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スマホ依存からの脱却で中国でE Ink端末が一大ブームに 知恵と工夫で生まれつつあるE Ink搭載ガジェットの新文化

2026年08月22日 15時00分更新

中国ならではのスピードで新しいE Inkデバイスが登場
汎用の電子ペーパーに安価なマイコンを組み込んで製品化

 ここまでは昨今の中国人のニーズの話。一方モノづくりの観点で見ると、高速でモノづくりできる環境ゆえに、小型製品が短期間で多品種化した。深圳や東莞のサプライチェーンでは、電子ペーパーパネル、バッテリー、無線モジュール、マイコン、金型、筐体、磁石部品、3Dプリントなどを自在に組み合わせられ、小ロットでも比較的素早く商品化できる。

E Ink

消しゴムサイズのE Ink端末。カンニングに使えるということだろうか……

E Ink

盗難防止用タグにカラーE Inkを組み合わせたもの

 それと並行してシステム更新や在庫処分などで市場に出た電子棚札(ESL)を分解し、電子工作好きが電子ペーパーを再利用し、情報端末化するDIYの文化も広がっている。なかでも定番なのが、296×128ピクセルの2.9インチ電子ペーパー、つまり冒頭の製品である。

 改造の中心になるのが、Wi-FiとBluetoothを内蔵した安価なマイコンモジュールである、ESP32やESP8266だ(本製品もESP8266 E-Paperとある)。元の電子棚札は小売チェーンの専用システムにつながるよう設計されているため、そのままでは自由に表示内容を変えにくい。そこでDIY愛好家は、電子ペーパーパネルを取り出し、ESP32/ESP8266と変換基板を接続して、新しい制御系を組み込む。ESP32を使えば、Wi-Fi経由で時刻や天気を取得し、温湿度センサーやボタン、microSDカードの対応も加えられる。

完成品と工作キットの間のような謎の製品
これらが生み出されるスピード感とDIYは中国ならでは

 今回購入した2.9型機は、汎用の電子ペーパーパネル、Wi-Fi対応マイコン、microSDカード、3Dプリント筐体、DIY系ファームウェアを組み合わせた、完成品と工作キットの中間のような存在である。中古電子棚札の再利用は、完成品の電子書籍リーダー市場とは別の、小さな電子ペーパー文化を形づくっている。価格表示のために作られた部品が、個人の机の上では時計になり、天気予報になり、読書器になり、生活の情報を静かに示す小さな窓へと変わる。

E Ink

かくしてさまざまなE Inkデバイスが存在する

 ……のが理想なのだが、本製品、3つのボタンが何なのかわからず手探りでやり方を覚えなければいかず、使い勝手が実に悪く、また300円の製品に求めるのも酷だが、質感もよろしくない。

E Ink

3ボタンで操作するが、これが同時押しや長押しを求められ難しい

 この辺は「中国のDIY好きが量産してみた」から脱出できていない。ただESP32と2.9型のパネルの組み合わせのゲームをビリビリで発表する人間も現われるなど、電子工作やプログラミングが好きな人にとってはいじりがいのある製品かもしれない。それでもこの製品を紹介したのはE Ink周りが面白い。これに尽きるからである。

E Ink

購入した製品の紹介ページ。なかば手作りで作ったのだろうか


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)、「移民時代の異国飯」(星海社新書)などを執筆。最新著作は「異国飯100倍お楽しみマニュアル ご近所で世界に出会う本」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク

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