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スタートアップDive!特別編

海外出張に備え短期集中で英語学習!最新教育工学が話題の「ENGLISH COMPANY」を体験してみた

2017年05月31日 09時00分更新

1日1時間の勉強時間の確保すら厳しいケースはどうなるのか……!?

 誰にでも当てはまるが、仕事で忙しい時期はどうしても時間が取れないのは仕方ない。そこに加えて今回はプライベートで子供(0歳児)の世話も重なり、学習ができるのは遅い時間となり、さらに深夜や早朝でのミルクなども必要だったため、仕事に支障がない範囲で「集中できる勉強時間」をいかに確保するかが重要となった。

 実際、筆者が学習序盤で1日にできた学習内容は下記のとおり。基本的には深夜または早朝が中心となった。

●単語学習(1日100語目安):30~45分
●シャドーイング/オーバーラッピングを音声収録してLINEでトレーナーへ送信:15~30分

 単語が覚えきれないぶんは、昼の食事時間を使ったり、スマホに音声データを入れて移動時間にひたすら単語をリピートして聞いていた。時間がない場合、細かい積み重ねをいくつ作れるかが勝負の分かれ目だ。

 時間がないときの学び方もトレーナーから実際のレッスン・LINE上で指導が当然入る。参考までに筆者のLINEでのやり取りから見えるざっくり3ヵ月での自習時間を確認すると、下記のとおりとなった。

●1ヵ月目:週平均4.75時間+2.5時間(週1回の演習)
2週目から、音声変化に慣れ始めて成長を実感。学習自体が楽しくなるが、時間をいかに確保するかが死活問題に。

●2ヵ月目:週平均5.6時間+2.5時間(週1回の演習)
中高での単語の中途半端な記憶が邪魔をして、基礎的な単語に苦戦。年末年始で学習時間はアップ。

●3ヵ月目:週平均8.6時間+2.5時間(週1回の演習)
文法解読での課題が単純に増加したため、必然的に勉強時間もアップ。追い込みでの学習が増加。

 じつは、2ヵ月目までは実質1日1時間の確保すらできていない……。さらに、思った以上にハードだったのが毎週行なうTOEICの演習で、週末での2.5時間もの“集中しなければならない時間”の確保が今回は非常に厳しかった。必然的に、家を離れた勉強場所の確保が重要となり、テストでの集中という意味では、カフェなど飲食店は不向きで、会社または図書館を使った。ENGLISH COMPANYのスタジオでも自習は可能だが、自宅近所で勉強したかったため今回は使わず。またスタジオでは居残りの勉強もできるが、残念ながらその時間もなかった。

トレーナーとのやり取りはLINEで行なうが、指導や心温まる応援メッセージをいただけた。筆者はSNSへの愛着が不足しているため、かなり事務的になっていたが、とくに問題はなし

 上記が実際のやり取りの一部。英語版トレーニングジムというイメージだと、いかにも厳しくハードなレッスンが待ち受けているかと思われるが、実際はそこまでハードではない。最初に厳しさの設定もできるので、一番厳しい指導内容でお願いしてみたが、仕事で詰められるのに比べれば当然ゆるい。重要視されているのは、学習時間の確保だ。

 授業と教室の雰囲気をたとえるなら、大学の文系サークルのようなまったり系だ。個別ブースでもないため、各教室ごとの雰囲気もありそうだ。当然、家庭学習ができてないときには厳しいご指摘もあるが、深夜まで詰められるようなゴリッゴリなものではなく、学習の進捗管理を重視している印象だった。

英語の音声アナウンスから変化をまず実感

 さて、こうした学習を経てSXSWへ乗り込むわけだが、その前からすでに変化はあった。わかりやすく驚いたのが、国内で駅など公共交通機関のアナウンスが自然に入るようになったことだ。

 新幹線や電車で流れている英語の案内、なにげなく聞いている人は多いと思うが、どこまでのその単語を細かく理解できているだろうか。いままで「なんとなくわかる」だったものが、あるとき確実に発音・単語レベルでわかるようになった。そのほか、洋楽などでの歌詞の場合、音声変化や短縮部分がわかることで、理解できなかった音の飛び方がわかるようにもなる。

音声変化については、アプリ「リスニングハッカー」でその端緒が理解できる

 当たり前だが、英語学習では基礎力があるかないかは非常に重要。期間中、1500ほどの単語を覚えていって、さらに英語の意味のかたまり(チャンク)の作られ方、文法の基礎を理解すると、想像以上に理解度は上がっていった。

 結果、くせのない “きれいな” 英語なら聞き取れるようになった。実際の出張でも、空港からシャトルバスを手配するためにホテルに電話し、待ち合わせ場所に行くような流れはどうにかできるレベルに。TVで流れているCMやキャスターの話す内容も理解できた。

 とはいえ一方で、ホテルのロビーで食事をしている英語ネイティブ同士がラフに話す英語を理解するのにはもう少し学習が必要だと感じた。だが、たった3ヵ月の英語学習でここまで連れていってもらえたのは筆者としては非常に助かったし、今後の自主学習の入り口は十分に見えた形だ。ちなみに、もともとある程度の英語力のある上級者の場合は、さらに伸びることもあるという。

今回のSXSW参加セッションは下記のとおり。「Humans, Machines & the Future of Industrial Design」「Dawn of the Drones」「Making Law on Mars」「Accelerator Pitch: Social & Culture Technologies」「Ray and Amy Kurzweil on Collaboration and the Future」「Brain Wearables」。一番難しかったのが「火星に法律を作る」セッション

 そして今回、調子に乗ってSXSWでのセッションにも挑戦してみた。セッションの理解は専門的な語彙や背景知識をようするためスルーという予定だったが、個人的な興味もあり参加。中でも特に、IEEEによる「Brain Wearables」は内容も含めてきちんと理解できた。脳波・ウェアラブルに関連するセッションということで、国内スタートアップでの取材で得た知識があったこと理解の助けとなった。やはりジャンルごとの事前知識は必須と言える。

 なお、3ヵ月の英語学習の目標の1つとしていたトレードショウや展示会場での取材はほぼ問題なし。聞きたい質問は決まっているので、出身のなまりによっては聞き取りにくいケースでも、概要レベルでは普通に理解できた。同じくピッチイベントについても、スタートアップによるピッチ部分は大丈夫。だが、パネリストとの質問コーナーでラフかつ早口な英語になってしまうと、ついていけないというレベルだ。

 さらに勢いのまま、街中でのミートアップにも挑戦してみた。事前にSXSW Socialで連絡を取り合っていたドイツのSNSサービスを手掛けるスタートアップ関係者との対話で気になったのは、聞き取ることはできても、細かいニュアンスを正確に伝えるのが難しかったことだ。グローバルでのSNSサービス展開と比べた形で、日本の地域特性をうまく説明できるレベルに達するには、事前の準備が足りなかった。

ピッチイベントは世界共有の文脈なので、初心者向けと言える。面白いのがあれば、そのあと展示会場などで話を聞いてもいい

TOEICスコアは580から765点にアップしたが、重要なのは継続性

 「さすがに、3ヶ月でペラペラ話せるというわけにはいきません……」(恵学社の岡代表)

 今回、短期間でTOEIC800点オーバーという華々しい学習方法を頼っての最初の面談でもらった返事はじつは上記のような現実的なものだった。

 続出というレベルでの800点にはたどりつかなかったが、結果的にTOIECスコアは185点増えた。なじみのある内容ならセッションもわかったし、ブース取材などもこなせた。だが話すスキルを身につけるには、さらに継続した学習が必要だと感じる。重要なのは、身につけた強固な基礎力をいかに生かすかだ。

 継続方法について聞いてみると、筆者の場合は、わかりやすいステップアップとして自分の仕事や興味が関連する英語の文章を中心に学べばOKだという。今回は子育て案件との並行実施での実績だったが、普段の暮らしの中でもてあましている時間を勉強にあてられるのであれば、もう少し実績は伸ばせそうだ。

 社会人が忙しいのは当たり前。いかに戦略的・効果的に学べるかという部分で、ENGLISH COMPANYはまったり仕様(あくまで個人の印象)ながら90日で上がる実績の仕掛けは十分に感じられた。ごりごりに詰めるのも無理で、効率的かつスマートに勉強したいという人には向いているといえる。ここで勉強が終わるわけではないので、勉強の覚え方を知るという点でもオススメだ。

TOEICでのスコア分析。上が開始前で、下が最終結果。左側のリスニングの伸びと、文法理解の部分で効果を実感いただけると思う。悲しくも下がっている語彙の点数だが、個人的にはこの3ヵ月で相当理解できる単語は増えていた。あとはもう少しきちんと勉強時間を確保できれば普通に800点を超えていたかも? そういう意味では指導してくれたお二人には申し訳ないところも……

 ちなみに意外だったのは、思った以上にアプリを学習に使わなかったことだ。結局のところ、学習デバイスとして、まだまだ紙の実力は強い。アプリはあくまで時間・場所が限られる隙間用のサポートとして使うのが便利なようだ。大事なのは時間調整の方法と学習内容のコントロールであり、ENGLISH COMPANYの場合、それらの中に勉強にハマる成長実感や楽しさを継続させるためのメソッドが散りばめられている。

 余談としては、自身の中学・高校での英語学習がどれだけ非効率的だったか理解できるのが悲しいところ。恵学社の岡代表が「中学英語は2週間で終わる」とインタビューで言っていたが、その意味が本当に理解できてしまう3ヵ月だった。

今回トレーナーとして指導をいただいた恵学社の田畑翔子さん(中央)、渡辺由紀子さん(左)。3ヵ月のご指導、大変ありがとうございました!

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