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Windows情報局ななふぉ出張所

Windows Phoneで『ねこあつめ』を遊べる日は来るか

2015年05月05日 07時00分更新

 マイクロソフトの開発者向けイベント『Build 2015』((2015年4月27日~5月3日))でサプライズとなったのが、iOSやAndroidのアプリをWindows 10で動かせるようにする、という新機軸です。

 3月に上梓した拙著では、Windowsストアアプリの開発を促進するため、開発環境をMacで実現してはどうかと提案しました。その一部は、『Visual Studio Code』のMac版として実現したものの、さらにiOSやAndroidアプリの移植にまで踏み込んできたのが印象的です。

 これにより、アプリ開発者がWindowsプラットフォームに再び戻ってくる可能性があることは、すでに書きました。その一方で、これまでにない混乱をもたらす恐れもあります。


■AndroidアプリがWindows Phoneで動く仕組みとは

 Build 2015の基調講演では、Androidアプリをほぼそのままの形でWindows Phone上で動作させる、というデモが行なわれました。

 内部的には、Androidアプリからマイクロソフトが提供する“相互運用ライブラリー”を呼び出し、GoogleマップをBingマップに置き換えるなどの下準備をした上で、AndroidのAPKをWindowsストアのAPPX形式に変換。Windowsストアに登録できると説明しています。

Windows Phoneで『ねこあつめ』を遊べる日は来るか
2日目の基調講演においても、改めてAndroidアプリがWindows Phoneで動作する様子が示された。このためのSDKは“Project Astoria”(またはProject A)で限定的に配布されている。

 では、なぜWindows PhoneでAndroidアプリが動くのでしょうか。スマホ版Windows 10は“Androidサブシステム”を搭載するとしています。このサブシステムがAndroidアプリをホストしており、システムコールをWindowsのAPIに置き換えるなど、世話を焼いているようです。

Windows Phoneで『ねこあつめ』を遊べる日は来るか
スマホや小型タブレット版のWindows 10は“Androidサブシステム”を搭載する。これによりAndroidアプリの動作が可能になるという。

 ここで気になるのは、PC版のWindows 10についての言及がない点です。AndroidサブシステムはARMアーキテクチャーを前提にしているため、当初はスマホと小型タブレットに限られるものと考えられます。


■iOSアプリの移植にはVisual Studioが必要

 このように、AndroidアプリがほぼそのままWindows Phoneで動くのに対して、iOSアプリをWindows 10で動かすには“移植”が必要になります。

 しかし驚くべきは、すでに高度な開発環境が用意されているという点です。基調講演では、iOSアプリのソースコードをバッチファイルでVisual Studio用に変換。そのままビルド、デバッグ実行ができることを示しました。

 おそらくこれは、iOSの“サブシステム”を搭載することがライセンス的に難しかったためと推測されます。しかしVisual StudioにObjective-Cのコンパイラを追加し、そのままWindows 10のアプリを作り上げる機能を実現したところに、マイクロソフトの本気度を感じます。

Windows Phoneで『ねこあつめ』を遊べる日は来るか
Visual StudioでiOSアプリのObjective-Cコードをそのままビルド可能。さらに数行を追加すると、Windows 10のトースト通知も呼び出せる。

 iOSアプリからの移植のためのツールやドキュメントは、“Project Islandwood”として公開されており、参加する開発者を募集しています。


■『ねこあつめ』など人気ゲームの移植に期待

 Windows 10では、AndroidやiOSアプリの移植が容易になることで、ストアアプリのラインアップ改善が期待されます。たとえば『ねこあつめ』のような人気ゲームがWindowsストアに登場することも、夢ではないでしょう。

Windows Phoneで『ねこあつめ』を遊べる日は来るか
Windows 10では、iPhoneやAndroidと同じタイミングで『ねこあつめ』のような人気ゲームを遊べるようになるかもしれない。

 ただ、気になるのはアプリの移植が容易になることで、ゼロからWindowsアプリの開発に取り組む人は減るのではないか、という不安もあります。iOSやAndroidの開発スキルさえしっかり身に付けておけば、Windowsへの移植はツールがやってくれるのです。

 一方、アプリ品質の面ではどうでしょうか。高品質なアプリの開発者ほど、ツールを用いた安易な移植には慎重です。さまざまな画面サイズで動くなどユニバーサルアプリとしての特性を考慮し、時間をかけて品質を確保した上で、リリースしたいと考えるでしょう。

 しかし広告収入が主目的のアプリのように、移植さえできればそれほど品質は問わないアプリの開発者ならば、真っ先にツールに飛びつくはずです。

つまり、iOSやAndroidの優れたアプリがWindowsストアにやってくるよりも先に、低品質なアプリが勢いよく流入してくる可能性のほうが高いと、筆者は考えています。

 そういったデメリットに目をつぶってでも、アプリの数を増やすことを優先するのか。それとも登録前の審査の段階で歯止めをかけるのか。マイクロソフトがどのようにバランスを取っていくのか、注目したいところです。

■関連サイト
Build 2015
ねこあつめ

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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