2015年06月12日21時00分

「最初から楽しくなくていい」 森山式『城とドラゴン』のつくり方(前編):召喚★アプリ神

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 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第11回はアソビズム『城とドラゴン』の森山尋さんを召喚!

 なお、第12回のゲストはミクシィ『モンスターストライク』の木村弘毅さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『城とドラゴン』

城とドラゴン:召喚★アプリ神
↑アソビズム ディレクター森山尋氏。

■最初から楽しくなくていい 森山式ゲームのつくり方

安藤武博(以下、安藤):今回は『城とドラゴン(以下、城ドラ)』のディレクター、森山さんを召喚いたしました。リリース前に遊ばせていただいて、かなり手応えのある難易度に驚いたですけど、リリース後に本格的に遊んでも骨太な印象ですね。

森山尋(以下、森山):スタッフにもよく言われるんですけど、僕は変なバランス設定をするみたいで、リリース初日から2日目ぐらいはクソゲーと言われていましたね(笑)。

安藤:なぜこのレベルデザインなのかいろんな人と話したんですが、「森山さんにしかできないね」という結論になりました。森山さんはアプリゲームをつくっている人の中では、熱狂的ファンが必ずいる稀有な存在。森山さんが出したものは必ず遊んで、文句も言うし応援もする。ある種顔が見える人たちに対して問うことができるからこの難易度なのでは、という面白い仮説を立てている人もいたんです。

森山:ありがたいことです。僕自身今のスマートフォンのゲームでは、かっこよくいえば挑戦というか、人と違うことをやりたいんです。アプリゲームは始まってすぐ達成感や充実感が得られるようにつくりがちですが、そうじゃないものもあってもいいなと。海外ドラマも1話で失敗したら終わることがありますが、今の時代それも難しいと思うし、そういったセオリーができて固まっていくと、進化はしてもいずれ飽きるのではないかと思うんです。

安藤:ゲームの出だしの部分で言うと、チュートリアルが印象的でした。今までこの連載でもチュートリアルに言及したことがあって、いかに削るか、チュートリアルと思わせずにやらせるかに皆さん苦慮されている。ところが城ドラは、チュートリアルそのものに面白さがある。最初に兵隊をポンポンと配置する時に、「もっともっと! まだまだ召喚できるだす!」って言いますよね。

森山:言いますね。

安藤:チュートリアルをこなす上でたくさん置くこと自体は重要ではないんですけど、もっと置いた方が楽しいじゃん、と言われてそれ自体がエンターテインメントになっている。あんなことを言われるゲームは初めてでしたし、直接タッチしてキャラを置くのが城ドラの楽しさなんだとわかる。森山さんならではの楽しさがあるし、だからファンがつくんだなと思います。

森山:あそこではみんな損したくないし、ミスしたくないと思ってチョンと1匹置くとか、2匹ぐらい置いて見ている人が多いんですよ。なのであそこは「大丈夫だよ」って言ってあげたかったんです。

安藤:説明が終わったらすぐ次にいくのが離脱を防ぐセオリーだと思うんですけど、そこであえて立ち止まらせて「いっぱい置こうよ」というのはすごいと思うんです。形からゲームづくりに入って、どうしたら離脱を防げるかばかり考えている人に一矢報いているし、そこにまず城ドラの面白さを感じましたね。

城とドラゴン:召喚★アプリ神
↑安藤氏が気に入っているチュートリアルがこれ。意外とたくさんキャラが置けるので、つい楽しくなってしまう場面だ。

■城ドラでやりたかったことはプレイヤーの感情のデザイン
安藤:リリースから城ドラを遊ばせていただいていますけど、面白い現象が起こっているんです。無課金の人が課金している人に余裕で勝つことがあるんです。

森山:アプリゲームとしてやっちゃいけないですよね(笑)。

安藤:事件だと思います(笑)。僕は同じゲームをつくる者として、お金を払って遊んだらどんな領域が見えるかというちょっと嫌らしい遊び方をするんですけど、無課金者が課金者と対戦して全然勝てるゲームデザインになっている。今までのゲームのセオリーを打ち破ったし、かといって理不尽でもない。キャラどうしの相性の関係が圧倒的なカロリーで調整されていて、負けても「自分の戦い方が悪かった」と思えるようになっている。そこが唯一無二で、城ドラでびっくりしたことです。

森山:お金を払っていただいたり、時間をかけていただいたお客様が強くなるゲームももちろんうちはつくっています。ただそうじゃないものもあっていいと思うんですね。極端な“Pay to Win"じゃないものもあってもいいじゃん、と。それが受け入れられれば、もっといろんなゲームが増えますよね。

安藤:無課金でも十分遊べますけど、お金をちゃんといただいてビジネスとしても成立させないといけない。単純なPay to Winにはしたくないという時点で、いばらの道を歩んでいますよね。

森山:実は大きく売り上げが上がらなくても、このゲームでやりたいことがあったんです。

安藤:それはどんな?

森山:悔しいからもう1回戦いたくなる、というところです。今までのアプリゲームだと、悔しい思いをさせると離脱してしまうので、あまりそういう体験はさせなかったですよね。

安藤:そうですね、それもセオリーのひとつでした。

森山:城ドラではお金を使っても、ほかのプレイヤーとの差があまりでない。そこで腕が出てくる。ゲームセンターの格闘ゲームで負けるとすごく悔しいじゃないですか。本来ゲームってそういうもので、そういうゲームがスマートフォンでいけたら面白いと思ったし、成立させたい思いがすごく強かったんです。

安藤:僕が最初に対戦した時は、まだルールも相性の関係もわっていなくて、負けた時は悔しくてしょうがなかったですよ。

森山:うちのスタッフもリーグで勝てない日が続くと、すぐに「引退する」と言います(笑)。

安藤:でもひと晩寝て頭を冷やすと、またやりたくなる。

森山:そうです、負けてもやりようがあるなって思えるんです。どうにもならないと思って辞める人もいると思うんですけど、あとで思い出してあそこでああやっておけばとか、あそこでミスしたなと思えれば、やれるんだと。スピードは人によって違いますけど、城ドラは確実にプレイヤーがうまくなっていくゲームなんですよ。お金を使ってカードをためたり、パラメーターを上げるのではなく、プレイヤーの中に経験がたまっていくゲームをつくりたかったんです。

安藤:森山さんはもともとコンシューマーのゲームをつくられていましたよね。僕のイメージで言うと、城ドラは任天堂さんのゲームデザインに近いなという印象を受けたんです。昔『ゼルダの伝説(以下、ゼルダ)』で謎が解けなくて、腹が立って「もうやめる!」と電源を切って寝て起きたら、「もしかしてあそこか?」とふと気付いて、また遊ぶみたいなことがありました。

森山:そうそう、それです。

安藤:やってみたら「もしかしてあそこか?」の通りにちゃんと謎が解けた。いったどれだけすごい伏線が張られているんだと、ゾクっとしたことがあったんです。森山さんの中に、そういったゲームに対する哲学やイズムをお持ちの人たちとゲームをつくられた経験が、城ドラにも脈々と息づいているんでしょうか。

森山:そうですね、僕は前の会社で6年から7年くらい、任天堂さんとお仕事をさせていただきましたし、自分の師匠やいろんな方の哲学のようなものが入って調和して、今の自分になっている感じはありますね。

安藤:負けて悔しさや怒りに近い感情を覚えても、腕を磨けば乗り越えられるし、乗り越えた時に愛情が生まれる。ゼルダのたとえで言うと、諦めてしまうくらい難しかった謎が解けた瞬間に、そのゲームが好きになる。ある意味、プレイヤーの感情をデザインされていますよね。

森山:ゲームは悔しさを超えたいという気持ちがあって、うまくなっていくものだと思うんです。そういうゲームが今の市場に通用すればメニューが増える。メニューが増えればユーザーが飽きにくい。今盛り上がっている市場が今後もっと盛り上がる可能性がありますよね。僕はコンシューマー時代から、ゲーム業界に貢献したいという思いが強いんです。コンシューマーも一時期は同じジャンルばかりで、多くの人が離れたことがありました。今のスマートフォンも似たゲームが増えてきていると思うんです。新しいジャンルをつくるというと「大きい事を言うな」と思われるかもしれないですけど、常にそういう気持ちでゲームをつくっています。

城とドラゴン:召喚★アプリ神
↑スクウェア・エニックス安藤武博氏。

※この対談は2015年3月に行なわれたものです。

■関連サイト
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