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「パズドラには対抗しない」わずか1ヵ月で400万の大ヒットアプリ『Q』はゲームの原点を目指した

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 1月9日のリリースから1ヵ月で合計約400万ダウンロード。画面は基本モノクロ、大きなプロモーションもせず、口コミ中心に大ヒットしているのがリイカのパズルアプリ『Q』だ。

 画面をなぞって線を描くと、アプリ内に仮想の重さを持ったモノが現れる。現れたモノを使い「コップからボールを出せ」などの問題に答えていくシンプルな図形パズルだ。

 問題は異様に難しく、ヒントはない。YouTuberマックスむらいも挑戦し、「えーっ」「やべえ、頭かってえ」「あれ……あ、あれ?」と苦悩する動画は36万回以上再生された。

 プログラムのテストで作られたようなそっけない見た目のゲームが、なぜ空前の大ヒットにつながったのか?

企画書の前にゲームが出来た

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 Qの製作を担当したのはリイカの栗田祐介プロデューサー。サポート役だった熊谷亮徳プロデューサーは「狙ってやったわけじゃない」と本音を話す。

 リイカの得意分野は「バカゲー」と呼ばれる分野。最初のヒット作『毎日の耳かき』を始め、『おやじ観察キット』などちょっとした息抜きになるカジュアルゲームの開発を得意としていた。

 プロデューサーは2人ともi-modeやezwebなどケータイゲーム開発会社ジー・モード出身。カジュアルゲームにノウハウがあり、当時の経験を活かしてスマホゲームを開発してきた。

 だが、Qが生まれたきっかけはそれまでのノウハウとは無関係、プログラマーの自由時間だったと熊谷プロデューサー。当時、仕事の隙間にプログラマーが『Unity』という開発環境で遊んでいたのがきっかけだったという。

 描いたモノが物理法則に従う。テコの原理なども使える。最初は「シーソーだ~!」などと子供のように遊んでいたが、あるときビーカーを書いた社員が「はい、中にある点をどう出したらいいでしょう」と言いはじめてから、社内の雰囲気が変わった。

 ビーカーを「攻略」したあと、今度は左の壁に当てさせよう、もっとビーカーを高くしてメスシリンダーにしようと、社内の人間が次々に集まってきた。栗田プロデューサーは思った。こんな面白いゲームがあるか。企画書なんて作らず、進めてしまおう。

 「こんな進行の仕方は初めて。ゲームは企画書ありきという会社も多いが、Qに限っては実際に触ってこそという内容だった」(栗田プロデューサー)

 ちょっとした偶然がきっかけで、『パズル&ドラゴンズ』(パズドラ)と同じパズルゲームの種が生まれた。だが、Qはパズドラとは正反対の道を選んで成功することになる。

パズドラの逆を進んで大成功

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 パズドラを抱えるのは、直近の売上高にして1730億円程度の巨大資本ガンホー。王者にまともにぶつかっても勝てるわけがない。むしろキャラクターやソーシャル要素の強いゲームの逆を行き、パズルの面白さ一本で勝負しよう。

 そう考えたため、最初から「パズドラに対抗しようとは思っていなかった」と栗田プロデューサーは話す。

 課金要素もなければ、ゲーム内で友だちと競争するような要素もない。かわいい美少女もいなければ、かっこいいドラゴンも出てこないゲームを目指した。きれいな絵を入れたところで、ゲーム全体が把握しづらくなったら無意味だと考えた。

 難度もあえて下げなかった。徹底的に攻略を難しくして「パズルゲーム界の『デモンズソウル』(極めて難しいことで知られるアクションRPG)を目指そうとした」(栗田プロデューサー)。

 結果としてQは利用者を熱中させることに成功した。利用者からは「ゲームをやっていないときも、つい攻略法を考えてしまう」という声をもらったそうだ。

 引き算の発想で目指したのはシルエットの美しさ、潔さ。手本にしていたゲームは1972年にアタリが出した『ポン』(PONG)。いわばコンピューターゲームの原点だ。栗田プロデューサー自身、生粋のゲーム好きとして憧れの存在だった。

 ゲームメディアの編集者からはQを「初代PlayStation時代にソニー・コンピュータエンタテインメントが出していたゲームに似ている」と評価されることも多いと言い、「クリエイター冥利に尽きる」と栗田プロデューサーは感慨にふける。

 ゲーム性そのもので大ヒットしたQだが、続編はまだ考えていない。代わりにコラボレーションを考えている。だが、パズドラのように人気マンガのキャラクターを登場させるタイプのコラボとはまったく違う方向になりそうだ。

シンプルゆえに海外展開もしやすい

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 リイカでは現在、ゲームデザイナーや映像作家、作曲家などにゲームの面を考えてもらう方向でのコラボレーションを考えているという。ゲームと画面のシンプルさをそのまま活かせるためだ。

 将来を考えても、シンプルでバリアフリーなゲーム性は最大の武器になる。利用者層は50~60代の『親世代』まで広がっていると言う。キャラクターやストーリーなど文化的なイメージがほぼないため、海外展開にも意欲的だ。

 最近のスマホゲームは、ソーシャル要素が強い大手資本のゲームがランキング上位を占める傾向にある。そんな今だからこそ、ゲームと1対1で向き合ってストイックに勝負をさせる、そんな鋭角の会社が注目を集めているのかもしれない。

 「『変なことをする』という柱はある。ちゃんとしたものは作るが、『なんか変なことをやってんな』と思ってもらえれば本望」(栗田プロデューサー)

画像:リイカ

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