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「Facebookにできない役割担いたい」Wantedly仲暁子代表がSyncをはじめる理由

2015年04月27日 09時00分更新

「たとえるなら、日本での『Facebook』は野球のバットを使ってゲートボールをしているようなもの。(ビジネス上では)もっと最適化する使い方があってもいい」

 そう語るのは、ウォンテッドリー仲暁子代表取締役CEO。ビジネスSNS『Wantedly』(ウォンテッドリー)を運営しており、2012年2月の公式リリースから現在まで、約8000社、月間60万人の利用者を集めている。

 スタートアップやITを中心とした優れた人材と企業のマッチングから始まった同社。現在はマッチングだけでなく、ビジネス上のリレーション作り、ブランディング構築などマッチングのためのツールとして拡大している。27日にリリースされた新機能 『Sync』(シンク)は、仲代表いわく同社としても「重要な機能 」。冒頭の発言は、Sync での狙いに関するもの。Facebook Japan初期メンバーも務めた同氏に、詳しいところを聞いた。

Sync
ウォンテッドリー 仲暁子代表取締役CEO 1984年生まれ。京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、Facebookを活用したビジネスSNS『Wantedly』を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。


■Wantedly内で“つながり管理”機能を追加

 Syncはブラウザベースでのビジネス連絡先管理ツール。利用には、Wantedlyへの会員登録が必要で、連携SNSと自動的につなぎこまれ、“つながり”のある人が可視化される。

 代表的な機能としては、「連絡先へのタグ付けやメモ書き込み」、「会社名や役職・タグ・メモ検索」、「いつでも最新状態のプロフィールと連絡先」などがある。リアルタイムメッセージやコラボレーション機能の充実化も計画されており、順次スマートフォンにも対応する予定だ。

 ここだけで見ればいたってシンプルなビジネスSNSだが、同ツールが目的とするのは、これまで難しかったというビジネスネットワークの可視化実現、“つながり方”が一目で分かるネットワークの全体統括だという。既存の名刺やメールベースでの管理の方向からアプローチをしている同様のツールと異なり、Syncの場合は既存のSNSをスタート地点とした”つながりを整理する”部分に立脚点がある。

 仲代表によれば、『Facebook』をはじめ国内で利用されているいわゆる既存の大手SNSは、そもそもビジネス上での連絡先を整理・活用する方向を向いてはいないという。家族や仲間といったコミュニティでの利用が主となっているのだ。

「たとえばFacebookでいえば、本来は友達とより仲良くなるための仕組みであって、”ビジネスのために連絡先を管理する”という面をもっていない。もともと学内交流のためのシステムから始まったもの。海外では『LinkedIn』がビジネスでの役割を果たしているが、日本にはまだなじんでいない。その代わりにビジネスでのFacebook利用が多いが、そもそもの使用目的とは違っている。ビジネス上で一度やり取りしただけで友達申請が来るようなケースは米国人からすると驚き。名刺交換的な役割を持ったサービスではない」(仲代表)

 心理学者のロビン・ダンバーが提唱した、人間のコミュニティでの安定した関係を維持できる個体数の認知的上限数によれば、認知の限界は平均150人だと言われている。Facebookで1000人の友達がいても、すべての人とやり取りできるわけでもないし、表示される記事フィードもアクションに対するアルゴリズムで調整されており、偶発的な出会いも含めて、よりコミュニティを活性化させる部分に立脚点がある。

 そのため米国ではLinkedInのようなビジネスSNSが発達したが、日本の場合ビジネスツールとしてなじんでおらず、その領域にはFacebookが特殊な使われ方で入っているというわけだ。

 Syncで連絡先に「イベント名」や「つながり分類」などのタグ付けやメモをする機能は、人名や会社名以外のプロフィール情報からビジネス上のきっかけを探し出す役割を担っている。また、すでにスタートアップをはじめ、IT・ウェブ業界にも浸透しており、Wantedly上でつながれば、プロフィールの情報からも検索可能となり、過去の仕事のつながりが活用しやすくなるというわけだ。

「Facebookで1000人のつながりがあっても、顔と名前の一致がない人も多いはず。だけど、本当はその中にこちらから連絡すべき、ビジネスでつながれる人がいるかもしれない。Syncは10000人でもつながれるような設計を目指している。より会社の外の人をチーム化して関係をためられる。年間で1000人、3 年後には1000 万人のプラットホームを目指す。入ってみるだけでもいいので、ビジネスでぜひ使ってほしい」

Sync


■SyncのライバルはFacebookメッセンジャーか

 そもそもWantedlyは、Facebookの人間関係を元にしたIT・スタートアップ業界のコア層にリーチできる強みを持ったサービスとしてスタート。2012年1月に開始した(当時のサービス名は『ウォンテッド』)ときには、人材募集プロジェクトへの応募資格として、プロジェクト実施企業にFacebook上での友達、もしくは友達の友達が所属している必要があった。

 だが今ではTwitter、Google+、mixi、Hatena、GitHub、LinkedInなど外部SNSとのアカウント連携のほか、メールアドレスからの登録も可能になっている。月間利用者60万人のうち、Facebookを使わずにメール登録するユーザーも2~3割と増加傾向にある。

「現在、スタートアップ以外の活用はすでに4000社あり、大企業から中小、NPO、さらに行政などにも使ってもらっている。浸透している理由は、お金よりもビジョンという部分。高度成長期とは違った価値観の人が増えており、各個人の“仕事のものさし”が多様になっている。国が成熟して、お金という部分以上にやりがいが重要になっている人が国内労働人口の10%はいるのではないか。このような層は、年収が200万上がっても労働環境に魅力を感じないような大手に行くようになっていない」

 Wantedlyはサービスとしては4期目。Facebook連携から始まったサービスだが、さまざまな段階を経てきたなかで、仲代表はワークシフトの流れを見ている。特に、新卒や若手社会人とかかわるなかで働き方が変わってきた実感があるという。

「2020年には、会社とは別に自分だけのチームをつくってスモールビジネスをやる人が増えるのではないか。たとえば私が会社のリソースではなく、個人でアプリを作りたいとき、知り合いにフリーランスがいれば、そのチームで活用してプロジェクトが回せる。個人のつながりから生まれた関係をベースに、外部資産活用できるかが重要となるはず。それができるベースとなるつながりを提供したい」

 Syncのコンセプトは「シゴトでココロオドルひとをふやす」。既存のSNSよりもデイリーで使ってもらうイメージで、アプリ対応やUIの改善は随時行っていく予定だという。

 だが国内でのビジネスのやり取りにおいてFacebookが本格的に動くことはないのか。そうなった場合、Syncのライバルは機能拡大を志向するFacebookメッセンジャーになりうるのではないか。仲代表は、「自分ももともといたので……」と前置きしたうえで語ってくれた。

「Facebookでの”つながり”とは別だと考えている。(Facebookの)圧倒的強みでもあり弱みであるところは、友達との交流のために設計されているところ。ビジネス寄りの機能は、開発でも優先順位は上がり辛いし、もともとの設計思想を損ってしまう。あくまで友達同士の使い方がメイン。そこを国内では足元を住み分けられるようにしたい。日本には名刺の次となる決定的なウェブサービスがまだないが、よりビジネスではまるようなサービスができれば、名刺という概念そのものが古くなるはず。ビジネスユースなので、SNSで疲れてしまうこともない。あくまで思想が違うところを強調したい」 

 日本国内6000万人の労働人口のうち、転職をしているのは6%という状況。「サービスとしてはまだまだ社会的にインパクトが少ない。より多くの人に新しい価値を持たせたい。ツールを通じておもしろくなればいい」と仲代表は語った。

 今後、Wantedly内の“マッチング機能”と“つながり管理機能Sync”の両輪が同社の目指す2つの大きな流れになるという。

「つながりの整理がSync。メモやタグなどを追加してUI改善していくビジネスSNSの流れ。もう1つが社内で”Visit”と呼んでいるもので、興味のある会社へ遊びに行くような部分。Wantedlyはこれまでその機能を中心に発展してきおり、同時に強化し続けている。転職サイトというよりは遊びにいってもらう、いろんな会社を知って巻き込まれていくような流れをもっと加速したい」

Sync
Wantedly

 キックオフ時から現在まで同様のサービスが多数あったが、現在では国内唯一のサービスになっている同社。生き残った違いは何かと尋ねると、「なぜやっているのか」という部分にあると仲代表。

 Wantedlyで企業は自社PRが可能だが、福利厚生や給料といった部分は規約で書けないようになっている。

「現在もパトロール部隊がチェックをしており、規約に反したものは露出のランクを下げている。なんでこんなことをやっているのかというと、”コンテンツメディア”として、システム上で雰囲気をつくっているため。企業のみなさんにコンテンツをつくってもらっている。”新しい働き方”と看板を掲げていても、中身を見ると、回しているシステムは結局ビジネスのためというところが多い。従来の転職サイトと結局変わらないのであれば、人はついてこない。Wantedlyは当初からブランディングに強くフォーカスした部分が大きい」

■関連サイト
Sync
Wantedly

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