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部屋全体に広がる音の広さと、緻密なステレオ再生も可能

ソニーのグラススピーカーが相当に高音質化「LSPX-S3」

2021年07月13日 13時00分更新

音を聴いて納得、複数台の同時利用もぜひ検討したい

 従来機種のLSPX-S2と比較試聴したのち、ステレオペア再生、8台の同時再生などを試すことができた。すでに述べたように、ウーファー口径の拡大によって、ボーカルの厚みや明瞭度がアップした点が大きな特徴だ。

比べると、シリンダーがかなり長くなり、ディフューザーの位置が下がっているのが分かる

 外観については、有機ガラス管全体で音を広げる仕組みはそのままで、シリンダーの長さが20mmほど長くなっているのが分かる。ベース部分は、亜鉛合金にマット塗装を施したもので、触るとひんやりしている。ランプのような形状から、花瓶(あるいはタジン鍋)のような滑らかな曲線を描く形状となり、表面の手触りは素焼きの壺のようなサラリとした感じになっている。暖色系の間接照明下でみると、ベージュ風の落ち着いた色調に見え、主張しすぎない点がいい。

滑らかな曲線を描いたベース部分

加振器、柱のように3本の部材が立っていて、それぞれがガラス面を震わせ、各120度ずつの広さに音を広げる

 広いエリアに音が広がり、離れた場所でも減衰の少ないサウンドになっている点は従来機種と変わらない特徴だ。ただし、振動する筒部分の表面積が拡大することで、グラススピーカー特有の音色をより感じやすくなった面があるとする。

 手嶌葵の「Alfie」を聴くと、高域に少し特徴がある独特な響きを感じる。とはいえ基本はフラットな再現性になっており、そこにちょっとしたニュアンスや味わいが加味されるイメージだ。丁寧に調音された室内での再生ということもあり、リップノイズなど細かな音も際立つ。解像感やS/N感と言ったスピーカーとしてのポテンシャルの高さを感じ取れた。

左が従来機種のウーファー、右が新機種のウーファー

 ソニーの説明どおり、音質はLSPX-S2よりも確実に良くなった。誰でもわかるほどの差と言っていい。よりワイドレンジになる一方で、中域と低域の再現にゆとりが出て、音の広がりや安定感がかなり向上した印象を持った。有機ガラス管の振動が担当するのは主に3.5kHz以上の高域だというので、ボーカルのボディー感などは、ウーファー口径が大きくなった恩恵が大きい部分だろう。確かに、低域の強さや量感はアップしていて、ロック系の楽曲を聴くと迫力にだいぶ違いが出ることも確認できた。今回は1~2m離れた場所に座っての試聴だったが、LSPX-S3を置いてある机から床を伝わって、振動が体に響いてくるのが印象的だった。

ステレオペアでの再生

 LSPX-S3を2台用意し、60~70cm程度離した距離でステレオペアを組むと、独特な音場表現が得られる。Shawn Mendesのライブ音源を聴いたが、ステージ上にいるアーティストの歌声や楽器の音、そして、それを取り囲む位置にいる観衆の声援などが、立体的に配置される。イメージとしては、自分が大きなコンサートホールの後方の位置にいて、ステージ上のパフォーマンスを遠くから見下ろしているような感覚が得られる。ステージ上のパフォーマーがどの位置にいて、観客とどのぐらい離れているかなどもつかめそうだ。

 無指向性スピーカーということもあり、正面だけでなく、部屋のどの位置からもステレオイメージは感じられるのも特徴。正面ではなく、横に移動すれば斜め前から、後ろに回ればステージの背後からといったように、移動しながら聞くとライブ会場の様々な席でステージを眺めているような感覚が味わえて面白い。

 2台揃えると単品スピーカー並みの価格になるが、その価値は十分にある再生だ。

8台集めると壮観。試聴時は部屋の様々な場所に置かれた。

 さらに、LSPX-S3を8台に増して同時再生する体験もできた。こちらはスピーカーから音が鳴っている感覚が消えて、そのうちの1台に近づいてもそのスピーカーから音が出ているという感覚がない。音の出所が分からず、部屋全体で音楽が鳴っているような不思議な感覚が得られた。

 LSPX-S3は、単に音を出すだけでなく、照明的なアクセントにもなるので、喫茶店などの商業施設やオフィスのフリースペースなどで、音と視覚が一体となった空間をアレンジする用途に活かす機器としても使えるかもしれない。1台、2台、そして複数台と台数や配置によって異なる演出の音を楽しめる点が興味深いし、取り扱いによって、今までにない空間が感じ取れる。見た目や仕組みの面白さだけでなく、新しい音の体験が得られる製品と言うこともできるだろう。

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