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モレスキンのVAIOストアオリジナルノートブックを制作

VAIOのデザインを手掛けてきた森澤有人氏に訊くモレスキン愛とデザインの流儀

2022年02月04日 11時00分更新

紙でないとすぐに描けずロスになる

――デジタルな機器を使っている中で、まだ紙にこだわっている理由というのは?

 人によるかもしれないのですが、デジタル機器はタブレットでパって描けてすぐ色をつけられるので、クルマとかキレイなレンダリングをするという仕事上では、やっぱり便利だと思います。でも、僕みたいにサムネイルとして絵を描くという人にとっては、紙がいちばんロスは少なくなります。PCで言うと紙は起動時間0なので。そこがやはり強くて、指先のものを出して目で入れて記憶する、そのループがすごく重要だと思っているので、一回頭で考えたものを、指を使って紙に描き写して、それを自分で見てもう一回記憶させるという作業をしているという感じです。

 そのための付箋をずっと自分の記憶に貼っているというのがスケッチです。パッと見たときに思い出して、「そこ、どうやっていたのかな?」と掘り起こしてくれます。僕はPCが生活や仕事上どうしても必要なので、なるべく起動時間を短くしてすぐ作業したいっていう気持ちがあるので、ずっと電源入れっぱなしですね。アプリも開きっぱなしで、たまに保存を忘れる自分が恐ろしく感じるときもあります(笑)。

――普段の生活でもノートブックは持ち歩いているのですか?

 持ち歩いています。週末もクルマに乗せていますし、カバンを持たなくても、このノートだけを乗せていますね。カッコつけているわけでもなく、本当にあるんですよ、ご飯を食べていたら急に思い浮かんで、「紙を!」というときが。

 なので、脳の中でアイデアのシナプスがいつ起きるか分からない。枕元に置いていた時期もありました。すごく悩んでいて、何も出てこないときとか、パッと目が覚めて描くために。ただ、夜中に思い浮かんだものは、朝起きて見るとろくなものではないという現実も(笑)。思いついたと思って朝見たら何を考えていたんだろうと。それ以来枕元には置かなくなりましたね。大したアイデアも描かないで紙がもったいないなと(笑)。

ポケットにノートブックを入れるために、このジーパンを購入し愛用しているとか。昔、ミニPCの広告で、こんなシーンを見た気も

――でもそのラフスケッチの状態から、すぐCADに持っていけるというのがすごいと思います。

 やはり大学の時のトレーニングがいちばん効いているのかなって最近よく思います。形状把握と記憶能力が高まると、自分で想像した形状も正確に記憶できるので、わざわざ描かなくても頭の中で出来上がっているんです。そのままPC上でCAD図を描いている時は、自分の頭の中のものが本当にそのまま出ているのか確かめるのも楽しみでもあります。

 寸法を入れて行くと、今回はハズレかなとか(笑)。実際のミリ単位で入れていったとき、本当に自分が想像したプロポーションになっているかどうかは結構難しいところで、最近だいぶあたりはよくなってきましたが、昔はそれって何メートルのものなの? というプロポーションになっていたころもありました。頭の中では出来上がっていても、小さくしてみたら、そんなに流れを感じず、オーラも感じない線になっていたりすると、やはり感覚の正確さがまだ足りないなと感じていました。

 瞬時に記憶して、それを描きなさいというトレーニングをしていたからこそ、逆に頭の中で組み立てができると思うんです。絵をキレイに描くことをトレーニングして行くと、下手するとキレイな絵を描くことに集中してしまって、アイデアが膨らまない場合があるという考え方が、教わったことなんです。絵を描くことより、自分のアイデアをパってすぐ描く練習をしろとずっと習っていたので、それがすごく活きています。それに適しているのが、このモレスキンノートぐらいのサイズなのではと思っています。

――1年に何冊ぐらい消費するのですか?

 1年に1冊ですね。本棚に並べています。気持ちの入れ替えが重要なので、財布もノートブックも全部新年に変えます。財布も1つ決めていて、毎年同じものを買っています。ずっと同じものを使っちゃう性格で、身体もそっちに慣れてきて離れられなくなるので、モレスキンもそうなってしまいました。デザイナーさんが愛用するというのが分かる気がしますね。

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