週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ハイブリッド車の枠を超えた新型「アクア」は基本に立ち返った“イイクルマ”

2021年10月17日 12時00分更新

令和ではハイブリッドだけではクルマは選ばれない

 2021年7月19日に新型となったトヨタのハイブリッド車「アクア」。2020年2月発売のヤリスと同じTNGA GA-Bプラットフォームとしながらもアクアはまったく違うクルマになっています。

 先代のトヨタ アクアは2012年にプリウスに次ぐハイブリッド専用車として発売され、それ以来の販売台数ランキングではプリウスと常にトップを争うほど売れているハイブリッド車のビッグネームです。

 しかし令和になってもう3年。ここ2~3年のうちに発売されてきた新型車のほとんどはグレードの一つとしてハイブリッドが採用されていることから、それがアドバンテージとして活かされるということは希薄になり、クルマとしての完成度が求められるようになってきています。

 新型アクアは先代と全長、全幅はまったく同じ4050mmと1695mmとなっていますが、全高は30mm高い1485mmとなります。全長と全幅が同じ理由は小回りの利く先代の利点を継続していきたいという理由にほかなりません。そのため最小回転半径は先代と同じ5.2mを維持しています。

 新型アクアで大きく変わったところはホイールベース。先代に比べて、またヤリスとも比べて50mm延長され、その拡大分はBピラーから後ろの居住性に振り分けられています。このホイールベースの延長が新型アクアの特徴を決定しているといってもいいでしょう。

 この延長分のおかげでリアシートには前後方向に大きなゆとりが生まれます。しかし実際に着座すると延長分の50mm以上のゆとりを感じるかもしれません。これは頭上空間のゆとりの効果ともいえるでしょう。先代のアクアやヤリスに比べると後席乗員の頭上の天井高は高さで30㎜以上高くなっており先代のように頭上を圧迫されるような感じは皆無です。

 また全高が30mm高くなったことにより、リアドアの上下も広がって乗り降りのしやすさも格段に良くなりました。

 全長が同じでホイールベースが長くなったことで、リアシートの居住性が上がったということはラゲッジスペースが小さくなっているのではないかと思われる方も多いでしょう。5名乗車時のシートレイアウトでは前後方向の荷室長が44mm短くはなっていますが、荷室幅は53mm拡大されています。またラゲッジボードにより荷室がフラットになっているので数字以上の使い勝手の良さが光ります。

 リアシートをたたんで2名乗車のレイアウトにした場合、リアシートのシートバック部分とラゲッジスペースの段差はほとんどなく、フラットは荷台として使うことができます。

 ラゲッジスペースへのアクセスとなるバックドアは、開口部が上下方向に75mm広がって800㎜となっており、荷物の積み下ろしもスムーズにできます。開口部が上下方向に広くなるということはバックドアの取り付け部分も高くなってしまいがちですが、開閉に不便が無いように後端部分の高さは先代などとほぼ変わらないようになっており、身長160cmほどの佐々木萌香さんでも楽々手が届く位置となっています。

直進安定性が増した走行性能
バイポーラ型ニッケル水素電池を世界で初めて採用

 またロングホイールベースのおかげで走行特性にかなりの変化をもたらしています。ホイールベースが増したことにより直進性が増し、全体的な乗り心地がコンパクトカーとしてはかなりどっしりとした印象を受けるのです。ヤリスでも言われたことですが、GA-Bプラットフォームの車体剛性は非常に高く、その分サスペンションセッティングに大きな自由度を与えています。そのため路面の段差での突き上げ感が大きいといわれた先代のアクアに比べて、サスペンションのセット自体はやわらかい印象を受けますが、だからと言って無駄にロールするような下品な柔らかさではなく、路面と追従しているようなフラット感が増しています。

 エンジンについてはヤリスのハイブリッドと同じ、1.5リッター3気筒にハイブリッドシステムをつけたM15A-FXE型。しかし、ハイブリッドのバッテリーにはバイポーラ型ニッケル水素電池を世界で初めて採用。このバイポーラ型ニッケル水素電池は、通電面積を広くでき、それにより電池内の抵抗が低減されて大電流を一気に流せるので、コンパクト化とバッテリー出力向上を両立させています。これにより従来のニッケル水素電池やリチウムイオン電池に比べてアクセルの反応が早く、よりドライバーの意思に忠実な加速ができるのです。

 ハイブリッドだけでは差をつけられない今の時代、新型アクアはクルマの基本に立ち返っていいクルマ、求められるクルマとしてしっかりと地に足をつけたモデルチェンジをしているのです。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事