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CGアニメ「映画 えんとつ町のプペル」制作の裏で活用されるRyzen Threadripper 3990X&980 PRO

Gen 4 SSDで体感2倍速!STUDIO4℃に聞いたCG制作で重要なPCスペック

2020年10月29日 11時00分更新

Ryzen Threadripper 3990Xでレンダリング作業が高速化

――MayaはCG制作に使われているのはわかるのですが、After Effectsは基本的にそのMayaで制作したCGカットの加工だけに使われているのでしょうか?

天田氏「CGカットだけでなく、手書きのカットなどすべてのカットのフィニッシュワークで使用してますね。あとは海面がゆらゆらするシーンであるとか、2D寄りのエフェクトを作る時なんかもAfter Effectsで作っています」

――なるほど。ちなみに、今回の映画製作ではどのぐらいのカットがあるんですか?

天田氏「全部で1437カットあります。もちろん、1カットずつ長さも処理の負荷も異なるのですが、基本的な制作フローはまずはMayaで動きを作って、それらにAfter Effectsで処理を加えてカットとして完成させます。そして、最終的にはそれらを編集機でつなげて一連のシーンとして出力しています。で、そのムービーを監督陣に1回見せてみましょう、というフローになりますね。で、気になるところがあれば、リテイクという感じになります」

――リテイクでCGまで直すレベルまでいくことはありますか?

天田氏「なるべくいきたくはないです(笑)いきたくはないのですが、やっぱりつないでみて初めてわかることもありまして……」

――お察しします。ちなみに、CPUの世代で言うと、今使っているマシンも結構新しめですよね?

天田氏「はい。今回の映画製作に併せて今年新調したので古くはないのですが、CG処理の負荷が多いスペシャルなシーンになると、どうしても重くなってしまうんですよね。なので、そういったスペシャルなシーンでも快適に作業できるワークステーションをTSUKUMOさんから借りることになりました」

――今回のワークステーションにはRyzen Threadripper 3990Xという64コア/128スレッドのいわゆる“メニーコアCPU”が搭載されているのですが、CG制作フローにおけるその利点はどういったところなのでしょう?

天田氏「やはり最も大きいのはレンダリングだと思います。レンダリングはどうしても時間がかかるので。例えば、レンダリングしてみたら髪の毛がめり込んでいて、それを直してまたレンダリングのボタンをぽちっと押してその結果が出るまで待ち時間になるので、その調整作業が速くなるのはありがたいですね」

AMDのHEDT向けCPU「Ryzen Threadripper 3990X」。64コア/128スレッドはコンシューマー向けでは最多コアを誇るモンスターCPUだ

――やはりCPUのスペックがレンダリング作業を短くすることに役立っているんですね。ちなみに、After Effectsに渡す前の最終出力作業もローカルのPCで行なっているのでしょうか?

天田氏「いえ。弊社では基本レンダーファームに投げていますね」

――レンダーファームとは一体どのようなものなのでしょう?

天田氏「レンダーファームは最終出力専用のレンダリングサーバーですね。弊社の場合、自社にサーバーがあります。現在ですと、リモートワーク中のスタッフが遠方から会社のデスクトップPCにアクセスしてCGカットを制作したらそのサーバーに投げて、そこでレンダリングが終わった素材をAfter Effectsでの編集フローに回すイメージです」

「映画 えんとつ町のプペル」の制作にあたり増設した地下のレンダーファーム。Core i3-10100、H470チップセット搭載マザーボード、500GBのNVMe SSD、450W電源ユニットを搭載するノードがシルバーラックに複数吊るされ、ネットワークハブで接続されている。まさ「ラックサーバー」といった見た目

――素人考えでは、Ryzen Threadripper 3990X搭載マシンなら最終出力作業もローカルで行なえそうなもんですが……

天田氏「そうですね。でも、現状今使っているPCの大多数はCore i7-10700K搭載PCなので、最終出力のレンダリング作業をそのPCで行なうとその間はほかの作業が止まってしまうので、レンダーファームに任せて並行作業したほうが効率が良いんです。もちろん、各ローカルPCがすべてRyzen Threadripper 3990X搭載マシンになれば、それぞれで最終出力レンダリングするのもアリなんですが、そこは予算とご相談です(笑)」

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