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滋賀県日野町、香川県高松市、愛知県岡崎市、先進自治体に聞く

交通・観光・政策……ビッグデータ活用から見える自治体DX最前線

――今回の実証実験で、ビッグデータ分析によってどのように解決に向けた取り組みが進められるのか、その構想を教えてください。

日野町 津田 日野町が地域包括連携協定を締結している株式会社Agoopの分析によれば、日野町では、住民のうち7000人が通勤、通学等で町外に移動し、1万人以上が外部から通勤、通学等で町内に移動してきます。主に、街の中心部から離れた山の方にある工業団地のエリアで昼間人口が増加しています。人口に対して移動する人数が多く、通勤に伴って朝晩渋滞が発生しているという問題が発生しています。そのため、みなさんに公共交通を利用していただくことで、渋滞の解消をしたいと考えています。

 今回の実証実験では、株式会社Agoopの流動人口データを利用して人の流れを把握します。街では中心部の空洞化が進んで空き家や空き店舗が目立つ状況であり、工業団地エリアで渋滞が発生している問題については、町民全体にはあまり共有できていませんでした。

 渋滞が発生している事実を可視化すれば、住民の皆さんと問題を共有することが可能になります。さらに、実証実験をきっかけとして、通勤が公共交通にスイッチしていくにつれて渋滞が解消していく様子がデータで可視化されれば、大きな効果を得られると思います。

日野市 課題

高松市 宮武 他の地方と同様に、高松市でも人口の減少によって医療や福祉の負担が増加し、若者の世代に大きくのしかかってくるという課題を抱えています。また、高松市は市街地が郊外に薄く拡散し、インフラを維持していくことが困難になってくるということが明らかであり、現時点よりも合理的な行政運営がこれから強く求められてきます。

 自治体の持続性を確保していくことが大きな課題になるなか、本市の街づくりは「コンパクト+ネットワーク」というコンセプトで進めています。まず交通・移動をデザインし、それが土地デザインにつながるという交通政策主導で街づくりを行っています。

 このような施策展開をするためのエビデンスとしては、これまで全国幹線旅客純流動調査のデータを軸に、県下全域で実施した個別顧客調査をパーソントリップデータとして補完的に使ってきたという経緯があります。しかし、個別顧客調査は平成24年の実施であり、データそのものの鮮度が劣化し、次に施策を立てようと思ったときに、根拠となるデータの妥当性が乏しくなっているのが現状の問題点です。

 パーソントリップデータの調査にはコストがかかるため、頻繁には実施できません。しかし、簡易なアンケート調査ではデータの精度や信憑性に劣ります。今回の実証実験では、携帯基地局のデータを利用することで、パーソントリップデータの調査に比べて圧倒的に安価に、かつ直近の生きたデータを得ることができます。その有用性が確認できて、価値の高いデータを継続的に使っていけることがわかれば、今後施策を展開するうえで非常に役に立つと期待しています。

データ連携基盤に移動データをコネクトする考え

岡崎市 鈴木 我々のような地方都市は、街に人が集まりにぎわってほしい一方、人が来すぎてしまって渋滞が発生することは避けたいという相反する気持ちを抱えています。いったいどれくらいのレベルの密度が適正なのかを真剣に考えなければなりません。

 2021年は新型コロナの感染拡大への対策が求められる中で、混雑回避とイベント開催を両立するために、リアルタイムで現地に混雑情報を届ける方法や、主催者側で密度を下げる方策などを研究しました。今回はその延長線上で、回遊効果の促進と渋滞回避を成り立たせるレベルについて、方向性を考えていきたいと考えています。

 今回の実証実験では、大河ドラマ館と過去に同様の施設を設置したことがある岐阜市や浜松市のデータを購入しましたが、さらに両市の担当者にインタビューを実施する予定です。他のイベントとの重複や天気、駐車場の誘導施策などとデータとの関係性を探って深堀をしたうえで、来年度以降の具体的な施策を立て、実行していこうと考えています。

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