週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

交通インフラWEEK×ASCII STARTUP出展募集説明会/講演会

自動走行ロボットによる無人配送など、空陸一貫輸送がインフラ化する未来

インフラに対応するために求められるものとは

 後半のパネルディスカッションでは、新たな交通インフラについて登壇各社が議論を交わした。

Q.新たな交通インフラを支えるサービスとしての手ごたえは?

皆川氏(以下、敬称略):「CBcloudはまだ小さな会社なので、実証実験だけでなく、できるだけサービスに落としていきたい。ANA Cargoさんとの連携も当初は実証実験だけ、という話でしたが、今はリリースしたのだからサービスを始めるしかない、という雰囲気になっています。航空便は高いイメージがあるが、実は届け先によっては陸路で運ぶよりも安い。実証実験をやってみて手ごたえがあれば、すぐにサービスになる可能性はあります」

牛嶋氏(以下、敬称略):「9~10月のうみかぜ公園での自動走行ロボットによる配送は、実際のサービスとして行ないました。バーベキューやピクニックをしているお客さんが冷たい飲み物やアイスが欲しくなったとき、公園の外の店舗まで行かなくてもロボットが配送してくれる。実際にメリットを感じてもらっているという実感があります」

北島:「苦労したことや改善点などはありますか?」

ASCII STARTUP 北島幹雄

皆川:「PickGoは、まだ軽貨物しか運べないですし、第二種免許を持っていないと人を運べないなど、法制度によってサービスの幅が狭まっている。法整備が早く進めば、サービスの幅がもっと広がるように思います」

牛嶋:「うみかぜ公園でのサービスも、発送元の店舗と公園の間に公道がありますが、自動走行ロボットはその公道を横断していません。そこで、公園側まで店舗のスタッフが商品を運んでから自動走行ロボットが配送するという方法をとっています。公道を走行できるようになれば、より広い範囲にサービスが拡げられます。官民協議会は立ち上がったばかりで、議論はこれからです」

北島:「制度を変えるのは簡単ではないということですね」

牛嶋:「自動走行ロボットが日本の社会にとって必要なソリューションであることをアピールしていくとともに、どのような安全対策を講じるのかを具体的に示していく必要があります。そのために、企業として、うみかぜ公園のような実際のサービスを展開して事例をつくっていくことが大事だと考えています」

Q.交通インフラへ新しい技術を導入するにあたりどのような切り口からのアプローチがよいのか?

中川氏(以下、敬称略):「鉄道業界は車業界に負けないほどのピラミッド構造といえます。というのも絶対の安全を保障しないといけないので、30年間壊れない、24時間365日使えること、といった厳しい基準があります。そこに新しい技術を導入するには、鉄道事業に長く参入している企業(日立や三菱など)と組んでいただくほうが入りやすいかもしれません。とはいえ、今は鉄道事業もMaaSなどサービスが広がっており、ウェブやスマホアプリを使ったお客様へのサービスの部分ではご一緒できることは多いと思います」

北島:「JR東日本の課題解決として、特に求めている技術はありますか」

中川:「メンテナンスに非常に人手がかかっているので、ここを自動化・機械化していきたい。人が巡回したり、高所を望遠鏡で確認したりしているところをセンサーやAI、ドローンに置き換えるなど、ベンチャー企業が参入する余地はたくさんあると思います」

Q.インフラに対応するための経済合理性や安全性という点で何を重視しているか?

皆川:「僕はKDDI出身なので、当時はインフラとして365日つなぎ続けるのが使命でしたが、ベンチャーの立場では、逆に大企業に甘えてもいいのかな、と。JR東日本スタートアップのように別の組織体をつくってもらい、サービスにする段階で足りないところはJR東日本さんの中でやっていただければ、と思っています」

牛嶋:「うみかぜ公園でサービスを実施している間に台風が上陸し、地面に穴ができたり、木の枝が下がったりしました。こうした街の変化に対してロボットがセンサーで検知して対応するのか、それともインフラ側にセンサーを設置してロボットにその情報を提供するのか。これからはロボット単体とインフラ両面での安全対策を考えていく必要があります」

北島:「楽天さんの自動走行ロボットはどのくらいのスピードが出るのでしょうか」

牛嶋:「現在は人が歩く程度のスピードです。人が周りの安全を確認しながらついて行けるような速度に設定しています」

北島:「JR東日本では、このような他社の新しい技術やサービスをつなぐ流れはあるのでしょうか」

中川:「全部のサービスを自社でやるのは間違いなく無理です。フィンテック、AIなどいろいろな最先端技術を他社と協力しながら、サービスを拡げていくのが現実的です」

皆川:「ANA Cargoさんとの提携では、ANAさん側が従来のシステムを変えようとしているタイミングだったこともあり、スムーズにつながりました。ただ、10ヵ月程度で当初は二種免許の問題をクリアしようとしたことで時間がかかりましたが、物流に限定する方向に変えてからは3ヵ月程度で実現しました」

北島:「JR東日本さんは2027年までのロードマップを描いていますが、CBcloudさん、楽天さんは今後の展開をどのように計画されていらっしゃいますか」

皆川:「3年前にはなかった会社なので3年後を考えるのは難しい。常に世の中の動向を把握してやっていきたい。今は、物流業界のIT化を喫緊に進めていきたいです」

牛嶋:「現在は私有地など限られた場所でサービスを展開している段階ですが、政府の成長戦略では、公道上での実証を実現するため、今年度内に基準の策定等を行うこととしています。その基準が策定されたら、来年には公道上での実証を行ない、早くサービスを実現したいと考えています」

Q.MaaS・スマートシティに関する将来予想を教えてください

皆川:「配送車は毎日、多くの距離を走っており、道路や宅配状況のデータを収集可能です。こうしたデータを活用したい会社と組める可能性もあります。スマートシティで交通インフラが自動化されても人の手が必要な部分はある。新しいシステムの中でより最適に人とのマッチングができるサービスを担っていきたいです」

牛嶋:「自動走行ロボットには地図のデータが必要ですが、官民協議会では地図データは、各々の会社が作るよりも一緒に作ったほうがいいのでは、という意見も出ています。そのような地図データなども活用しながら、自動走行ロボットがあらゆる場所へ色々な商品を届けるような将来を想定しています」

中川:「鉄道会社は、列車の位置、状態、乗客の行動など、非常に多くのデータを社内に保有しています。今後は、他社の鉄道会社や通信会社の持つさまざまなデータを組み合わせることで、より快適なサービスが可能になるのではないでしょうか。たとえば、集まったデータから行動を予測し、個人の行き先に合わせて、次の行動の提案ができるようになればいいな、と思っています。

 JR東日本ではバスの自動運転を始めていますが、単にバスを自動運転するだけではダメ。そのまちに何が求められているのか、利用者のニーズをくみ取りながら施策を打っていかないと、技術偏重になり利用者が置き去りになってしまう。人とモノの移動を考えたとき、人を商店街への交通手段がほしいのか、コンビニの移動販売のように店を住宅街へ動かすほうが快適なのかは地域によっても異なります。自動化を誰にとってメリットがあるのかを利用者目線で考えながら進めていくことが大事だと思っています」

北島:「みなさん本日はありがとうございました」

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事