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電子書籍版山崎浩一『今週のデジゴト』試し読み第2回「科学と信仰のあいだ」

2014年08月22日 08時00分更新

 

 山崎浩一さんによる週刊アスキーで連載中のコラム『今週のデジゴト』が電子書籍になりました。タイトルは『山崎浩一のデジゴト画報―3Dプリンターの幻想、音楽の未来、リベンジポルノまで』。アマゾンやブックウォーカー、楽天ブックス、iBooks、Googleplay、Kinoppyなどの電子書店さんでお買い求めいただけます。価格は各書店さんごとに異なるのですが、だいたい300円前後となっているものの微妙に違ったりしますので、すいません、詳細な価格については、各書店さんのサイトでご確認ください。

 

今週のデジゴト試し読み

 

 表紙にも「文と絵 山崎浩一」と入っておりますが、「デジゴト画報」というだけあって、各回のイラストも山崎さん自身によるものなんです。文章は当然のこととして、イラストのほうも見逃さずにお楽しみください。


 今回も電子書籍版に収録しているコラムの中から、山崎さんと担当のおすすめをお届けします。お読みいただいてご興味が出てきた方は、ぜひ電子版の購入をご検討ください。よろしくお願いします!

 


科学と信仰のあいだ

電子版「今週のデジゴト」試し読み

 

米国人の科学知識に関する驚きの調査結果

 米国人の大人の約4人に1人が「地球の公転」を正しく知らないという調査結果が、17日までシカゴで開かれている米科学振興協会の大会で報告された。▼(中略)全米科学財団が2012年に約2200人を対象に実施した科学技術に対する意識調査の一環で、九つの科学知識について尋ねた。「地球の中心部は非常に高温(正)」などでは正答率が8割を超えたが、「地球が太陽の周りを回っているか、太陽が地球の周りを回っているか」では74%。さらに「現在の人類は原始的動物種から進化した(正)」では正答率が48%にとどまり、進化論に対する根強い不信がうかがえる。▼日本で11年に実施された同様の調査では、進化論に対する正答率は76%。だが、「男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子(正)」や「電子は原子より小さい(正)」では米国人の正答率が20ポイント以上も高く、必ずしも「日本人の方が科学知識に富んでいる」とは言えないようだ。(2014年2月17日付『朝日新聞デジタル』)
 
「そりゃ宇宙はアメリカ中心に回ってるだろうさ」、「アジアって“国”がどこにあるかも知らんだろ」、「神様がマッチョなハリウッド俳優の肋骨から女を創ったらしいぜ」、「食べていい動物と食べちゃいかん動物もみんな神様が決めてくださったそうだ」、「地球が平らだと証明するためにスペースシャトルを飛ばしたって本当?」……といった反米ジョークをぐっと堪えて、フェアな視点からこのニュースを考えてみたい。
 まず、この調査レポートの公式サイトにアクセスし、全設問を調べてみる。
【1】地球の中心はとても熱い。【2】大陸は何百万年も動き続け今後も動き続ける。【3】太陽が地球の周りを回っているのか、それとも地球が太陽の周りを回っているのか。【4】放射能はすべて人間によって作られた。【5】電子は原子より小さい。【6】レーザーは音波の集中によって発生する。【7】宇宙は大爆発から始まった。【8】父親の遺伝子によって赤ん坊の性別が決定する。【9】抗生物質はバクテリアにもウィルスにも効果がある。【10】現在の人類はより原始的な生物種から進化した。(ちなみに、正解は上記のイラストを参照)
 なるべく正確に訳してみた。【3】を除いて、どれも○か×かで答える正誤問題。大衆の一般的な科学知識を問う設問として、はたしてどれほどの適正さを備えているかは私程度の者には判断できない。普遍的な科学常識といえども、地域や文化によって偏りが生じるのは無理もないことだし。

 

地域や文化による偏りは無理もないこと

 が、だからこそ設問者たちも【3】と【10】を意図的に潜り込ませたのだろうと思われる。【10】をあえて最後に持ってきている点にもそんな意図が感じられる。つまり、特にアメリカ南部のバイブルベルトに根強いキリスト教原理派が、どれくらいアメリカの科学教育に影を落としているのかを、この設問によって探ろうとしたわけだ。その意味では【3】と【10】は、アメリカ国内に限れば、科学よりもむしろ信仰に属する設問なのかもしれない。
 とはいえ他国の成績と比較したとき、アメリカだけが突出した異常値を示しているとは断定できない気もする。たとえば【3】のEU(欧州連合)の正答率は66%。つまり記事にあるアメリカの正解率よりもさらに10ポイント近く低い。
 また、アメリカの正答率の低さが際立つ【10】にしても、よく見ればロシアはさらに4ポイント低い44%だったりする。う~む、つい先日までの唯物史観の国にも今やロシア正教のご威光が復活しているのか。もっとも今も共産党が支配する中国だって意外に低い66%だから、そういう問題でもないのか。
 冒頭の記事でもちょこっとクギを刺しているように、この調査結果だけで単純かつ断定的な結論や世界観を導き出すのはまだ無理がありそうだ。ま、そう言ってたらいつまでも結論なんて出ないんだが、そういう側面が科学にもあるでしょ。
 いずれにしても、こういう知識はそれを正しく活用すべき仕事や地位にいる人々が備えていればよいのだし、科学が信仰へとなんの矛盾もなく変換されうることもオウム真理教の例でも明らかだし、科学へのイデオロギー的信仰よりも常識外の疑念こそが科学の発展に寄与してきた歴史もあるわけだし、ときには地動説よりも天動説的な視点のほうが役立つケースだってありうるわけだし……。
とまあ、ここらへんが私の科学知識の限界。

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