皆さんこんにちは! 今ゲームといえばPS4関係が盛り上がってますが、生粋のPCゲーマーの私としては、今日PC向けに封切られた注目のFPS『タイタンフォール』が気になります。締め切りやら確定申告やらでしばらく遊べませんけどね!(涙)
自爆気味のツカミはさておき、今日注目したいのはゲームではなく、最新ゲームをフルHDで快適に楽しむためのゲーミングノートの話です。今日3月13日にNVIDIAはモバイル向けのGPU『GeForce 800M』シリーズを発表しました。主要ノートPCメーカーから新GPUを載せた製品が続々登場する予定ですが、今回は新GPUを採用した、MSI製の17.3インチフルHD液晶を搭載したハイエンドゲーミングノート『GT70』をゲットできました。さっそくこのノートの凄さを紹介したいと思います。
GT70 Dominator Pro
●MSIコンピューター(関連サイト)
●実売価格 未定
今回テストした製品の仕様は以下の通り。スペック表の見どころをじっくりと解説していきますよ!
●主なスペック
CPU Core i7-4800MQ(2.7~3.7GHz)
液晶ディスプレー 17.3インチ(1920×1080ドット)
グラフィック GeForce GTX880M
メモリー 16GB(最大32GB)
SSD 128GB×3(mSATA、RAID0)
HDD 1TB(7200rpm)
光学ドライブ BD-RW
通信機能 ギガビットLAN、802.11a/b/g/n(2x2)、Bluetooth4.0
インターフェース USB3.0×3、USB2.0×2、HDMI、D-Sub15ピンほか
サイズ/重量 428(W)×288(D)×55(H)mm/約3.9kg
●見どころその1:GPUは最速の“GTX880M”搭載!
GT70の外観はすでに発売されている『GT70 2OD-207JP』を踏襲していますが、先刻発表されたばかりの“GeForce GTX880M”を搭載しているのが最大の見どころです。このGPUのスペックをまずチェックしてみましょう。
GeForce GTX880M | GeForce GTX780M | |
アーキテクチャ | Kepler | Kepler |
SP数 | 1536基 | 1536基 |
コアクロック | 954MHz | 823MHz |
メモリークロック | 5GHz相当 | 5GHz相当 |
メモリー搭載量(バス幅) | GDDR5 8GB(256ビット) | GDDR5 4GB(256ビット) |
Battery Boost | 対応 | 非対応 |
GTX780Mのクロックは“最大値”を示しており、実際の製品では異なる場合があります。
『GPU-Z』でGT70の搭載GPUをチェック。GT70におけるブーストクロックは993MHzでした。
描画性能を最も左右するSP(CUDAコア)数は1536基ですが、これはGTX780Mから変化していません。アーキテクチャーもワットパフォーマンス重視の“Maxwell”ではなく“Kepler”で手堅く設計された感じです(MaxwellはGTX860M以下のモデルで採用されています)。
そのかわりコア(ベース)クロックが954MHzまで上がり、さらにGPU Boostにより自動的にクロックが上がるため、GTX780Mより15%程度性能が上がるとされています。GTX880Mのブーストクロックは公開されていませんが、GT70のブーストクロックは993MHz、ゲームを動かした際の最高値は992.9MHz、安定値は953.7MHzでした。冷却に制約のあるノートPCの場合、GPUのブーストはあまり期待できませんが、ベースクロックが上がっている点は評価できます。
GT70の底面全体。中央奥のブロックの下にGPUがあるようです。
太いヒートパイプが何本も走っているのがわかります。ハイパワーなCPUとGPUなので冷却にはかなり気を使っているようです。
さてGTX880Mは速いだけなのか……というと違います。GeForce 800Mシリーズより利用可能になった“Battery Boost”がミソです。従来のGPU搭載ノートではバッテリーでゲームを楽しもうと思っても1時間もたずに力尽きてしまうものでした。しかし、Battery Boostを使うことで、駆動時間をさらに延ばせるのです。その技術の根幹となるのが、Kepler系GeForceで利用可能になった“Frame Rate Targeting(以下FRT)”と略します。要するにフレームレートの上限をドライバー側で固定することで、バッテリー駆動時に無駄にGPUを働かせないようにする、というものです。同時にGPUのコア電圧なども下げるなどの省電力テクニックも併用されます。
Battery BoostはGeForce Experience内に新設された“バッテリ”画面で設定します。FRTのデフォルト設定は“30”ですが、バッテリー駆動になった瞬間からFRTが効きはじめ30fps制限がかかり、ACアダプターを接続するとFRTが解除されます。FRTの上限値は20~50fpsの範囲で設定できますが、このゲームは動きがないので20fps、このゲームは滑らかさ重視で50fps……という設定はできないようです。
“バッテリ”使用時にフレームレートターゲットを設定します。”のチェックを外すとBattery Boostは無効化されます。
また、GeForce Experienceではゲームごとに最適な画質を設定できる機能がありますが、Battery Boostに対応したシステムでは、バッテリー駆動時とACアダプター駆動時で画質を自動的に切り替える機能も付くようです(テストしたGT70はドライバーの関係でこの機能には未対応でした)。バッテリー駆動時はGPUの電力を消費しないようアンチエイリアスやテクスチャーの品質を自動的に下げ、ACアダプター駆動時は自動的に上げてくれるようになります。ただ、ゲーム中にACアダプターを抜いて画質を変えることはできません(これを実現するにはゲーム側の対応が大変なので見送られたのでしょう)。
今回のテスト時点では、GeForce Experience上で画質の最適化情報があるゲームのみBattery Boostが発動しました。つまり『3DMark』や『新生FFXIV』のベンチではBattery Boostは効きません。
Battery Boost以外の新機能としては、ゲームを低負荷で録画するSHADOWPLAY、日本未発売の携帯ゲーム機『SHIELD』にゲーム画面を転送するGame Streamingなどがありますが、とりあえず「より高速になり、省電力機能が強化されたのが800Mシリーズ」 と覚えておけばよいでしょう。性能についてはこの後でもう少し詳しく検証します。
●見どころその2:SSDはRAID0で超高速!
2番目の見どころは内蔵ストレージの大幅強化。昨年モデルのGT70では、ストレージの構成は“SSD 128GB+HDD 750GB”でしたが、新GT70は“SSD 384GB+HDD 1TB”にグレードアップ。しかもSSDは3基のmSATA SSDをRAID0化しているため、速度も凄そうです。
テスト機には東芝製SSD“THNSH128GMCT”が3基入っていました。
“CrystalDiskMark”でざっと性能を計測してみたところ、順次読み込みは毎秒1.3GBを突破! これは速いですね!
●見どころその3:ゲーマー感激の装備満載
ゲーマーにイチバン大事な装備はGPUですが、GPU一点豪華主義だけでは満足しないのがゲーマーの業というもの。操作性のよいインプットデバイスや迫力のあるサウンド機能は必須装備です。
もちろんGT70はその点にこだわって設計されています。まずMSIのゲーミングノートではおなじみのSteelSeries社とのコラボから生まれた専用キーボードは、全キーマクロ対応かつ打鍵感も軽快。APM(Actions Per Minute)の多さが勝負のRTS系ゲームでは特に威力を発揮しそうです。
ゲーマー用インプットデバイスの大御所SteelSeriesのDNAが入ったキーボードが採用されています。
Windows上の専用設定ユーティリティーを使うことで、ほぼすべてのキーに対しマクロを設定することができます。難しいコマンドはこれに登録すれば、ゲームもぐっと効率良く進められます。
キーボードは左右中央の3ブロックそれぞれに好きなバックライトカラーを割り当てることができます。発光パターンを複数登録し、好きな時に入れ替えることも可能です。
キーボードの色つきバックライトはゲーミングPCの定番装備。否応にも“ゲームのやる気”が盛り上がります。
サウンド機能もゲームサウンドの臨場感を重視した仕様です。まずクリエイティブ『Sound Blaster Cinema』を利用することでサウンドの定位や音質をゲームや動画観賞などのシーン別に切り替えることができるほか、本体搭載のスピーカーシステム“Dynaaudio”は適度に低音の効いた迫力のサウンドが楽しめます。
さらにGT70にはSteelSeries製の人気ゲーミングヘッドセット“Siberia V2”のMSI限定モデル(MSI Dragoon Army Edition)が同梱されます。GT70との接続はUSBではなくアナログ入出力経由ですが、GT70のオーディオ入出力系端子はすべて金メッキとこだわっています。
本体左手前の4つの金メッキ端子がヘッドフォンやマイク入力などの端子です。
MSIのゲーミングブランドカラーを使った真っ赤なヘッドセットが付属します。一見するとオープンエア型のようですが、密閉型なので音漏れは最小限です。MSI限定モデルなのでドライバーの中央にはドラゴンのエンブレムが!
●新GPUの威力はいかに?
それではGT70のゲーム性能をチェックしてみましょう。まずは簡単に『3DMark』と新生FFXIVの公式ベンチを試します。この2つのベンチはGeForce Experienceで画質の最適化ができない、つまり(テスト時点では)Battery Boostが効かなかいテストでした。でも一応ACアダプター駆動時とバッテリー駆動時で挙動を比較します。
3DMarkではBattery Boostは効きませんが、スコアーは下がりました。
最高品質&フルHDで計測したところ、FFXIVのベンチでもバッテリー駆動時は性能が下がりました。
Battery Boostが効かないのにスコアーが下がるのは、システムに備わる省電力機能のおかげで、バッテリー駆動時に省電力モードで動くためと考えられます。つまりBattery Boostを使えばこれ以上の効果が見込める、ということですね。
性能が下がったとはいえ、バッテリー駆動でもFFXIVで7000スコアーを出してしまうあたり、さすが最速GeForce搭載ノートといったところでしょうか。
ではGTX880Mのウリの機能であるBattery Boostの効果を検証するために『バトルフィールド4』のフレームレートをチェックしてみます。ここでは“ACアダプター駆動時”、“バッテリー(Battery Boost有効時)”と“バッテリー(Battery Boost無効時)”でどうフレームレートに違いが出るかに注目しましょう。前述のGeForce ExperienceにおけるFRTの設定は“30”に設定しました。画面解像度は1920×1080ドット、画質は“最高”または“中”に設定、シングルプレイ用ステージ“Tashgar”開始時のフレームレートを“Fraps”で測定しています。
Battery Boostを有効にするとほぼ30fpsに固定されます。
画質を下げて負荷を軽くすると、差がより顕著になりました。
Battery Boost無効でもバッテリー駆動にするとフレームレートが下がりますが、この状態からさらにフレームレートを抑え、カクつかないギリギリのライン(ここでは30fps)にとどめるのがBattery Boostの機能といえますね。そしてACアダプターで動作させれば、あの重いバトルフィールド4も30fpsをキープした上で快適に遊べるという点にも驚きです。これならタイタンフォールも怖くないですね。
●バッテリー駆動時間や静音性はどう変わる?
Battery Boostを有効にするとフレームレートが指定値まで一気に下がることは確認できましたが、じゃあ実際にそのぶんバッテリー駆動時間は延びるの? ということを検証してみます。ここでのテストは『トゥームレイダー』のベンチマークモードを延々と走らせながら『BBench』を使ってバッテリー残量の記録をとります。Battery Boost有効・無効時のほかに比較対照として、BBenchを使った通常のバッテリー駆動時間計測(キーストローク&ウェブ巡回)も計測しました。液晶輝度は50%に固定し、無線LANをオンにして計測しています。
Battery Boost有効でバッテリー駆動時間は確かに伸びましたが……。普通では1時間もたなかったバッテリーが、Battery Boostを有効にすることで1時間を超えることができました。数分しか伸びないのは、GTX880MはハイパワーなGPUであるため、少々フレームレートを抑えた程度ではあまり変化しない、ということでしょうか。Battery Boostが真の威力を発揮するのは、13~15インチクラスでミドルクラスのGTX860Mあたりなのかもしれません。
ここでもう少し詳しくBattery Boostの挙動をチェックしてみます。最初はACアダプター駆動、途中でバッテリー駆動に切り替え、再びACアダプター駆動に戻したときに、GPU温度や負荷、フレームレートがどう変化するのか? ここでも“トゥームレイダー”のベンチマークモードを延々と走らせ、『HWiNFO64』と『Fraps』で測定しました。まずはBattery Boost有効の状態でチェックしてみます。また、Battery Boostは“30fps”に設定しています。
Battery Boostを有効にした時のGPU温度などの変化。中央の凹んだ区間がバッテリー駆動時です。グラフは3つのセクションに分かれていますが、両側がACアダプターで駆動している部分、中央の凹んだ部分がバッテリー駆動時の挙動です。
まずFPSに注目しましょう。バッテリー駆動している間ずっとフレームレートが30に張り付いている(厳密に言えば29~30fps)ことがわかります。ACアダプター使用時はFRTの設定は無視されるので、GPU負荷は常に100%に張り付きますが、ACアダプターが外れたことでFRTが効き、30fpsに固定されます。それまで80~120fpsあたりを上下していたフレームレートを抑制することで、GPU負荷が一気に40%前後に下がりました。消費電力もこのぶんだけ低下すると考えてよいでしょう。
また、GPU負荷の低下に伴いGPU温度も一気に低下します。ACアダプター駆動時のGPU温度は90度を超えていますが、バッテリー駆動時では70度に落ちました。後で解説しますが、このときファンノイズも一気に下がります。
上のテスト実行時のGPUクロックの推移。
同様にGPUコア電圧の推移。
さらにこのときのGPUクロックやGPUのコア電圧も調べてみました。こちらもバッテリー駆動に切り替わった瞬間に変動をはじめ、ACアダプター駆動に戻すとほぼ固定値に戻りました(GPUクロックについては、ACアダプター駆動でもGPU温度などでクロックが変動することもあります)。
比較用にBattery Boost無効時のGPU温度、GPU負荷、フレームレートの変化を見てみます。Battery Boostがなくてもバッテリー駆動時はパワーを絞って動作しますが、GPU負荷は平均して高く、結果としてGPU温度は30fps固定時よりやや高めになりました。
Battery Boostを無効化してもGPU温度や負荷は下がりますが、Battery Boost有効時よりも高めで安定しています。
最後にファンノイズに与える影響も調べてみました。これも『トゥームレイダー』を使って計測しました。暗騒音は約33dBAです。
Battery Boostはファンノイズを小さくする効果があります。
正直ACアダプター駆動時のファンノイズは付属のヘッドセットを付けたくなるくらいでしたが、バッテリー駆動に切り替えると次第にファンノイズが下がりはじめます。GPU温度が下がったことによる効果ですね。Battery BoostはGPU温度を大きく下げるので、静音になる理屈も納得できます。ゲームでないと効果を発揮しないのが寂しいところですが。
●まとめ:ゲーマーなら必見!
長々とレビューしてきましたが、ノートPCとしてのGT70の完成度は静音性と本体の大きさに難があるものの、ゲーミングPCとしての完成度は一級品であることがわかりました。ファンノイズが大きい点は残念でしたが、GTX880Mの熱を1基のファンで冷やしていることを考えれば仕方がない部分です。タイタンフォールはもちろん、ようやく5月に日本でのサービスインが決まった『ブレイドアンドソウル』など、話題のPCゲームをすべて遊び尽くしたい! という人にはバッチリなマシンではないでしょうか。
(10:00追記)主なスペックを追記しました。
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