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【前編】興収20億円突破記念! Netflix・ツインエンジンのキーマンに舞台裏を聞く

『超かぐや姫!』が「長尺&冒頭20分間日常シーン」でも大ヒットした秘密は巧みな宣伝手法にあり

 

『超かぐや姫!』はNetflixでの配信と劇場公開が同時進行中という稀有な作品だ(2026年4月末現在)

「全世界向け」は結局、誰にも刺さらない
「ローカル・フォー・ローカル」で本場の味を貫く

―― 「世界」という点ですが、最初から海外を意識したテイストにしようという方向性はありましたか?

N 山野 実はアニメでも実写でも、海外にあまり意識を寄せ過ぎないことがすごく重要だなと思っていまして。世界各地で配信しているからといって「全世界」や「海外向け」を狙うというのはなかなか難しい部分があるんです。

―― と言いますと?

N 山野 「“全世界”って結局、誰なの?」となってしまうからです。共通語みたいなものを目指すと、どの国のお客様にも刺さらなくなってしまったり。実際、USの宣伝チームから、「こっちに寄せたものを作らなくて良いよ」と言われたこともあります。

 「どうして?」と聞いたら、「こっち(アメリカ)の人たちは、日本アニメで描かれている高校とか部活とか、四季がある風景とか、音楽とかも含めて、自分たちでは生み出せない特色があるから観たいんだ。それが日本のアニメの力だと思う」と。

 確かにその通りだなと思いました。僕らだって、アメリカに行ったら本場のハンバーガーが食べたいですよね。気を使って寿司を出されても気分は上がりません。これを僕らは「ローカル・フォー・ローカル」と呼んでいます。「その国らしさ」こそが他国の人々に求められるのです。

―― なるほど! 「本場の味」がポイントなのですね。

N 山野 日本発の作品なら、まず日本で人気になるものを作ることが海外でヒットさせる一番の近道。アニメに限らず、自分たちの土俵で戦えるものでないと。

―― まさに、スタジオコロリドの「クリエイターのやりたいことを軸とする」方針と合致していますね。

N 山野 クリエイターさんの作家性を強く打ち出すのは、究極の「ローカル」ですよね。個人の色ですからエッジが立った作品になります。配信がテレビよりも尖った作品を提供できる、という魅力にもつながると思います。

―― そういえば、ちょっと前まで日本アニメの「Netflix独占配信作品」にはハードSF系が目立つ印象でした。けれども近年は『超かぐや姫!』のようなエンタメ系の作品も増えています。方針の変更などがあったのでしょうか?

N 山野 初期はクリエイターのみなさんも、「Netflixで配信するなら海外向け」という意識が出ていたことも影響しているのではないかと思います。今は「まず日本でヒットさせましょう!」とこちらから企画立案段階でお伝えしており、結果としてバリエーションが広がってきたと思っています。

―― Netflixの作り方が日本に根付くにあたっての自然な流れだったのですね!

「素人からスターにまで成り上がった物語」が
劇中と現実、両方で展開されている

―― 従来のスタジオコロリド作品と大きく異なる作風で制作が始まった『超かぐや姫!』ですが、山下監督の指揮下でどのように進んでいきましたか?

T 長坂 山下監督はお客様の目線を持っていて、お客様が求めているもの、お客様に届く表現を綿密な計画の元に出せる方で、絆や感動もしっかり盛り込めます。僕らアニメ制作・製作チームには総意として山下監督とその作家性に対する信頼があり、それは企画から完成まで変わりませんでした。

―― 絆と言えば、主人公が「女の子2人」というのもスタジオコロリド作品としては変化球に見えました。

T 長坂 竹取物語をベースとして出会いと別れを描くことになるので、登場人物を男女にしてしまうと、友情よりも恋愛にフォーカスしてしまうかもしれないから、という理由です。絆を描くには彼女たちの関係性がベストだったんです。

―― 山下監督は、お客様に届く表現をかなり計算して描かれているのですね。

T 長坂 はい。構成にも緻密な計算がありました。たとえば本編にはEDも含めると歌が10曲も入っており、最初は「こんなにたくさんの曲をどう構成するんだろう?」という気持ちで見守っていました。

 ところが、その時点で山下監督の頭の中にはすべての楽曲について、「ストーリー中のこういう場面だから、この楽曲をあえてデュエットで歌わせる」というような、物語への配置とその意図が固まっていたんです。

―― いわゆる「ボカロ音楽」を選択された理由は、たとえば宣伝効果を狙ったところもあるのでしょうか?

T 長坂 いえ、ボカロファンを狙うからボカロ音楽を使おうではなく、あくまでも『超かぐや姫!』の物語を豊かに表現するためのチョイスです。

 最初はボカロ好きなスタジオコロリドの桃原Pからの提案でした。彼の趣味もあったと思いますが、「インターネット文化」が世界観の根底にあるこの作品の音楽としてボカロの案が出てくるのは必然だったと思います。それぞれのシーンに適した作家さんに音楽を依頼することで統一的ではない、音楽とアニメーションがマッチしたライブシーンを作れるだろうという期待もありました。

―― ボカロありきではなかったのですね。

T 長坂 はい。また、これは後から気づいたことですが山下監督とボカロPの方々って境遇が似ているんですよね。

 劇中歌を担当した作家さんたちはかつては個人的な活動として動画投稿サイト上に楽曲をアップしそれが注目を浴びて、今やメジャーなアーティストとして活動しています。同じく山下監督も、元々ウェブで自主制作アニメーションを発表するところから始まり、それが目に留まりいまや商業アニメの第一線で活躍中です。

 つまり、インディーズからキャリアをスタートさせたクリエイターたちが今回、Netflixという商業メジャーのど真ん中で世界を舞台に戦っているわけです。個人的にはこのストーリーがとても素敵だなと感じています。

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