2015年8月20日、NVIDIAは新たなエントリーミドルクラスGPU『GeForce GTX 950』を発表しました。既に国内でも販売が始まっており、主に2万4000円~2万7000円の間で取り扱われています(ちなみに北米の想定価格は159ドルです)。
NVIDIAのエントリーミドルクラスといえば、約1年半前に発表されたGTX750TiやGTX750があり、その上にはミドルの主力であるGTX960があります。しかしGTX750TI/750はHDMI2.0やメモリー圧縮技術、MFAAといった機能をもたない“第1世代Maxwell”世代のGPU。さらに言えばこれまで第2世代Maxwellの末っ子GTX960とは性能の差が大きく開いていました。しかしGTX950が登場したことでこのギャップが埋まり、GTX900シリーズは一応の完成をみることになります。
今回はPalit製のサンプルボード『NE5X950S1041-2063F』を手に入れることができました。早速性能をチェックしてみましょう。
GTX750Tiより上か? 下か?
GTX950登場でイチバン気になるのは、GTX750Tiより上か下かということ。それはスペック表を見れば一発で分かります。
GeForce GTX960 | GeForce GTX950 | GeForce GTX750Ti | GeForce GTX750 | GeForce GTX650 | |
---|---|---|---|---|---|
GM206 (Maxwell) | GM206 (Maxwell) | GM107 (Maxwell) | GM107 (Maxwell) | GK107 (Kepler) | |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm | 28nm | 28nm |
SP数 | 1024基 | 768基 | 640基 | 512基 | 384基 |
コアクロック | 1126MHz | 1024MHz | 1020MHz | 1020MHz | 1058MHz |
ブーストクロック | 1178MHz | 1188MHz | 1085MHz | 1085MHz | - |
メモリー転送レート (相当) | 7GHz | 6.6GHz | 5.4GHz | 5GHz | 5GHz |
メモリーバス幅 | 128bit | 128bit | 128bit | 128bit | 128bit |
メモリー搭載量 | GDDR5 2GB | GDDR5 2GB | GDDR5 2GB | GDDR5 1GB | GDDR5 1GB/2GB |
TDP | 120W | 90W | 60W | 55W | 64W |
外部電源 | 6ピン | 6ピン | なし | なし | 6ピン |
↑GPU-Zで計測。 |
描画性能の要となるSP数を見ると、GTX750Tiが640基なのに対し、GTX950は768基。おまけにGTX950の方がブーストクロックは1188MHz。その他あらゆるスペックでGTX750Tiを上回っています。つまりGTX950>GTX750Ti>GTX750という序列ですね。
消費電力の指標となるTDPは90W、外部電源は6ピン1系統を必要とします。外部電源なしでも動く(製品がある)のがウリのGTX750Tiの後継とするにはちょっと残念な気もします。
↑外部電源は6ピン×1。しかしTDP90Wなので電源ユニットへの負担は少ないはずです。 |
↑映像出力はおなじみの構成。第2世代MaxwellなのでHDMI出力は4K@60Hz対応のHDMI2.0となります。 |
ゲーマーの反応を向上させる機能とは?
グラボというのはゲームをより美しく、より滑らかな画面で楽しむためのもの、というのは自作erにとっては常識です。しかしちょっとフレームレートが上がった程度ではゲーマーの心に刺さらないようになってきました。
しかしNVIDIAは、グラボに“レイテンシー低減”という新たな評価軸をブッ込んできました。GPUを高性能にすれば短時間で描画できますが、描画できた映像が画面に出るまでにはさらに時間を必要とします。ミリ秒オーダーの短い時間ですが、eスポーツのような競技性の高いゲームに取り組むようなゲーマーにとっては、このミリ秒オーダーのラグも無視出来ない存在。そこでNVIDIAはMOBA系ゲーム用に“低レイテンシー”な最適化を施すことを思いつきました。
↑GTX650が1フレーム画面に出すには80ミリ秒必要。しかしGTX950の性能と最適化があれば、約半分の45ミリ秒で終わる、という図です。 |
具体的にはゲームの描画をDirectXに渡すときのパイプラインを減らす、つまりプリレンダーフレームを減らすことでレイテンシーを圧縮します。この低レイテンシープロファイルはGeForce Experience経由で獲得でき、これを選んで最適化すれば低レイテンシーで遊べるというものです。
↑2本のパイプラインを総動員して1フレーム描いている処理を、GTX950なら1パイプラインで済むので、そのぶん速く画面が出力できますよ、という図です。 |
↑GeForce ExperienceでゲームをスキャンするとLoLやDota2用に低レイテンシープロファイルが出現、これを選択することで低レイテンシーなゲームが楽しめます。 |
しかし筆者の環境ではどう頑張っても低レイテンシープロファイルが出現しなかったため、残念ながら低レイテンシーの検証はできませんでした。また機会があれば検証したいと思います。
ベンチ環境はSkylake-SとWindows10
今回のベンチ環境は以下の通りです。これから試すならやっぱり最新がよいだろう、ということでSkylake-SとWindows 10環境でテストしてみました。また、比較用グラボとしてGTX960/GTX750Ti/GTX750/GTX650を準備しています。
【検証環境】 CPU:Intel『Core i7-6700K』(4GHz、最大4.2GHz)、マザーボード:ASUS『Z170-A』(Intel Z170)、メモリー:Crucial『BLS2K8G4D240FSA』(DDR4-2400、8GB×2)、ストレージ:Crucial『CT1000MX200SSD1』(1TB SSD、SATA3) 電源ユニット:Corsair『RM650』(650W、80PLUS Gold) OS Windows 10 Pro 64bit DSP版
グラフィックボード:Palit『NE5X950S1041-2063F』(GeForce GTX950)、ASUS『STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5』(GeForce GTX960)、ASUS『GTX750TI-PH-2GD5』(GeForce GTX750Ti)、ELSA『GD750-1GERX』(GeForce GTX750)、ASUS『GTX650-DCT-1GD5』(GeForce GTX650) ドライバ:GeForce 355.60/355.65(GTX950のみ)
GTX960とGTX750Tiの間にスッポリ
では『3DMark』のスコアー比較から始めましょう。テストは“Fire Strike”および“Fire Strike Ultra”です。
GTX950はGTX960と750Tiの中間位の所に見事着地しています。雰囲気的にGTX760といい勝負のような気がするため、GTX760の買い替えではなく、あくまでGTX650やGTX750等、型番末尾2桁が“50番台”のGeForceの買い替え用ですね。
続いては『ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド』公式ベンチ、『METAL GEAR SOLID: GROUND ZEROES』、最後に『バトルフィールド4』とゲーム系ベンチを3本続けてチェックします。どのゲームも解像度フルHD(1920×1080ドット)、画質は各々のゲームで最高の設定にしています。
↑FF14ベンチの結果。DirectX11モードで計測しました。 |
↑MGSV:GZのベンチ結果。“諜報員回収”プレー時のフレームレートを『Fraps』で計測しました。 |
↑BF4のベンチ結果。キャンペーン“TASHGAR”開始時のカットシーン再生中に『Fraps』で計測しました。 |
どれも傾向は3DMarkと同じです。描画負荷が軽めのFF14やメタルギアなら最高画質でも余裕で遊べますが、ミドル級ゲームであるバトルフィールド4になると少し設定下げが必要でしょう。ローコストなエントリーミドルクラスGPUとしては十分な性能といえます。
では消費電力はどうでしょうか? システム起動10分後をアイドル時、3DMarkの“Fire Strikeデモ”中を高負荷時として比較します。消費電力計測には『Watts Up? PRO』を使いました。
第2世代Maxwellは省電力機能も優れている、というのが売りですが、さすがに前世代の低スペックGPUよりは性能が出るぶん、消費電力も多くなります。ただここで視点を変えて、3DMarkのFire Strikeスコアーを稼ぎだすための電力効率……つまり1ワットあたりのスコアーを比べてみます。
GTX950はGTX650~750Tiに比べると絶対的な消費電力は増えましたが、ワットパフォーマンスはものすごく向上していることがわかります。
まとめ:性能はバッチリだが、今急いで買うと……
GTX950はフルHDゲーミング環境を構築するのにちょうどよいスペックと言えます。FF14等の描画軽めのゲームはもちろん、ちょっと画質を落とせば中量級ゲームもバッチリです。
しかし問題は既存のGTX960と値段が被っていることです。冒頭で述べた通りGTX950は主に2万4000円~2万7000円の間で取り扱われていますが、この値段ならもう1~2千円追加してGTX960という選択もあるでしょう。
出たばかりのご祝儀価格であることは明白ですが、製品のランクを考えれば、GTX950は2万円台前半に陣取るべき製品といえます。今すぐ買うよりも(原稿執筆時では通販は瞬殺されていますが)、価格が落ち着くのを待ち、その上で自分のニーズを見極め、GTX950か960を選ぶのが賢い買い方でしょう。
■関連サイト
NVIDIA
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります