週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ディースリー・パブリッシャーが贈るガールズ侍アクション

乙女たちの”百合成分”に心奪われる……『サムライメイデン』開発陣の強いこだわりに感動【後編】

会話で描かれる心情の機微から見る「百合成分」

 さて、百合成分の含まれたゲームと一言にいっても世の中には多くの作品がある。下手をすると命(タマ)の取り合いに発展しかねないような、一触触発のヒリつく心情が描かれる作品も少なくない。

 そういった作品が描く、自分自身で制御できないほどの感情のうねりをプレイヤーに対して強烈に突きつけるシナリオは百合成分作品群の魅力のひとつであり、重要な1ピースでもある。

 だが、本作はあくまでライトで、緩くて内容のない会話に思える場面も多い。ヒリついたシナリオとは無縁だ。穏やかな笑顔で美少女×美少女の「百合っぽい絡み」を鑑賞するタイプの作品に近いかもしれない。

 しかしながら本作は、足元をほんの少しだけ濡らすせせらぎのように、浅くてささやかな感情のみが描かれるばかりなのかと言うと、決してそんなことはない。男性向けコンテンツという体裁で都合よく鑑賞されるコンテンツにはとどまらない。

 人と人の間にあるのは関係性である。関係性は、積み重なる時間とともに変化する。そして、変化を促すのは人の心の中に芽生える感情だ。百合とは感情と関係性の物語なのである。

 少しずつ変化する心の機微、移ろいゆく距離感、美少女と美少女の間に芽生えた小さな感情が次第に大きくなり、花開くその時までの変化を本作は静かに、しかし確かなこだわりで持って描いている。

 主人公の玉織紬を軸にして、依夜、刃鋼、狐美魅、三人の護影が戦いの中でどのような感情を育て、花開かせるのか。キャラクターごとに見どころをピックアップしたので、たっぷりご覧いただきましょう。

本作の主人公であり、百合関係性の中心点。呑気だけどやるときはやる。そこに痺れて憧れることとなる3人の護影の感情を独占し、無自覚に百合ハーレムを築き上げる鈍感系女子高生

case1.依夜編

織田信長配下の忍。自分の中に芽生える感情に戸惑いつつも、純粋な想いで紬をお慕い申し上げますなタイプの妹系。紬を呼ぶ時は「お姉さま」

世界線の狭間で紬と二人だけの時間を過ごした依夜の心に、ふと小さな感情が芽生えた瞬間。美少女の心の機微が垣間見える瞬間はいつだって美しい

色々あって「依夜のキスが紬の命を救う唯一の方法で、さらにそのキスは依夜の命にも関わるかもしれない」的な超展開に。やったね! そしてこの時に至って、依夜は自分の心にある感情をしっかりと自覚したのである

ようやく想いを口にできた依夜。おめでとう!

case2.刃鋼編

異世界から渡ってきたほんわか系グラマラスサイボーグ忍者。紬への感情を自覚しているが、あくまでも頼りになるお姉さんとしての関係を保とうとする。紬への想いを打ち明けた唯一の相手である狐美魅とのやり取りにも注目したい

紬との初対面の印象は、少し斜に構えつつ余裕を見せるお姉さん

からかうような物言い。溢れ出す大人の余裕。そんな態度の裏には理由があるのだが……

いつしか任務を忘れ、ただただ紬を支えたいと思い始める刃鋼。戦いの中で育つ想いってやつですね

自分の望みよりも紬が幸せになる道を選ぶ刃鋼。狐美魅にだけ本心を打ち明けられるのは、狐美魅もまた自分と同じだと、分かっているからなのかもしれない

絡繰の身体ゆえに少し厭世的な部分があった刃鋼の心を、紬との絆が変えた

case3.狐美魅編

こちらも異世界から来たケモミミ陰陽忍者。誰よりも陰陽術の才能に秀でていたために兄弟たちから疎まれ、寂しい幼少期を過ごした過去がある。結果すっかりクールな性格になってしまったが、紬との出会いが凍てついた心をゆっくりと解かしていく

天才がゆえに孤独な幼少期を送った狐美魅。紬たちと出会ったばかりの頃は任務のことだけを考えて行動するドライっぷりだった

戦いをともにする中で次第にほどけていく狐美魅の心

紬と過ごした時間が癒やした狐美魅の心はもう、かつてのように孤独ではない

魔王との戦いも大詰めを迎え、刃鋼と狐美魅は、二人密かにお互いの胸の内を明かしあうのだった

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう