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ニュートンは木星の夢を見るか?科学歴史シミュ「PRINCIPIA: Master of Science」:Steam

2017年04月07日 18時00分更新

 10年以上前、まだエンターブレインが株式会社アスキーのいちブランドであったころに遡る。当時、「RPGツクール」という作品が生み出された。分かりやすいキャッチーな名前に何を行なうゲームが明確な本作品はウケにウケ、現代に至るまで未だにコンストラクションツールとして強い支持を得ている。

 だが、「RPGツクール」が残した功績は、そのツールとしての存在だけではない。ツクールを糧として多数のクリエーターを排出した。その大きな一端は当時行なわれていた「Aコン」(関連サイト)である。今でこそ作品発表の場はSteamなどが存在しているが、当時は最高賞金1000万円という高額賞金付きのチャンスの場はほかに無いに等しいと言っても過言ではなかった。

 そのコンテストでの受賞作品のなかで、「コープスパーティー」は新作が次々と発表されており知っている人もいるだろう。ゲームだけではなく、音楽で言えば音楽専門の公開チャンネルであった「ツクール音楽堂」では、今ではメジャーな大嶋啓介氏と言った人材も排出しており、ツクールが基礎となって生まれ、世に放たれたものは少なくはない。

実在の科学者の跡後を追う

 さて、前置きがやや長くなったが、第48回はそのAコンの受賞作品である「PRINCIPIA」(関連サイト)を紹介する。当時の受賞作品の中でも珍しいという訳ではないのだが、ツクール製の作品ではない。

 しかし、今日まで実在の科学者を題材としたシミュレーションという観点でつくられた作品はほかにはない。擬人化やモチーフと言うわけではなく、当時の科学や歴史もしっかりと踏まえたうえでシミュレーションゲームとして完成している本作の魅力を紹介しよう。

本作品の操作はマウスだけで簡単に操作できる。UIなども分かりやすい配置となっているため安心だ。もちろん、日本語に完全対応している。

 17世紀に実在した科学者をひとり選びゲームを始める。パラメータでもある名声は後述する学会への影響力を指し、資金はそのままズバリである。また、年齢が実際の没年齢に到達すると死去となりエンディングを迎えるため、高齢の科学者であるほど、相対的に難易度も高くなる。

 だが、本作品の目的は科学全てを極めることというわけではない。実際に従事していた専門分野の頂点を目指しても良いし、全く別の分野で覇権を取るのもゲームならではの楽しみ方だ。「私はニュートン、生物学の専門家です。」と言う実際ではありえなかったロールプレイも一興というわけだ。

 本作品の要とも言うべき理論の創造や論文の作成は、研究室で実験や推理を重ねることで生まれる。そして、理論から論文を作成し、学会に提出するまでが基本の流れとなる。

 ただし、その際理論が不正確で間違っている場合でも論文を作成できてしまうため、不正確であればあるほど学会では受理されなくなってしまう。研究室では主にテーマに対して論文の執筆や実験を行い、地図画面では後述する自身の能力の強化や他の科学者との交流、器具の購買を行なえる。

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実験と推理は独立したパラメーターを持っており、どちらも実行した時点で時間を消費する。ある一定以上の結果を得た場合に自動的に理論の創造を行なうという流れだ。

論文が受理されれば、自身の名声と金に繋がる。名誉のためには先んじて論文を提出するのだ。誰よりも早く発見した理論があればその分野の権威となり、一目置かれることになる。

そして、資金は自身の能力の強化や実験のための器具の購入に使用できる。そのため、とにかくお金が必要なのである。

宮廷闘争ならぬ科学闘争

 科学とは戦争である。偉大なる発見の前に誰しもが人間である。やっかみや嫉妬、憎悪と言った負の感情がそれを認めぬ場合がある。評価を下すのも同じ科学者であり、同じ人間である。どれだけ完成度の高い論文でも受理されなければその理論は何時まで経っても世に認められないのである。

 仲良くなるには、他者と交流するのもひとつだが、資金援助という分かりやすい手段を取るのもひとつだ。交流する場合には同じ都市にいる必要があるが、資金援助であれば場所を問わない。ただし言うまでもなく資金援助にはお金が必要だ。

逆に誰かを貶めるならば論文の批判や、誹謗中傷を書き込んだ手紙を送りつけるだけで良い。

 だが、このような行動に何の意味があるのだろうか?と思う人もいるだろう。だが、裁定者が仲の良いあの人だったりしたら……? 逆にライバルが同じ分野に関わってくれば……?と、言えばピンと来るかも知れないが、本作品の論文を精査して受理するのはほかの科学者であり、彼らの意見はどんな意見よりも結果を左右する。そのため、時にはこのようなロビー活動も必要となるのだ。

極めつけがアカデミーの会員として、上に昇りつめるという手段だ。論文を受理する側に回ってしまえばこっちのものだ。これを利用すれば、後世に明らかに間違った論文を残すという文字通り間違えたロールプレイも可能だ。

自分だけの「プリンキピア」をつくり出せ

 ゲームタイトルでもある“プリンキピア”とは、ニュートンの執筆した学術書である。現代における万有引力の基礎で、難解な学術書でも有名だ。ただ、プレイヤーが描くプリンキピアと言うべき学術テーマは力学だけに留まらない。それぞれ違う分野も含め、何を研究するのも自由だ。

 そのプリンキピアともいうべき図鑑には発見されたものや、スケッチなどが記録される。コンプリートをひとりの人物で目指しても良いし、他の科学者で違う分野を探すのも自由だ。

 レーウェンフックで微生物ではなく天体を追いかけてもいい、史実にはない自由な想像がそこには待っている。本作品の最終目標は特にはないと触れたように、プレイヤーが死去するまではゲームは終わらないのである。

偉人の見た夢の先の先へ

 第4回の「Aコン」結果発表当時、オリジナル版は100時間以上はプレイした。フリーゲームである「CardWirth」と本作品の2つは、あの時代における私の思い出のゲームだ。その当時のプレイ感覚とほぼ変わらず、思わずリメイク版も数十時間、ほぼぶっ続けでプレイしてしまったが、改めて「プリンキピアはこの何でもありが凄く良いんだ。」と手放しで褒めずにはいられなかった。

 偉人や科学には詳しくなくても大丈夫。それぞれの科学者には史実に基づいた事柄の注釈なども記載されており、どういった人物かも分かるようになっている。当時どのような発見がどのようなものに結びついたのか、ゲームでたどる科学史の旅も、ときには良いのではなかろうか。

 ニュートンは引力を解き明かすのか、それとも木星の衛星を発見するのか。歴史の“If”を握るのはあなただ。

PRINCIPIA: Master of Scienceの推奨動作環境は?

 最低動作環境のグラフィックの要件がIntel HD Graphics 4000以上と、CPU内蔵GPUで動く軽さだ。CPUは最低でCore 2 Duo以上と古いものが指定されているが、Core 2 DuoはCPU内蔵GPUをもたないので注意。別途専用GPUを搭載するか、CPUのみで遊ぶ場合、Ivy Bridge世代のCoreシリーズ以降が必要だが、ここ数年のPCに搭載しているGPUを内蔵したCPUなら問題なく動作するだろう。

「PRINCIPIA: Master of Science」
●tomeapp
●980円(2016年9月30日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows 7以上
ジャンル Early Access 独立株式会社 シミュレーション 歴史 カジュアル
1999, 2013, 2016 © Shin Hirota All rights reserved.
Music by Daisuke Shiiba.
Sound effects by Maoudamashii.
Licensed to and published by Active Gaming Media, Inc.

■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat

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