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Ryzen 9 9950X3D2最速レビュー デュアル3D V-Cacheで開発者・クリエイター向け最強CPUになった驚きの実力を解説

2026年04月21日 22時00分更新

文● KTU (加藤勝明) 編集●北村/ASCII

数値計算系では爆速

 Ryzen 9 9950X3D2は実アプリでも速いことは確認できたが、Ryzen 9 9950X3Dとの差は小さく、3D V-Cacheをデュアルで搭載していることよりもTDPが引き上げられたことによるパフォーマンス向上の方が強いのではという印象が強かった。

 ではもっと数値計算系処理に近い分野ではどうだろうか? そこで登場するのが「SPECWorkstation 4」である。非常に多くのテストが含まれるが、Ryzen 9 9950X3D2が優位に立たなかったもの、立ったものをそれぞれ紹介しよう。

SPECWorkstation 4:7-Zipのテスト結果

 7-ZipはRyzen 9 9950X3D2の効果がまったく感じられなかったテストの筆頭格である。グラフの通りデータの展開と圧縮時間を比較するというものだが、7-Zipで使われている圧縮アルゴリズムは高度に依存関係のあるデータ参照が多く、コア数が増えてもあまり影響がないばかりか、むしろコア数が少なくレイテンシーの小さなRyzen 7 9850X3Dが最速である。

 一方圧縮は比較的コア数に比例するとされるLZMA2を使用しているが、今回の検証ではRyzen勢はコア数に関係なくほぼ同着である。16スレッドあたりで処理が飽和していると仮定すれば、3D V-Cacheをデュアルで搭載しているRyzen 9 9950X3D2が力を発揮できない理由も説明が付くだろう。

SPECWorkstation 4:Autodesk Inventorのテスト結果

 続いては「Autodesk Inventor」でファイルを開く・ファイルを更新する・リビルドする・レンダリングするといった処理に対する処理時間をまとめたテスト。ここでも最速はRyzen 7 9850X3D、その後にCore Ultra 7 270K Plusと続く。Ryzen 9 9950X3D2は9950X3Dよりも高速だが、誤差程度の差でしかない。

 このアプリでの処理はコア数勝負ではなくシングルスレッド性能とレイテンシーが支配的で、常に低レイテンシーで回るRyzen 7 9850X3Dが有利となると推測できる。

SPECWorkstation 4:Viewport Graphicsのフレームレートその1

SPECWorkstation 4:Viewport Graphicsのフレームレートその2

 続いては3DCGやCADなど、プロ向けグラフィックを利用するアプリにおけるビューポートレンダリング(いわゆるクイックレンダー)時のフレームレート比較だ。今時のゲーム描画とは異なりOpenGLが多く使われている分野だが、こういった処理ではRyzen 7 9850X3Dが非常に強い。Ryzen 9 9950X3D2は3D V-Cacheが9950X3Dより多いにも関わらず、9950X3Dと同等かわずかに低くなっている。この点からもAMDが3D V-Cacheをデュアルで搭載しているCPUをなかなか出さなかったことの裏付けになるだろう。

 むしろこのテストではCore Ultra 7 270K Plusが健闘している。DDR5-7200に正式対応しており、今回の検証でもそれを活かしているがゆえの結果ではあるのだが、CPU単体で約18万円のRyzen 9 9950X3D2よりも、約6万円のCore Ultra 7 270K Plus+約8万円のDDR5-7200のどちらがお得かと考えたら、答えは明らかだ。

 ここまではRyzen 9 9950X3D2がまったく奮わなかったテストを紹介した。だが逆にRyzen 9 9950X3D2が強烈に輝くテストもある。ここからはそういった結果を紹介しよう。

SPECWorkstation 4:Data Scienceのテスト結果

 まずはData Scienceテストから。ここではPandasとXGBoostにおいてどのCPUも大差ない結果になっているが、この2テストに関しては差が出ない理由が異なっている。まずPandasは内部処理的にシングルスレッドの部分が多く、メモリー帯域やコアの処理効率が重要。Core Ultra 7 270K Plusはメモリー帯域では優秀だが、ことPandasにおける処理効率に関してはZen 5の方が優秀で、総合的にイーブンになっていると考えられる。

 一方、XGBoostはOpenMPを利用したマルチスレッド処理になっているが、今回のCPUの場合コア側のL3キャッシュ内にすっぽり収まってしまい、3D V-Cache搭載のメリットが薄れてしまっているのが一因(まだ理由はあるだろうが)と考えられる。

 だがここで注目すべきはPythonの機械学習ライブラリーであるScikit-learnを使ったトレーニングと交差検証テストだ。これは処理が並列化されているだけでなくL3キャッシュ容量の恩恵も得られやすい。Ryzen 7 9850X3Dはコア数の少なさゆえに処理速度が低下し、Ryzen 9 9950X3Dは3D V-Cacheのない方のコアによるメインメモリーアクセスが全体の足を引っ張っていると考えられる。

SPECWorkstation 4:Poissonのテスト結果

 上のグラフは「ポワソン方程式をヤコビ法で解く」テストだ。このうちSquare Gridと称する手法ではCPUの差は小さいどころか、むしろCore Ultra 7 270K Plusが最も優秀。これに対しRectangular GridではRyzen 9 9950X3D2の結果が9950X3Dの倍以上という突出した結果を示している。おそらくRectangular Gridではデータセットが適度に小さく、RyzenのCCDに入っている32MBのL3キャッシュだとあふれるが、3D V-Cacheを備えた32MB+64MBのL3キャッシュに収まると考えられる。Ryzen 9 9950X3Dの場合3D V-Cacheを持たないCCDがメインメモリーへのアクセスで足を引っ張っていると考えられる。

SPECWorkstation 4:OpenFOAMのテスト結果

 上のグラフは数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)のソルバーである「OpenFOAM」を利用し、燃焼シミュレーションソルバーである「XiForm」を実行した時の結果である。ここでもRyzen 9 9950X3D2が9950X3Dよりも処理時間を大幅に短縮している。この処理では各プロセスが担当する領域(メッシュ)のデータを繰り返し読み、かつ並列プロセス間でのデータ交換が頻繁に発生するため、大容量L3が効果を発揮しやすい一方でメインメモリーへアクセスする頻度が高まると足をとられやすい。コア数が等しいRyzen 9 9950X3D2と9950X3Dに大きな差が生まれたのは、9950X3Dが持つ非対称なL3キャッシュ構成によるものと言えそうだ。

SPECWorkstation 4:ONNX Inferenceテストにおけるレイテンシー

SPECWorkstation 4:ONNX Inferenceテストにおけるスループット

 上の2つのグラフはCNN (convolutional neural network:畳み込みニューラルネットワーク)による画像認識(ResNet50)、および超解像処理(SuperResolution)をCPUで実行した際のレイテンシーとスループットを比較したものである。まずレイテンシーに関してはRyzen 9 9950X3D2が高速だが、9950X3Dとの差はとても小さく、3D V-Cacheの追加による性能向上とは考えにくい。

 しかしスループットでは大きく傾向が異なる。まずResNet50では演算精度(FP32/ INT8)に関係なくRyzen 9 9950X3D2が優秀。特にINT8ではRyzen 9 9950X3Dに大差をつけている。しかしSuperResolutionに関しては逆にCore Ultra 7 270K Plusが優秀。ONNX Runtimeにおける各CPUアーキテクチャーへの最適化との相性が出たと考えられる。

 このようにAIと一口に言ってもLM Studioのように3D V-Cacheの追加効果が観測しにくいものから、ResNet50&INT8のように劇的に効果が出るもの、そしてSuperResolutionのようにCore Ultra 7 270K Plusが輝くものなど、処理により効果はさまざまであることがよくわかる。

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