自社工場を抱える唯一のゼネコン
和田工場長 というわけで壊す前の工場を見ていただきました。9月から全面建て替えが始まります。1884年開設以来、全面建て替えと言うのは今回が初めて。そういう意味では今回が木工場としては1つの節目になりますね。
── 貴重な体験をさせていただきました。そもそも東京木工場というのは清水建設にとってどういうものなんですか?
和田工場長 いま自社で大工を抱えている大手ゼネコンは清水建設だけなんですよね。それは清水喜助という創業者が宮大工出身だったことがひとつあります。当時は木場という名前の通り、川に丸太が浮かび、材木問屋や製材工場がたくさん並んでいました。そんな中、関東地方近辺の木造の柱と梁、構造体と呼ばれるものを作ったのが木工場の始まりだったと聞いています。やがて時代が移りかわり、高層の建物を作るようになってから(木造の)構造体は作らなくなり、内装にシフトしていったんです。
── 他社にはできないというのは明確な強みですね。
和田工場長 そうですね。(ゼネコンの)競合の場合、木のことについて聞きたかったら業者さんに聞くでしょう。でも清水建設の場合、僕らがいるので社内で全部完結する。「こんなふうに木材を使いたいんだけど」と言われたら詳しい社員が答えられる。このごろは外に木材を使うことも増えているけど、木は季節によって伸縮するからこういう使い方じゃダメだとか、こうメンテナンスするといいというふうにアドバイスができるんです。
── 大事ですね。外壁に野ざらしで木のパネルを使った建物があるんですが、パネルが朽ちて交換しなければならないことがあると聞きました。
和田工場長 もうひとつ、社外には出せない新技術を作ろうとしたとき競合は外に出すしかありませんが、うちなら「木工場で作ってみてくれ」と言うことができます。そういう自己完結型の技術開発も今後はやっていきたいですね。
── 清水建設技術研究所の木工版みたいな感じですね。
和田工場長 昨今は、ものづくりをするだけでなく清水建設の会社の企業価値向上に力を入れるようになり、木工教育の「木育活動」も年20回ほどやっています。北は北海道から南は沖縄まで全国に行っている実績があります。
── なんと、出前ですか。
和田工場長 そうですね、出張です。木というのは重さも形も色も違い、独特の香りをもっていますので、子どもたちの幼児教育には非常にいいと言われるんです。木を身近に感じてものづくりをしてもらうことで、木の良さを知ってもらう活動をしています。今年からは障がい者の方々へ向けた「木育パラプロジェクト」も始めました。本物の木の枝を持ってきて、じかに触ってもらう体験をしたんです。
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