【前編】興収20億円突破記念! Netflix・ツインエンジンのキーマンに舞台裏を聞く
『超かぐや姫!』が「長尺&冒頭20分間日常シーン」でも大ヒットした秘密は巧みな宣伝手法にあり
2026年05月02日 15時00分更新
「Netflix × スタジオコロリド」が実現した理由
―― 『超かぐや姫!』の企画はどのように動き始めたのか、その経緯から教えてください。
Netflix 山野(以下、N 山野) 初めてスタジオコロリドさんとご一緒したのは、2020年の『泣きたい私は猫をかぶる』でした。当時はコロナ禍という特殊な状況下で、配信で映画をご覧になるお客様も多く、Netflixで配信をさせていただくことになりました。
そこから「もう数作、ぜひご一緒させてください」と持ちかけまして、2022年から正式に提携したという流れです。その後、『雨を告げる漂流団地』(2022年)、『好きでも嫌いなあまのじゃく』(2024年)と続いて、今回の『超かぐや姫!』(2026年)が提携3作目になります。
「スタジオコロリド × Netflix」による劇場アニメ作品一覧
■2020年6月……『泣きたい私は猫をかぶる』(監督:佐藤順一、柴山智隆)がコロナ禍に伴う劇場公開延期のち、6月18日からNetflix世界独占配信開始。
■2022年4月……スタジオコロリドとNetflixが提携を発表。
■2022年9月……『雨を告げる漂流団地』(監督:石田祐康)が9月16日に劇場公開およびNetflix世界独占配信開始。
■2024年5月……『好きでも嫌いなあまのじゃく』(監督:柴山智隆)が5月24日に劇場公開およびNetflix世界独占配信開始。
■2026年1月……『超かぐや姫!』が1月22日からNetflix世界独占配信開始。
■2026年2月……2月20日より1週間限定で劇場公開(全19館)。反響により上映期間の延長を決定。27日より上映館を新たに8館追加。
■2026年3月……3月13日より全国100館以上での拡大公開。
企画スタートから配信開始まで5年
―― 『超かぐや姫!』が具体的に動き始めたのはいつ頃ですか?
N 山野 2022年頃にはすでにツインエンジンさんと山下清悟監督から「かぐや姫」という題材で企画をいただいていました。
ツインエンジン 長坂(以下、T 長坂) 実は、山下監督と企画を作り始めたのはNetflixさんに提案する1年前なんです。最初は雑談から始まって、ある程度の形になったところでNetflixさんに「『かぐや姫』を題材に作品を作ろうと思ってます」と企画を持って行きました。つまり、配信開始まで5年掛かっています。
―― 山下監督を起用された理由は?
T 長坂 山下監督は元々、ツインエンジン内のスタジオコロリドに所属されていて、ゲーム「ポケットモンスター ソード・シールド」を題材にしたオリジナルアニメ『薄明の翼』(2020年)が評判を呼びました。さらに近年は『呪術廻戦』などさまざまなアニメ作品のオープニング映像でも高い評価を得ていることから、ツインエンジンの企画チーム、スタジオコロリド、山下監督、そして監督が率いるスタジオクロマトで長編アニメーション映画のオリジナルの企画を練って成立したという流れになります。
「○○層向け」よりも「監督の持ち味」が大事
―― スタジオコロリド作品と言えばファミリー層が楽しめる作品の印象が強いのですが、今回はボカロ楽曲を使用するなど、かなりアニメファンに刺さる方向に振り切りましたね。
T 長坂 そもそもスタジオに「ファミリーアニメを作る」という方針があったわけではないんです。過去作を含めて大事にしているのは、クリエイターがやりたいことを引き出して、強みを一番活かした映像を作ること。それを一番に掲げています。
たとえば石田監督なら『ペンギン・ハイウェイ』や『雨を告げる漂流団地』のような少年少女が活躍するジュブナイル感が持ち味でした。今回も山下監督の想いや強みを最大限に発揮した結果『超かぐや姫!』のような「エンタメ要素満載な楽しい映画」が出来上がっただけで路線変更をしようという方針があったわけではないですね。
―― 一方、Netflixサイドとしては、これまでのスタジオコロリドの作風と大きく異なる『超かぐや姫!』の企画をどのように受けとめましたか?
N 山野 僕の認識では、スタジオコロリド作品はファミリーだけでなく世代を問わず広く視聴していただける作品だと思っています。それでいて、どれも監督の個性で彩られていて表現がバラエティーに富んでいます。
一方で、スタジオコロリド作品には共通項もあると思うんです。それは「困難な状況でも絶対ハッピーエンドにする」「決められた運命じゃない」というテーマが根底にあること。これは世代や国を超えて届く要素です。もちろんNetflixとしてもウェルカムでしたので、『超かぐや姫!』が「アニメファンに寄り過ぎているかも」といったストレスはまったくありませんでした。
Netflixが作るのは「クリエイターがフルスイングできる環境」
―― 2社が提携したメリットは、どのようなところにありましたか?
N 山野 ひと言で言えば、Netflixは「クリエイターがフルスイングできる場所でありたい」という気持ちが芯にあります。そして「日本でヒット作を作るんだ」「この熱量を海外にも届けるんだ」ということも大事にしています。このマインドはスタジオコロリドさんも同様でした。
一方で、今は「オリジナル長編作品を世界でヒットさせる」ことが非常に難しいのも事実。理由は、IPが知られている作品やシリーズと比べ、興行収入を予測しづらいため、予算が限られてしまう傾向にあるからです。ましてや一社で手掛けるとなると、フルスイングして実力を発揮するよりも「ここまでなら会社も耐えられるだろう……」という現実的な考え方で制作を進めざるを得ません。
ですが、(Netflixとの提携によって)しっかりとした予算を確保できれば「フルスイングで飛ばしましょう!」と言える体制を作れます。つまり、クリエイターの全力が作品に還元され得る。これが提携の一番のメリットだと思います。
―― ではツインエンジンから見たNetflixの魅力は?
T 長坂 Netflixさんのバックアップがあることにより「フルスイングができる」というのは間違いないですね。
制作面ではかなり一任してもらえています。製作委員会方式では予算の問題で簡単には監督の要望をのめなかったり、さまざまな事情で企画の内容を変更したりといったことが起こり得るんですが、Netflixさんと連携することによって、クリエイターが一番作りたいと思う企画をそのまま制作できることも強みかなと。
もう1つは海外展開ですね。日本から映画作品を海外に届けることは少なからずハードルがありますが、Netflixであれば世界で一斉に観てもらえますし、視聴者数も桁違いです。自分たちの作品を世界中の人々に届けるという意味では、Netflixさんの配信網は素晴らしいと思っています。
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