週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

1回は聴いてみるべき

ペア1500万円超、DALIのフラッグシップスピーカーを聴いてきた

2022年10月04日 11時00分更新

KOREのために1200もの部品を新規に開発

 ユニット構成は4ウェイと書いたが、低域のダブルウーファーと高域のハイブリッドツィーターは、担当する周波数帯域をズラしたスタガー接続になっている。ウーファーは上下で担当する帯域が若干違い200Hz以下と350Hz以下、ハイブリッド式のツィーターはドーム型が2.1kHz以上、リボン型が15kHz以上を担当する形だ。つまり、3ウェイを基本にしつつ、低域に0.5ウェイ、高域に0.5ウェイを足した「3+0.5+0.5ウェイ」の構成だという。

 ドライバーについては、DALIの特徴であるSoft Magnetic Compound(SMC)を“SMC Gen-2”にアップデート。SMCは2013年の「EPICON」から採用している技術で、鉄粉の表面を化学処理で絶縁したもの。電気的には導体で、化学的には絶縁体という独特の特性を持つ。これまでは磁気回路などに用いてきたが、コイルにまで使用したのは「KORE」が初めてだ。

11.5インチのウーファー。DALIらしくウッドファイバーを混ぜて強化したペーパーコーンを使用している。

 低域を担当するのは、300mm近い口径のウーファー(11.5インチ)。ウッドファイバーで強化したペーパーコーンをハニカム構造の梁で強化したサンドイッチ構造の振動板を使用。これを珍しいダブルボイスコイルで駆動する仕組みだ。DALIでは「バランスドライブSMCテクノロジー」と呼んでいる。ボイスコイルの直径も60.7mmと大きく、±15mmとかなり深いストロークが得られるのが特徴だ。上と下で担当する周波数帯域が異なるのは、ミッドレンジとのマッチングを取るため。ミッドレンジの中心から見て、異なる距離にそれぞれのウーファーが設置されているため、そのぶんの波長を調整しているそうだ。背面のスリッドでおおわれているバスレフポート(リフレックスポート)の設計も独特。スピーカーバスケットもかなり巨大である。

側面から見ると梁が見える。内部はハニカム状になっているそうだ。

ウーファーのバスケット

ダブルボイスコイル

 7インチ(約177.8mmのミッドレンジは専用開発。こちらも特徴的なウッドファイバーコーン、ダブルボイスコイル駆動、磁力の高い大口径ネオジウム磁石を使用している。重要な放熱についてはボビンを熱伝導率の高いチタン製にしている。振動板については、表面に制動剤を塗布しているが、塗料の厚みをへこみの形状に沿って微妙に変えることで強度を確保するといった試みも取り入れているそうだ。重視したのはストロークではなく均質性だという。

中央に配置したミッドレンジとEVO-Kハイブリッド・トゥイーター。バッフルは金属製。

ミッドレンジの振動板

ミッドレンジのボイスコイル

ミッドレンジのバスケット

 高域を担当する「EVO-Kハイブリッド・トゥイーター」は、2.1kHz以上の音をフルレンジで担当する直径35mmのソフトドーム型ツィーターを、15kHz以上高域を担当するリボンツィーターで補う構造だ。ただし、リボンツィーターは周波数帯域を補う目的ではなく、指向性を広く取るため使用しているそうだ。ドーム型ツィーターでも20kHz以上の帯域を出せるため、聴感上は特に問題ないが、10kHz以上では振動が中心に寄り、音の直進性が上がってしまうため、それに対策したものだそうだ。

EVO-Kハイブリッド・トゥイーターの断面図。奥行き方向にかなり深いユニットになっている。

 35mmのツィーターはDALIとして最大サイズ(一般的に見てもかなり大型)。一般的な25mmのユニットと比べて約2倍の放射面積を持つ。ミッドレンジとのつながりがよくなるほか、能率も高く取れる。これは放熱にも有利。ボイスコイルの冷却(熱拡散)に使用する磁性流体は粘性があり、音への悪影響もあるが、これを取り除く工夫となっている。また、ツィーターユニットのバックスペースもかなり広く取っている

バスレフポートはスリッドで覆われている。

 これらドライバーのほか、端子、クロスオーバー、スパイクなども新規開発で、KOREならではのものになっている。DALIがこのスピーカーのために新規開発した部品は1200点以上に及ぶという。合板を重ねてプレスする曲面成型など、デンマークならではの加工技術を応用して作られている。制約なく最善を尽くして、DALIのテーマを追求し、完成させたものがKOREである。その最大のテーマは「エフォートレス」だという。無理がなく、自然な音世界。大型の筐体だが、スペクタクルな音を狙ったものではない。

スピーカー端子

 設計にあたっては「ロー・ロス(低損失)」「ホログラフィック・サウンド・イメージング」「タイム・コヒーレンス(統一性)」「クラリティ(明瞭性)」「ワイド・ディスパージョン(音の広がり)」「安定してリニアなインピーダンス」「低共振キャビネット」などをポイントとしたという。

複雑に組み合わされた部品

 1点豪華主義でスペックを出すよりも、リニアリティや不自然なピークを作らないことを重視した設計にしているという。例えば、カタログスペックを見ると、インピーダンスは4Ω、感度は89dBとこの種の大型スピーカーとしては意外なほど普通。大口径ウーファーなどを採用しているにも関わらずだ。これは音圧よりもリニアリティを重視した結果だという。実際、計測すればこの感度だが、空間放射量は非常に大きく、一般的なスピーカーとは比べ物にならない量とのことだ。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう