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物体コピーを実現する3Dプリント複合機『ダヴィンチ 1.0 AiO』最速レビュー

2014年10月29日 16時30分更新

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 11月中旬発売予定の熱溶解積層方式3Dプリンター『ダヴィンチ 1.0 AiO』は、最大ワークエリア20×20×19センチのシングルヘッドによる3D印刷に加えて、200万画素カメラとレーザーダイオードモジュールによる精度0.2ミリ(スキャンサイズ15×15センチ)の3Dスキャン機能を搭載したのが最大の特徴。

 “3Dプリント複合機”とは、スキャナーとプリンターがセットになった、いわゆるプリンター複合機の3D版。物体の外形をスキャンして3Dデータを生成し、それを3Dプリントする。物体の外形だけをレーザーとカメラで読み取るため、物体の内部構造は複製できず、元の物体と同じ材質でコピーされるわけではない。

 とはいえ、同じ形の立体を家庭で複製できるという点では画期的な製品だ。しかも、価格面でも他の同等性能の3Dプリンターが10万~30万円する現在、3Dスキャン機能も付いて11万9800円は破格と言っていいだろう。

 XYZプリンティングは2014年3月に、熱溶解積層方式の3Dプリンター『ダヴィンチ 1.0』を投入して以来、7月には2色の材料が同時に使えるデュアルヘッドモデル『ダヴィンチ 2.0 Duo』を限定発売、そして今回の『ダヴィンチ 1.0 AiO』と、今年だけでも3Dプリンター製品を3機種投入しており、コストパフォーマンスのよさは業界でも随一だ。

■『ダヴィンチ 1.0 AiO』はどんな製品?

 では詳しく本体を見ていこう。製品の外形やサイズは従来の 『ダヴィンチ 1.0』や『ダヴィンチ 2.0 Duo』と同じく、立方体に近いボックス型で小型の冷蔵庫に近い大きさだ。

 ただし、従来のシリーズと異なるのは側面や前面のクリアーパーツがブルーになり、操作パネルの左横にレリーフが付けられるようになったことだ。レーザーとカメラを併用した3Dスキャナーは周囲の光源によってスキャン結果が左右されるため、ブルーのクリアーパーツはスキャン時に余計な外光を入れないためのものだ。レリーフ部分は今回はオマケとも言える面白い部分だ。詳しくは後述する。

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 内部は、既存の『ダヴィンチ 1.0』に追加するような形で3Dスキャナーが搭載されている。上部には3Dプリント時に材料を射出する“エクストルーダー”と材料を入れる“ストッカー”がある。

 細かい部分は改良されているが、基本的な構造は従来製品と同じ。3Dプリント時に加熱しながら材料を積み上げるベッド部分も同様。最大の違いは、ベッドの下に円形のターンテーブルが追加され、右下と左上にスキャンユニットが付いたことだ。

 このため、3Dスキャン時はベッド部分を引き上げ、ターンテーブルに物体を載せて回転しながらスキャンし、3Dプリント時は物体を取りだしてエクストルーダーから材料を射出しながらベッドが下がっていくという流れになる。

 3Dスキャンと3DプリントはPCから制御するため、イマドキのプリンター複合機のように本体だけでスキャンからプリントまで、スタンドアロンで行なえるというわけではない。とはいえ、従来の3Dスキャナーと比べると操作性と手軽さは大きく向上している。

 従来の3Dスキャナーは、周囲を白い背景で覆ったり、光源を用意したりと環境整備が大変なものや、スキャンユニットを手で持って物体の周囲にまんべんなく当てたりと、ひとつの物体をスキャンするだけでもかなり手間の掛かるものだった。

『ダヴィンチ 1.0 AiO』では、ターンテーブルに物体を載せてPCから操作するだけで自動的にスキャンができ、かつ筐体内で外光を遮断して最適な環境でスキャンするため環境整備も必要ない。強いて言えば、部屋の照明を消した方がスキャン精度がより向上できるぐらいだ。

 もちろん、正確にスキャンできる物体に制限はあるが、誰でも扱える操作性の良さと手軽さは本製品の強みと言える。なお、スキャン可能な物体のサイズは、高さ150ミリ、直径150ミリの円周に収まる重量3キロ以下の物体となる。

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↑スキャナー部分は200万画素のカメラとレーザーダイオード、照明用のライトで構成されており、カメラの画像とレーザーの反射を併用することで3Dのポリゴンデータを生成する。ユニットは右下と左上にあり、それぞれ1回転ずつスキャンすることで物体の外形を得られる。

 3Dスキャンと3Dプリントは、PCでは別のソフトでそれぞれ行なう方式になっており、3Dスキャンは『XYZscan』、3Dプリントは従来の製品に付属している『XYZware』だ。3Dスキャンは前述したとおり、驚くほどカンタンにできる。

 まずは、設置時にキャリブレーションを行なう。これは付属のキャリブレーション用パーツをスキャンテーブルに置き、XYZscanからキャリブレーションの開始を操作すればボタンひとつで行なってくれる。キャリブレーションは本体を移動させたときだけに行なえばよいとのこと。設置したままならば最初の1回以外は行なう必要はない。

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 次にスキャンしたい物体を置いて、XYZscanのスキャンボタンを押せばスキャンが自動的に開始される。スキャン中は物体にレーザーを当てながらスキャンテーブルが2回転する。スキャンの所要時間は物体の形に限らず288~292秒と約5分前後でスキャンできた。同じような方式の3Dスキャナー『MakerBot Digitizer』では、24分かかったのと比べると所用時間は約1/5とかなり高速だ。スキャンが終わると結果がXYZscanに表示される。

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↑“なめらか”をかける前。ノイズのようなザラザラが帽子のつば部分にある。

 高さ130ミリほどの石膏のような材質のダヴィンチ像をスキャンした。細部にノイズのような部分や台座の部分がややギザギザになっているが、ほぼ正確にスキャンできている。なお、印刷ボタンを押せば、このまま続けて3Dプリントを行なうことも可能だ。この状態で3Dプリンターの共通データ形式であるSTLファイルに保存することもできるため、スキャナー単体として使用可能だ。

 さらに、表面の簡易加工も行なえる。XYZscanには、“なめらか”と“画質”というツールがある。また、スキャン時に3Dデータに穴が空いてしまった場合でも自動的に修復してくれる。従来はSTLの修復ソフトなどが別途必要だったが、スキャンだけではなくこのような表面の調整ができる点も他の製品と比べて優れている点だ。

“なめらか”を使えば、表面はややディテールが眠くなるが、ノイズのような部分を消して表面を滑らかにできる。パラメーターは5段階あるため、ノイズの状態に合わせて調整するといい。

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↑“なめらか”を3にすると、ノイズがほぼ消えて滑らかな表面になった。
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↑“画質”を低にした場合。ポリゴンの角が目立つ。

 “画質”はポリゴンの細かさ、写真で言うなら解像度のようなものだ。STLのファイルサイズを小さくしたいときに使用する。パラメーターは高、中、低とあるが、作例のダヴィンチ像は高にしても容量は35MBしかないため、ふだんは“高”で使っても問題なさそうだ。なお、スキャンしたデータは独自のdas形式で保存しておけば、後からでも“なめらか”と“画質”を変更できる。STLで保存した場合は後からの変更はできない。

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↑“画質”を高にした場合。表面が滑らかになった。

 実際に“なめらか”を3に設定し、積層ピッチ0.1ミリで3Dプリントしてみた。台座の部分が削れてしまい、頭の天頂部に乱れがあるのがキズだが、他の部分は表面のディテールがやや眠くなったぐらいで正確に複製できている。まさに物体コピー機と言える製品が手軽に使える時代がやってきたのだ。

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■3Dスキャンはスキャン可能な物体に制限がある

 スキャンを色々と試してみた。ただし、まだ黎明期の製品ということもあり、どんな物でも正確にスキャンできるというわけではない。むしろ、かなりスキャンできる物体は限定される。

 手近なものをいくつかやってみたが、正確にスキャンできないもののほうが多かった。その特性は以下のとおり。これは本製品に限らずレーザーとカメラを併用する方式では同じような特性をもつ。なお、光沢のある物に関してはゴムスプレーなど表面の光沢を消すものを使えばスキャンできるとのこと。

【スキャンしやすいもの】
・白など色の明るいもの
・突起部が低く一体感のあるもの。

【正確にスキャンできないもの】
・透明な材質や表面に光沢があり反射のあるもの。
・黒など色が暗いもの。
・空洞や開口部があるもの。
・複雑な突起がありレーザーが届かないもの。
・動くもの。

 いくつか手近なものをスキャンしてみた。結果として現状では先のダヴィンチ像のような胸像のようなものしかスキャンできない。現状では、紙粘土など自分で形を作ったものをスキャンして複製するなどの用途が考えられるが、汎用性という点ではまだ厳しい。

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↑【ポストの貯金箱】判定:ほぼ成功
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↑外形はほぼスキャンできたが、開口部は埋まってしまった。
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↑【コップ】判定:失敗
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↑光沢が原因か上部が乱れ、取手部分が形にならず、開口部が埋まってしまった。
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↑【HOゲージの電気機関車】判定:失敗
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↑細かい突起は無理でもボディだけでもと思ったが、側面は何となくスキャンされているがほかの部分は形にならず。なお、Nゲージの車輌も試したが結果は同様。
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↑【スマートフォン】判定:失敗
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↑黒く光沢があるためかまったく形にならず。

■精度が大きく向上した3Dプリント性能

 『ダヴィンチ 1.0 AiO』は『ダヴィンチ 1.0』のスキャナー搭載版という位置付けだが、3Dプリント性能は『ダヴィンチ 1.0』に比べて大きく向上している。

 初期の『ダヴィンチ 1.0』で見られた、形の崩れや粒状のゴミがほぼ無くなり、曲線の多い難しい形状でもスムーズな仕上がりになっている。特に最小積層ピッチの0.1ミリで造型した場合は、精度が高いと定評がある光造型で造型したものに近い仕上がりになった。

 スキャナーばかりが目立つ製品だが、3Dプリンターとしても精度が高く、11万9800円という価格は3Dプリンターだけ見てもコストパフォーマンスに優れている。なお、『ダヴィンチ 1.0』では材料がABSのみだったが、『ダヴィンチ 1.0 AiO』ではPLAも対応になった。

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↑『Shade 3D』のサイトで配布されているデータを積層ピッチ0.4ミリで造型したもの。右が初期の『ダヴィンチ 1.0』、左が『ダヴィンチ 1.0 AiO』。唇や鼻の部分にできていた丸い部分がなくなり、本来のオブジェクトの形に近くなった。なお、造型時間は3時間12分とほぼ変わらず。
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↑積層ピッチ0.1ミリで造型したもの。右が初期の『ダヴィンチ 1.0』、左が『ダヴィンチ 1.0 AiO』。0.1ミリピッチでは腕や髪にできていた段差や粒状のゴミが消え、精度が高い滑らかな仕上がりとなった。造型時間は12時間1分。こちらも新旧でほぼ同じ。

■オマケも楽しい

 前面には、実は3Dプリントしたレリーフを入れることができる。背面が発光するため、レリーフが写真のように浮かび上がる。今後、写真からレリーフをつくるソフトをダウンロード提供するとしており、オリジナルの1台をつくれる。企業のロゴや学校で管理番号などを入れたり、好きなキャラクターの絵を入れて“痛3Dプリンター”にするなど、さまざまな使い方ができそうだ。

 最近では、コストカット優先でこうした遊びのある製品も少なくなったのが寂しいところだが、『ダヴィンチ 1.0 AiO』は久々に登場した“遊べる”製品だ。

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■今後はさらに高機能な製品が登場予定

 『ダヴィンチ 1.0 AiO』は3Dスキャナーとしての精度や汎用性はまだ低いが、手軽で高速にスキャンできそのままプリントできるという“複合機”としての完成度は高い。3Dプリンターの精度も向上しており、このクラスの3Dプリンターとしての完成度はトップレベルだ。

 11万9800円という価格ならば3Dプリンターを購入するつもりで“試しにスキャン機能を付けてみる”という心持ちで購入しても後悔はしない製品といえる。

 XYZプリンティングからは、すでに他の製品の登場予定もリリースされている。明確な時期や価格は未定ながら、『ダヴィンチ 1.0 AiO』の上位モデルで2色造型、WiFi、スマホ連携、モニタリングカメラ搭載と思われる『da Vinci2.1 AiO』や光造型方式『Nobel 1.0(ノーベル1.0)』など、さらにラインアップが強化される予定。今後も同社の動向には要注目だ。

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↑光造型方式『Nobel 1.0(ノーベル1.0)』

おもなスペック
・印刷方式:熱溶解積層方式
・最大ワークエリア:20×20×19cm
・解像度:100~400ミクロン
・プリントヘッド数:シングルヘッド
・プリントノズル直径:0.4mm
・サイズ:468(W)×558(D)×510(H)mm
・サポートファイル:.das、.stl、XYZ Format

スキャナー仕様
・スキャン部:200万画素カメラ+レーザーダイオードモジュール
・スキャンサイズ(直径×高さ):15×15cm
・スキャン精度:0.2mm(200μm)

ダヴィンチ 1.0 AiO
・XYZプリンティングジャパン
・11月中旬発売予定
・価格 11万9800円

●関連サイト
XYZプリンティングジャパン

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