べたデモは、二子玉川の蔦屋家電にあるBang&Olufsenのショールームで着想を得たものだという。「二子玉川のショールームに脚を運んだ際、Bang&Olufsenの製品には大小さまざまなものがあり、その周りを歩いていくと、音がループしていくような感覚があった。街歩きをしている際、通りすがりの音が耳に入ると、そこから物語を感じることがある。そんな体験を表現したいと思った」と長坂氏は話す。

長坂氏と司会の別所氏

 そこでグリッド状の枠組みを多数用意し、和の関係性に重ねる展示にしたという。電源やケーブルなどはレールを使って木の裏に配置しており見た目もシンプル。「しっかりと作られているので枠の上に腰かけても大丈夫だし、右から回る場合と、左から回る場合の体験がどう異なるかなども試しながら、音がループする感覚を味わってほしい」と話していた。

コペンハーゲンから初来日したというグローバル向け広報の責任者Aiian Fatum氏。北欧スカンジナビアのデザインと日本のデザインの共通性についてコメント。初来日して東京を歩き、日本のデザイナーによって作られた家具の中に、それと信じられないほど北欧的なものがあって驚いたと話していた。

 加えてトークショーの中で、「あるとき、家で座っている時間はあまりないな」と気付いたとコメントし、「いろいろな場所を移動しながら断片的に情報が入ってくるのが今時のライフスタイル。リビングをテレビ中心の環境として構成し、その前に座って時間を過ごすのではなく、移動しながら家の中にランダムに置かれたものを使うスタイルが増えている。これに合わせ機器もユーザーに合わせて指向性などを調整し、最適な位置で向かってくる技術が出てきていると勉強できた」とBang&Olufsen製品から得たインスピレーションを紹介した。

デンマーク本社から来日したクリエイティブディレクターのKresten Krab-Bjerre氏

 この長坂氏のコメントに対してBang&Olufsen本社のクリエイティブディレクター、Kresten Krab-Bjerre氏は「どのような人が何のために製品を使っているかは常に意識している」と回答。そのためには機器の側に柔軟性が必要で、最新の技術を取り入れながらリビングにフィットする製品の開発を心掛けているとした。

 Bang&Olufsenの新製品は、単純な映像の美しさ、音の良さから一歩踏み込み、音のある空間をどう作り、それを現代のライフスタイルにどう調和させるかを考えたものになる。AV機器としてのクオリティはもちろんだが、生活の中での位置づけを意識させるものになっている。

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