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2024年5月に向けて準備中の新マイコン、パソコンの聖地

オープン直前の新「マイコン博物館」におじゃまして展示品や施設を案内してもらった!

新「マイコン博物館」の150㎡(一般的な小中学校の教室で約2.3個分)ある主展示室での取材風景。

クラファンは目標額の7倍が集まった!

 5月に青梅でオープンする「マイコン博物館」については、クラウドファンディングがスタートしたタイミングで記事にさせてもらった。その記事(日本にはコンピューター博物館が必要だ! 青梅の新「マイコン博物館」のクラファンがスタート)では、「2日間で500万円が集まった」となっていたが、最終的に1427万6000円を集めることになった。

 前回の記事でもマイコン博物館の概要は、お借りした写真を使って紹介したが、1月におじゃましてとてもその全貌を伝えていないことが分かった。内装工事や照明、階段昇降機の設置、電子工作室のエアコン設置など、クラウドファンディングの資金の使い道は細かく報告されている。しかし、全体の規模感は、想像よりもスケールが大きいのだ。

 元りそな銀行青梅支店の3階建てビル(青梅プラザ)の中に、今回「マイコン博物館」、続いて科学雑誌をアーカイブした「夢の図書館」、さらに「模型とラジオの博物館」を開設するというのは一大事業である。前回も述べたように、本来、国など公的機関が作るべきコンピューターの博物館を、館長の吉崎武氏を中心にして有志で運営していこうというのは、相当に大変なプロジェクトのはずである。

 そこで、マイコン博物館応援企画の第二弾として、オープン直前、あらためて《動画取材》も行って紹介させていただくことにした。2024年4月上旬、新宿から快速の青梅行なら1時間ほどで青梅へ到着。青梅駅からGoogleマップで調べてみると徒歩2分(吉崎氏によれば《渋谷のスクランブル交差点を渡り切るより早く到着できます》とのこと=人を避ける必要もなく信号待ちもない)に新「マイコン博物館」はある。

 新マイコン博物館は、元銀行ビルの当面は裏側の通用口を使うようになっているとのこと。通用口側は、コイン駐車場のタイムズ24になっているので、車などで来る場合はここを利用するのもよいだろう。以下、動画の「マイコン博物館 オープン直前リポート 前編 2024.4 東京青梅」より、一部の場面を紹介する。

 その通用口前「マイコン博物館」の立て看板とともに取材をスタート。館長の吉崎氏は『月刊アスキー』の初代編集長、5代目編集長の私が案内していただいたわけだ。

 吉崎氏は、『月刊アスキー』もだが、1982年5月に季刊でスタートした『ログイン』の初代編集長でもある。ゲーム誌で知られるログインだが、創刊時は“第三の波の時代を生きる人々のための雑誌”を標榜していた。1000箱(!)あるという未処理段ボール箱の向う側に、同行の6代目ログイン編集長の高橋ピョン太氏。

 建物正面のATMはいまも稼働中だが、建物の中にも銀行の設備があちこちにそのまま残されている。圧巻は、なんといってもこの金庫室。映画でしか見たことのない巨大金庫のハンドルを回して入るという経験をさせてもらいました。きわめて貴重な史料が保管される予定とのこと。

 展示室に入っていくと正面に、「きめて!」というセリフとともに南野陽子(富士通FM77AV)と、松田聖子(ソニーHITBIT)のポスター。かつてパソコンの広告といえばアイドルと相場が決まっていた。「ひ~とび~とのヒットビット」と脳内再生される。その左に貼られているNEC PC-8000シリーズの広告キャラクターが誰なのか私には分からなかった。

 展示室の中は、前回も触れたとおり歴史的なマシンが年代順にズラリ。最初期のマイコンといえば、Altair 8800が代表的だが、ここではそれ以前に国産のSEIKO S-500(インテル最初の8ビットマイクロプロセッサ8008搭載、因縁が深い)やSORD SMP80(インテルが1974年4月に8080を発表すると5月にはショウに展示されたという熱すぎる伝説がある)が並んでいる。SORDは、当時「コンピューターのソニー」と評された記憶がある。

 初期マイコン御三家のApple II、TRS-80、Commodore PET 2001、日本の8ビット時代の名機ももちろん並んでいる。私は、同世代よりも少し遅れてこの業界に入ってきたので、この時代のユーザーのようすは、ひたすら吉崎館長から教えてもらうことばかり。私が最初に買ったパソコンは1984年発売のAppleIIcなのだ。アスキー入社後は、毎日パソコンまみれの生活となりますが。

 これは、シャープのMZ-80C/K用のグラフィックス拡張機器で、のちに任天堂社長となる岩田聡氏らのHAL研究所によるPCG-8000。ほかにも、初期のマイコンユーザーの憧れの入出力端末「テレタイプ」、直径30センチ以上ある取り外し式のハードディスク(ディスクパック)など、マイコン、パソコンの本体以外の機器もそこかしこにある。

 マイクロソフトが、これで会社としてやっていくことになった伝説のAltair BASICをおさめた紙テープ(背後にマニュアルも見える)。紙テープの中身を示すための手書きの文字は、Altair BASICのオリジナルということは、ビル・ゲイツかポール・アレンのものか?

 いちばん奥の一列は、家庭用ゲーム機がプレイヤブルな状態で並べられている。棚の上の箱を見ると、任天堂が某電機メーカーからの打診でゲームの世界に向かうきっかけとなった「カラーテレビゲーム6」(15本のゲームが遊べるモデルとLSIが同一だったことが知られている)、米国の大ヒット家庭用テレビゲーム機「Atari 2600」など、伝説のマシンも置かれていることが分かる。

 旧マイコン博物館より大幅拡充した電子工作室。過去の肩書を聞いたら「おっ」と驚くようなエンジニアがボランティアで指導にあたるとのこと。「博物館とは、子供たちの学びの場であり、ここから、5年後、10年後に、大活躍する人材を輩出したい」という考えを実践されているのは凄い。

 月刊アスキーの表紙と同じ『宇宙戦艦ヤマト』の絵のあるコピー同人誌を発見! これは、吉崎さんが、初期マイコン時代に若者たちが集ったアスターインターナショナルでアルバイトをしていた時代に作っていた同人誌なのだそうだ。これがきっかけで西和彦氏より声をかけられて、月刊アスキーの初代編集長となったとのこと。表紙に月刊アスキーのTBNでもお馴染みの井上泰彦さんの名前も見える。

動画を見てほしい

 動画「マイコン博物館 オープン直前リポート 前編 2024.4 東京青梅」からポイントとなる場面をピックアップして紹介したが、ほかにも見どころがいくつもある。以下、からご覧いただきたい。

 なお、この動画の後編は、いよいよオープン直前となる4月下旬に公開予定。マイコン博物館をなぜ開設することになったのかをはじめより深いお話を伺うインタビューをお届けする予定だ。

 この原稿を書き終えようとしていたタイミングで、吉崎館長から「取材記事は完成間近と思いますが、資料写真をお送りします」と送ってきたのが、以下の写真。マイコン博物館のできる青梅プラザの外観写真なのだが、よく見ると2階から屋上まで煙突が伸びている。これは、動画には出てこないがレーザーカッター、3Dプリンタが稼働する「重工作室」の換気扇からの排気のためとのこと。

 実は、マイコン博物館や夢の図書館、模型とラジオの博物館と併設で、この重工作室のほかに個人利用できる「テレワークスペース」と、グループ活動ができる「コワーキングルーム」も作られるのだった。2部屋ある「コワーキングルーム」の一つには、撮影スタジオ設備もある。リモートワークがすっかり定着したいまどきなので、青梅までの定期券を買ってここで日々仕事をするのはどうだろう?

 吉崎氏からいただいた情報では、1~2年後には中央線と青梅線に「2階建てグリーン車」が導入されるとのこと。新幹線のグリーン車よりデラックスな車内で眺望を楽しみながら青梅駅まで移動できる。WiFiと電源付きで、グリーン料金は、780円から1000円ぐらい。数年以内に、青梅が、吉祥寺や立川なんかよりもいい感じのワーケーション的な人気エリアになる可能性がある?

 マイコン博物館は、開館後、展示室中央のソファのあるあたりを客席にイベントも行われことになるらしい。「夢の図書館」は、まだほとんどが段ボールの中だが、「模型とラジオの博物館」に展示されるものはすでにラジコン飛行機などが壁に飾られていた。イベントはあるは、展示は楽しいはで、ほとんどとテレワークも仕事が手につかない気もするが。なお、屋上は、数十人規模でBBQなんかもできてしまいそうなスペースになっていて、青梅の街を囲む山々が眺望できた。

 

マイコン博物館

※2024年5月オープン予定(詳細は以下公式ページ等を参照のこと)
住所:〒198-0082 東京都青梅市仲町295 青梅プラザ
運営団体:非営利型一般財団法人科学技術継承財団
公式ページ:https://scitech.or.jp/museum
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/dream_library_
入館料:一般 1,000円(税込)
情報処理学会会員・高校生・中学生:500円(税込)
保護者同伴の小学生:無料

 

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。MITテクノロジーレビュー日本版 アドバイザー。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667

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