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IoTプロジェクトを推進するためのノウハウが満載

友岡CIOが語る「社内に味方を作り、IoTで成功していく方法」

2018年12月27日 07時00分更新

通信機能を持たないモノを強引につなぐ意味

 ひとつ成功すれば、「もっとこんなこともできるのでは」という声が寄せられるようになる。次の要望は、電圧センサーのリモート監視だった。エレベーターなどにはメモリハイコーダという、記録機能を持ったオシロスコープのような装置が設置されている。定期的にSDカードを回収、分析することで機器の異常がなかったかどうか確認していたが、これをリモートで監視したいというのだ。

通信機能を持たないメモリハイコーダをIoT化

「メモリハイコーダはSDカードへの記録を前提とした装置で、通信機能もI/Oポートもありません。そこでSDカードを東芝のFlashAirに変え、WiFiでデータを飛ばせるようにしました。SORACOM SIMを挿した通信機器を経由してクラウドにアップロード、リモートでの監視を実現しました」(友岡さん)

 通信機能を持たない、本来は他の機器と繋がるつもりがないモノを強引につなぐ――それを友岡さんは「荒ぶるIoT」と呼ぶ。繋がるつもりがないモノ同士を繋げてしまうところから「荒ぶる」と名付けられているものの、その手法は目の付け所といい構成といい、シンプルかつスマート。

成功パターンを押さえ、ときには荒ぶることも厭わない姿勢が大切

「SDカードスロットにFlash Airを挿してデータを収集するのは、現場ウケがいいので最初の一歩にお勧めです。割と簡単にできるし、具体的なことはKYOSOさんがしっかりサポートしてくれます」(友岡さん)

IoTは成功パターンにはまる問題を探して取り組もう

 緒戦の戦い方を語ったエピソード1に対して、エピソード4では「現場からの変革をいかに起こすか」として、変革を続けるために必要な取り組み姿勢を語った。中でも重視しているのは、「現場に溶ける」ことだという。現場が見える場所に行き、現場の人たちがどのように業務を進めているのかしっかり観察して改善点を見つけ出すのだという。そのためにフジテックでは情シスのメンバーを1ヵ所に集めるのではなく、ばらばらにしてそれぞれの現場に席を置いているという。

 なぜ現場を見ることが重要なのか。「その理由をわかりやすく例えようとして、かえってわかりにくくなっている」と評判となっている例えを友岡さんは披露してくれた。

「イワシの群れって、海では群れになって元気よく泳いでいますよね。イワシの動きを知るには、海にいるイワシを見ないとダメなんです。なぜそんな風に泳ぐのか、現場の要望を知りたければ現場でじっくり観察すべきです。現場の声を聞きたいからといって、決して会議室に集めてはいけません。海ではいきいきしていたイワシを、会議室に集めると死んだ魚の目になってしまいます」(友岡さん)

いきいきと泳ぐ現場のイワシ

 なるほど、こうして文章にしてみると筆者もよくわからなくなってきた。友岡さんのプレゼンで聞いたときには「おお、なるほど!」と思ったのに、不思議だ。そうか、こういう話を聞くのも現場じゃなければいけないんだ、きっと。おっと、話がそれてしまった。

死んだ魚の目をした、会議室のイワシ

 友岡さんが力説したのは、現場の人を会議室に集めても意味はない。逆に情シスの人間が現場に行って業務をしっかり見ることが重要なのだ。現場に足を運ぶことで、業務の実態を深く知る以上の効果もあるという。

「現場に足を運ぶと、現場の人と心が通い、課題が自分ごとになります。自分ごとになれば頭が働くようになり、頭が働けば手が動きます。そうして作ってみたモノを持って現場に行ってダメ出しをもらう。このループが現場に即したシステムづくりにつながります」(友岡さん)

既存のPDCAサイクルの順番を変えていこう

 また、変革を続けるためには従来のPDCAサイクルを変えることも必要だという。Plan→Do→Check→Actionではなく、Do→Check→Action→Planの順でサイクルを回す。しかも、Doの段階では数多くの施策を同時にトライし、効果の高そうなものだけを次のステップに進めてブラッシュアップしていく。

たくさんのトライを並行して進め、有望なものをブラッシュアップするDCAPサイクル

 「サービスを比較検討する場合も、良さそうなサービスを最低数購入したり無料トライアルに登録したりして、まず買う。実務で実装して使ってみて、それから採用判断をする。ベンダーの営業担当者を呼ぶのはその後です」(友岡さん)

 この手法は、トライアンドエラーを短時間で繰り返せるだけではなく、ベンダーに対してイニシアチブを握れるメリットもあるという。

 「導入を検討しているんだけど、と連絡してもメールで資料が届くだけかもしれません。でも『いま10ユーザーなんだけどもしかしたら3000ユーザー分契約して全社展開するかもしれない』って言ったらどうですか。新幹線ですぐに飛んで来ますよ」(友岡さん)

 短時間でトライアンドエラーを繰り返すことのメリットも繰り返した。特に、「良さそうだと思ったものはまず買え」と友岡さんは語る。借金はできるけれど、時間は借金できないし、取り返せないからだ。さらに、失敗は学習コストと考えるべきだとも語った。できるだけ早く失敗して修正することで、知見を蓄積していく。「事例がないと聞いたら、心を震わせて喜ぶべき」というから、徹底している。

 最後となったエピソード5では、情シス不要論を取り上げた。2010年頃までは、製造と販売をつなぐために情シスが役立っていたが、R&Dやマーケティング、サービス部門をサポートできていなかった。これからは、社内で一番付加価値を生み出している部門を探し、そこをサポートしていくことが情シスの役割になると友岡さんは語る。

「そのためには内製力を再獲得しなければなりません。クラウドは自分で作ってなんぼの世界です。また、上の人にクラウドを説明することに四苦八苦するのもやめましょう。総務部門からも独立すべきです」

日本でCIOを職業として確立させるため、友岡さんの戦いは続く

 自身の目標を、日本でCIOを職業として確立させることだと友岡さんは語る。アメリカの企業にはCIOがいるのが当たり前で、日本人が聞いたらびっくりするような報酬をもらって活躍している。そういう立場を日本でも確立できれば、エンジニアのキャリアパスにも選択肢が増えることだろう。引き続き武闘派として、友岡さんには先頭に立って戦い続けてもらいたい。

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