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画像生成AIの激変は序の口に過ぎない

2022年12月02日 16時00分更新

AIイラスト投稿サイトの勃興

 Novel AIはサービス開始から10日間で3000万枚もの画像が生成され、11月16日には1億2000万枚もの画像が生成されたと公式に発表されています。リーク版Novel AIを含めるとものすごい数の画像が生成されていると推測されます。今度は、そこで大量に生成された画像をウェブ上でどう発表するかが課題になってきました。特に、既存のイラストコミュニティでは、手描きでイラストを描いていたユーザーたちとの衝突が始まったのです。

 たとえば今、イラスト投稿サイトのpixivで「初音ミク」の画像を検索してみると、新着画像はサムネイルを見ているだけで、NoveAI、これもNovelAI……という状態です。なぜわかるかと言えば、これだけ見ているとだんだんわかってくるんですよね(笑)。

pixivで初音ミクで検索した結果。筆者の推測では新着の5割はAIイラストだと思われる

 「Novel AI顔」とでも言うべき、特徴的なのっぺりとした顔が出力される傾向があり、その対策をとっていない場合は同じような画風の絵柄になりやすい傾向があります。もちろん、画像生成AIがまだ苦手としている指に注目すると発見は容易です。

 特にNovel AIは初音ミクの学習データが大量に含まれているようで、非常にクオリティが高いんですね。短いプロンプトで、完成度の高い画像が作り出せるということで、画像生成AI初心者が最初に作成する初心者向けのプロンプトの一つにもなっています。

 pixivは10月20日に「AI生成作品の取り扱いに関するサービスの方針について」という発表を通じ、今後、AI生成画像を既存の画像と区別することができる機能や、フィルタリング機能、AIのみランキングの提供をしていくとしました。まずは、投稿時に「AI生成作品」のタグをつけるという方針になっています。

 しかし画像生成AIはボタンを押せば10秒単位で画像が生成されてしまうわけで、その画像を次々に投稿する人も現れるようにもなりました。これまで一生懸命描いていた人からすると、この状況を見ると微妙な気分になります。また大量に作られるAI絵に押しやられてしまう結果にもなってしまいます。これまで投稿してきたイラストレーターたちから反発が出るのも当然だと思います。

 それなら、AI画像だけの画像投稿サイトを作ればいいじゃないかというロジックが出てくるのも当然です。AIユーザーたちも安全に投稿できて評価されるサイトを求めているわけですから。その結果、AI画像投稿サイトが国内にいくつも登場してくることになりました。代表的なものは、「AICON」や「chichi-pui」などがあります。

AICON

chichi-pui

 このうちAICONでは10月中旬から1ヵ月間、AIイラストの投稿コンテストを開催しました。コンテストで入賞するには、ランキング上位に入らないといけないんですが、重要なポイントがあります。ランキングは、他のユーザーの「いいね」数で決まるという点です。もちろん、品質の高いAI絵を投稿しているのは必須条件で、作者の方はTwitterに積極的に呼びかけをすることになるため、それが口コミを作りました。

 さらに、もう一つ画像生成AIコミュニティを活性化させる仕掛けがあります。作成時の画像のプロンプトを公開することが普通になっていることです。プロンプトを公開していないと他のユーザーに「いいね」をつけられにくい傾向があるため、ランキング上位のAI絵のレベルの高いプロンプトが丸々公開されるのが当たり前になりました。コピペして誰でも試せるわけで、さらにプロンプトの研究が進むことになったのです。

AICONのコンテスト結果の発表ページ。良質なAIイラストがプロンプトと共に公開されている。1位のAI絵は574件のいいねを集めた

 サイトによればAICONの運営代表は東京理科大学の学生ということです。こうしたコンテストをNovel AIが流行り始めたタイミングからすぐに立ち上げ、クオリティの高い作品を集めることができたのは大成功と言えるでしょう。しかもコンテストは初回なので、優勝賞金はわずか3万円。もう少し参加人数を安定的に集められるようになれば、サービス自体がスタートアップとして高い価値を持つ可能性があることは容易に予想が付きます。

 ただし、コンテストに応募できるのは合法的な画像に限られていて、リーク版Novel AIの使用は禁止されています。これが海外のサイトだと、「どこのサービスを使ってもよい」ということにしている場合もあるなど、サイトによって対応は異なります。そのサイトではコンテストのテーマも「Pokemon」など露骨なものになっていたりします。おそらく許可は取っていないでしょう。

 そんな形で、いわば画像生成AI版のpixivやpintarestを目指すサブマーケットが登場してきているわけです。新しいテクノロジーが出てきたときは、そこから、そのテクノロジーだけでなく、その派生によって別産業が始まるという典型例ですね。

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