週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

eスポーツシーンに変革が起きるかもしれないレイテンシー低減!

謎の新技術「RTX IO」と「NVIDIA Reflex」とは一体何者なのか

2020年09月06日 11時00分更新

eスポーツゲームの世界が変わる「NVIDIA Reflex」

 今のPCゲームはフレームレートの高さはもちろんだが、ラグのないことも極めて重要になる。ラグと言えば、真っ先に思いつくのがネット回線の遅延(ping)によるものだが、ゲームのネットコードである程度軽減できても根本的な解決は難しい。

 NVIDIAが目指しているのは「インプットラグ」あるいは「End to Endラグ」、「Photon to Photonラグ」と呼ばれているものの短縮だ。どれも意味するところはマウスをクリックした瞬間から、それが実際にディスプレーに反映されるまでのラグである。当然、このラグが短ければ短いほどプレイしやすくなる。

 NVIDIAは改めてこのラグを「システムレイテンシー」と名付け、これを極限まで下げる「NVIDIA Reflex」を9月17日のGeForce RTX 3080発売日に向けて(ズレる可能性もある)準備中だ。

システムラグは原因によりいくつかの要素に分解できる(ネットが原因のラグはここに入らない)。マウスの反応もディスプレーの応答速度も原因のひとつだが、最も影響が大きいのはCPUとGPUが原因となるラグ(PC Latency)だ

 なぜシステムレイテンシーを減らすのが重要であるかはNVIDIAのブログを見ると良いだろう。ざっくり言えば、物陰にいる敵を攻撃する場合、システムレイテンシーが短いと、アタッカー側なら一方的有利な時間が⻑くなるし、防衛側になった場合は逆に一方的不利な時間を軽減できる。さらに、エイムの精度向上にも貢献できるなど、eスポーツゲーマーにはいいことずくめだ。

アタッカー(右のPeeker)が門の影に隠れている防衛側(左のDefender)を攻撃するために飛び出した、としよう。システムレイテンシーの短いアタッカー側から見ると防衛側の姿は丸見えなのに、防衛側からはほとんど見えていない瞬間が生まれる。システムレイテンシーが飛び出しをさらに有利にしている

システムレイテンシーが短いと、防衛側に回った時にも有利。最初は飛び出した左のアタッカーが有利な時間を得るのは変わらないが、アタッカー絶対有利な時間がより短くなる。どちらの姿も同じ程度相手に見えているのがその証拠

 NVIDIA Reflexに先駆けてすでにNVIDIAは“低遅延モード”(NVIDIA Ultra Low Latency、通称:NULL)なるシステムレイテンシーを軽減するための工夫をGeForceドライバーに実装している。筆者も2回(格ゲー編FPS編)にわたり、統計学的なアプローチで検証を行ない、FPS系タイトルでは劇的な効果を確認した。

 しかし、この低遅延モードはDirectX 11または9ベースのゲームにしか効果がなく、DirectX 12(やVulkan)のゲームでは機能しない。これはドライバーレベルで調整できる低遅延モードの限界ゆえの話だ。

 NVIDIA Reflexはゲームの遅延を制御するためのAPIであり、このAPIを組み込んで作られたゲームは、DirectX 12でも効果が出る。さらに言えば、NVIDIA ReflexはGPUに対するレンダリング待ち行列の類も完全にゼロにすることが可能になる。結果として、GPUが処理を開始する直前に入力を読み取り、それを画面に最短時間で反映させる。つまり、システムレイテンシーが極限まで短くなるのだ。

ゲームの画質設定が高く、GPUが描画処理の律速になっている(GPUバウンド)状態の時は、レンダーキューとバックプレッシャーが多量に貯まっている(上のバー)。画質を下げてGPUバウンドな状況を回避すると、描画待ちのデータはなくなえい、レイテンシーも短くなる(中央)。だが、NVIDIA Reflexを利用すれば、画質を下げなくても描画待ちのデータをゼロにできるので、システムレイテンシーは短くなる(下)。とは言え、レイテンシーを気にする人は素直に画質を下げる人が多いだろう

NVIDIA Reflexに対応したゲームは、従来の低遅延モードよりもさらに劇的なシステムレイテンシー軽減効果が期待できる。各ゲームで使用しているAPI(DirectX 11など)は不明だが、低遅延モードがほぼ効かない「Destiny 2」でも劇的な効果が出ている点に注目

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります