ドコモは29日、2015年度第1四半期の決算を発表した。営業収益は前年同期比0.1%増の1兆768億6400万円、営業利益は同12.3%増の2353億9500万円で増収増益。ドコモが増収増益になったのは実に4年ぶりのことで、加藤薫社長は「年間目標に対して順調な推移」と話す。
↑ドコモの加藤薫社長。 |
↑第1四半期の決算概況。 |
そのほかの指標では、純利益は同23.8%増の1688億円、設備投資は同554億円減の931億円、フリー・キャッシュ・フローは241億円のマイナスから895億円を積んで654億円となった。セグメント別では、本業の通信事業が営業収益同3.1%減の8786億円だったが、営業利益は同4.5%増の2124億円。コンテンツ配信などのスマートライフ事業は、営業収益が同17.5%増の1171億円、営業利益が同149.5%増の164億円となって利益を牽引。その他の事業は営業収益が同14.7%増の871億円、営業利益が2億円のマイナスから65億円のプラスと黒字化した。
↑主な財務指標。 |
↑セグメント別の指標。 |
通信サービス収入が減少し、月々サポートが利益を圧迫したが、スマートライフ事業などが収入増となり、さらに端末販売やネットワーク機器などの営業費用削減が功を奏し、結果として利益を拡大させた。
↑営業利益の内訳。 |
通信サービスは、前年同期比で約2倍となる94万件の契約、MNPも9万件の転出超過から3万件の超過に減少、解約率も0.59%と維持したことで、結果として収入増加に貢献。端末の総販売数は同12%増の577万台で、そのうちの新規販売数は同45%増の252万台と拡大。停滞が懸念されるスマートフォン販売数も同7%増の328万台を確保。タブレット端末も57%増の45万台で順調に拡大した。
↑純増数などの指標も改善。純増数にはMVNOの数も含まれているが、内訳は非公表。MNPは“ドコモからMVNOへの転出”も含まれているという。 |
↑端末販売では、2台目需要のタブレットが好調。コンシューマだけでなく法人需要も手堅く伸びた。 |
ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)では、月々サポートの影響を除いて5250円で、前年同期比50円の減少ながら、前期からは10円のプラスとなり、反転傾向。音声ARPUは同60円減の1670円だが、6月に開始した“ずっとくりこし”などが70円のマイナス要因となっており「1740円が実力」と加藤社長。これだと音声ARPUは同10円のプラスとなり、「下げ止まったという感触を得ている」(加藤社長)という。
↑ARPUは改善傾向。 |
パケットARPUは2920円で前期比で30円のプラス。下がり続けたパケットARPUは直近2期連続で2890円を維持しており、今回でプラスに反転した。さらに、スマートARPUが660円で着実に拡大を続けた。
今期から同社では、このARPUの計算式を変更。スマートARPUを除く代わりに、固定のドコモ光のARPUを参入し、通信事業全体を示す指標へと変更する。また、従来は収入を契約数で割っていたが、ひとりでスマホとタブレットという、2契約をするユーザーも増えており、同一人物であれば1人と計算する利用者数で割るようにした。
↑新たなARPUの計算式も導入。 |
↑新ARPUの考え方。 |
この新ARPUでは、音声ARPUが1830円となり、前期比30円のマイナスながら、ずっとくりこしなどのマイナス要因を除くと1900円となり、これもプラスに反転した。モバイルのパケットARPUと固定の“ドコモ光ARPU”を足したデータARPUは3230円で、前期比70円のプラスとなり、こちらも反転傾向となっている。
スマートライフ事業とその他の事業を合わせたスマートライフ領域は、営業利益が229億円となり、前年同期比約3.6倍と拡大。年間目標500億円に対して順調で、子会社の事業や各サービスが「総じて好調に推移した」と加藤社長。ただ、10月から開始するdポイント事業にともなう費用は下期に重点的に盛り込む計画のため、今後好調を維持するために契約数の増加を図り、「できるだけ500億円よりは上に行けるように頑張りたい」(同)。
↑スマートライフ領域も順調に拡大。 |
スマートライフ領域で中核のdマーケットでは、開始後1ヵ月で28万契約を獲得したdグルメを始め、継続した成長を続けており、第1四半期末で1235万件の契約に達した。ひとりあたりの利用料も1200円で、前年同期比約30%の増加。利益拡大につながった。
↑dマーケットは順調に拡大。 |
ドコモとパートナーの強みを生かしたパートナー戦略“+d”では、順次提携パートナーを拡大。現状では「すぐに利益に結びつくかというと難しい」(同)という認識で、実証実験や次の展開の布石という側面もあると加藤社長は話し、今後収益化につなげていきたい考えだ。
↑“+d”の提携パートナー。 |
設備投資額は大幅に減少しているが、下期に重点的に実施する計画で、進捗は計画どおりという。LTE基地局は10万6900局に達し、100Mbps以上の速度に対応した基地局は6万2800局、さらに高速な“PREMIUM 4G”対応基地局は3500局まで拡大した。LTE基地局の年間計画は13万局で、とくに100Mbps以上の基地局を拡大し「質が上がっていく」(同)という方向を強化する。
↑LTE基地局は順調に拡大、高速エリアもさらに拡大している。 |
コスト効率化では、620億円のマイナスを達成。年間目標の2100億円の削減に向けて順調に進捗している。
↑コスト効率化の進捗状況。 |
加藤社長は「2014年度は礎を築き、成長に向けて結果にこだわる」のが2015年度としており、第1四半期の結果は「第一歩は順調に進捗した」という認識だ。新料金プランによる音声ARPUの下落が下げ止まり、パケットパックでも上位のMパック以上の選択率が7割を超え、さらに1GBの追加容量の購入率も3割以上となってARPUの上昇に貢献した。
↑新料金プランの契約数が拡大し、上位プランへの契約数が増加するなど、ARPUの改善につながった。 |
工事の遅れなど、導入でつまずいたドコモ光も累計契約数は60万件を超え、年間計画の180万件に対して堅調に推移。ドコモ光契約者は携帯電話の契約率が高く、そこで上位プランを選択するなどプラスの効果も現れてきているという。
↑ドコモ光の利用者も増え、そこからモバイル事業への好影響も現れてきている。 |
全体的な指標も改善傾向にあり、加藤社長は繰り返し「お客さまにとって何がいちばんいいか」とコメントして、さらなるサービス強化や改善を続けていきたい考えで、通期の増収増益に向けてまずは順調なスタートを切ったと言えそうだ。
●関連サイト
ドコモ 株主・投資家向け情報ページ
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