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農機具のクボタが、業務用の空気清浄機で5倍の成長、意外な組み合わせの背景は?

2020年05月15日 09時00分更新

快適性から安心感へ、変わる室内環境への意識

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、室内環境に対する関心が高まっている。これまでは、「快適性」が重視された室内環境だが、昨今では、「安心感」が重要な要素になっているからだ。とくに、多くの人が集まる公共施設や店舗などであればなおさらだ。

 そうしたニーズの高まりにあわせて、販売を伸ばしているのが、クボタの「ピュアウォッシャー」だ。業務用の加湿空気清浄機として開発された「ピュアウォッシャー」は、大空間の空気清浄を行うほか、「微酸性電解水」を生成し、これを使って除菌や消臭をすることも可能だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、同製品の2020年度の生産計画は年間1000台と、従来比5倍という規模に引き上げるほか、2016年の発売以来、累計出荷台数700台を、わずか1年で大きく上回ることになる。

水という観点で、環境事業に携わる

 クボタに対して多くの人が持つイメージは、トラクターなどの農機具メーカーというものだろう。実際、2019年度(2019年1月~12月)の売上高1兆9200億円のうち、農機およびエンジンが65.7%を占める。

 では、そのクボタが、なぜ空気清浄機を開発したのだろうか。

 実は、今年、創業130周年を迎えた同社は、1890年の創業時には、鋳物の製造および販売からスタート。創業直後の1893年には、鋳鉄水道管を製品化し、その後、バルブやポンプなどの製造で成長するなど、創業時から「水」に関する事業を推進。現在でも、国内高度浄水処理施設におけるシェアは約80%という実績を持つ。つまり、水という観点から環境事業に携わってきた経緯がある。

 さらに、1960年代の高度経済成長期における建設ラッシュにより、施設の空調機器のニーズが拡大。それにあわせて、クボタは、1970年、米トレーンとの合弁企業であるクボタトレーン(現・クボタ空調)を設立。空調機事業に乗り出し、現在では、全国の高層ビルや大規模ショッピングモールなどのほか、気密性や防塵、防錆性能を必要とする精密工場やデータセンター、雷蔵現場などのクリーンルームといった施設に空調機を販売。さらに、施設園芸農業向けの空調機も製品化している。

 業務用加湿空気清浄機の「ピュアウォッシャー」は、工業用クリーンルームで求められる微細な粉塵の除去や、ガス状汚染物質の低濃度化といった事業で培ったエアワッシャ技術を応用して開発。オフィスや医療福祉施設、保育園、ショールーム、コールセンターなどに導入されている。なお、2019年からは、クボタ製計量機器の販売メンテナンスを行うクボタ計装が販売を行っている。

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