中国らしい製品が淘宝(タオバオ)で売られている。スマホの画面を人間の指のように押すマシンだ。ソフトウェアでの自動化とは違い、実機の画面に物理的に触れて操作するため、アプリ側の不正検知を回避しやすい。単純なものは日本のAmazonなどでも売られているが、これらの製品が中国ではどのような目的で使われ、どんな問題を引き起こしているのかを紹介したい。
さまざまな名前で販売されている「自動タップマシン」
販売サイトでは「テスト用」が強調されているが……
まず興味深いというか困ったことにというか、この種の装置に決まった呼び名が存在しない。「手機自動点撃器(スマホ自動タップマシン)」「手機屏幕点撃器(スマホ画面タップマシン)」「機械点撃器(機械式クリックマシン)」「図像識別点撃機械臂(画像認識クリックロボットアーム)」「智能屏幕自動点撃器(スマート画面自動タップマシン)」「物理脚本輔助(物理スクリプト補助)」など、用途や構成に応じて名称が使い分けられている。記事では便宜上「物理タップマシン」とする。
製品の幅も広い。単純に同じ場所を連打するだけのものから、XY軸に沿ってクリック位置を動かせるもの、カメラと画像認識ソフトを組み合わせた上位機種まで存在する。値段は1000元弱から何千元もするものまで様々だが、どうやらカメラの有無、ガイドの精度、モーターの性能、同時に操作できる端末数、カスタム仕様によって、価格は大きく変わるようだ。
販売文言を見ると「画像認識」「文字認識」「複数端末の自動クリック」「サイズのカスタマイズ」「テスト効率の向上」といった、テスト用途を強調する表現が目立つ。実際こうした装置には、スマホアプリや車載ディスプレーの実機テスト、タッチパネルの耐久試験、社内専用端末の定型操作、APIを持たない旧型業務端末の限定的な自動化、アクセシビリティ支援、ロボット制御やOCRを学ぶための教育・研究用途など真っ当な用途で使われることもある。
画面をカメラで読み取り、指定した文字やアイコンを検出し、実機の画面を物理的に押すという仕組みは、ソフトウェアだけでは再現しにくい実機での検証に向いているといえよう。
中国ではすでに裁判沙汰に
フードデリバリーの良案件を素早くゲットするのに活用
しかし実際の検索語には「ゲームでの物理タッチ」「ライブ配信でいいねやハートを押す」「機械式物理スクリプト補助」といった言葉も混じっており、テスト用と以外の反復操作を想定した需要があることをうかがわせる。不正や規約違反になりかねない使い方では、動画の再生数・いいね・コメントの水増し、偽アカウントのログの積み立て、ゲームの放置周回やゲーム内マネー稼ぎ、クーポンや抽選への大量応募、限定品やチケットの自動取得、配送案件や仕事案件の自動受注などである。
ここで押さえておきたいのは、判断基準が「物理的な装置を使ったかどうか」ではないという点だ。物理タップマシンによる仲介により、他者の機会やサービスの公平性を損なうかどうかが、正当性と不正の分かれ目になる。
実際に裁判沙汰にもなっており、たとえば最高人民法院は今年9月、物理タップマシンがフードデリバリーと軽貨物配送(衆包型配送)プラットフォームで関わった事件を、反不正競争の典型事例として公表した。
被告の企業はネット通販上の2店舗でスマホ自動タップマシンを販売。これを購入した配送員は、手で画面に触れることなく案件情報を高速で更新し、条件の良い注文を他の配送員より早く獲得できた。しかも被告企業は、配送員に向けて、これらの機械を活用する動画も公開していた。裁判ではアプリのデータやプログラムを直接改変していなくても、技術的な手段でプラットフォームの操作ルールを迂回し、配車・受注の仕組みを乱し、規約を守っている配送員の収入機会を奪う行為は不正競争に該当するとし、賠償金300万元(約7000万円)の支払いを命じた。
淘宝の販売ページがテスト用途を比較的強調するのに対し、動画共有サイトのbilibiliでは、配信者がより率直に用途説明を説明する。今年3月に公開された動画では、配信者は「本物の物理チート」と紹介し、その想定利用場面として、前述した案件の先取りをはじめ、ゲーム内作業の代行や各種投稿や、アカウント育成や、ライブ配信などを列挙した。
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