動画エンコード中の温度とクロックの推移を追跡
Core i9-10900Kの結果が微妙なのは、CPUクーラー(iCUE H115i RGP PRO XT)が発熱に負けているからではないかと考える人もいるかもしれない。しかし、結論から言えば、動画エンコード中のCPUパッケージ温度は最大でも80度未満、30回のサンプリング中でも70度未満と危なげない温度で収まっていた。
その証左として、以下のグラフをご覧いただきたい。Media Encoder 2020で動画エンコード処理を開始してから約30分間、CPUパッケージ温度やクロックなどを「HWiNFO」で追跡したものだ。室温は約30度、コア数が唯一8コアと少ないCore i7-10700Kは除外している。
Core i9-10900Kの温度がいきなり80度近くに上がっているが、1分程度で60度台中盤まで落ちる。この温度が急落するタイミングはTurbo Boost Power Maxの時間制限が切れるタイミングとほぼ一致している。Core i9-10850Kでは温度の急激な上昇が観測できなかったものの、開始1分後からの安定値はCore i9-10900Kとそう変わらない。ただし、Core i9-10900Kのほうは時々思い出したように温度が75度以上に跳ね上がるという挙動を見せた。
平均実効クロック(コアの占有率を勘案したクロック)ではCore i9-10900KもCore i9-10850Kもほとんど差がない。
上のグラフは最高クロックだけを拾って追跡したものだが、ここではCore i9-10900KがCore i9-10850Kを安定的に上回っている。その差は100MHzなので、スペック通りと言えるだろう。しかし、クロックの変動幅を見ると、Core i9-10850Kのほうが変動幅が小さい。Core i9-10900Kのほうはクロックを追い求め過ぎたあまり、クロックが強制的に下がる瞬間が長く、結果としてCore i9-10850Kに並ばれてしまっていると推測できる。
また、動画エンコード時間ではCore i9-10850Kに遠く及ばないCore i9-10900は、瞬間的にCore i9-10900Kレベルまで上がることはあるものの、極端に落ちることも多いことが判明した。いまいち性能が振るわない原因はこのクロックの変動幅の大きさから来ているのだろう。
CPU Package Powerの推移を見ると、開始直後はCore i9-10900Kが突出して高いが、1分を過ぎたあたりで125W前後に落ち着く。スパイクのように急激に上がったり下がったりしている部分は、ひとつの動画エンコード処理の終了/開始タイミングにほぼ一致している。
この結果は今回使用したマザーボードのファクトリーデフォルト設定が、PL1(Turbo Boost Power Max)をTDPに合わせる設定になっているためである。PL1を無制限に設定した場合は、また違った結果になることは明らかだが、今回PL1=無制限設定は時間の都合で検証を見送った。
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