地方のベンチャー企業が集まる“全国スタートアップデイ in 関西”が2014年7月12日に大阪で開催された。トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートが主催する、全国7カ所を巡るスタートアップイベントだ。
第1回目の舞台は商売の街“大阪”。全10社のスタートアップが集まり、ベンチャーキャピタルや行政、大企業の担当者を相手に新サービスを熱いプレゼンでアピールした。ここでグランプリに選ばれれば、2015年3月に東京で開催されるファイナル全国大会の出場権を得られる。
審査はベンチャーキャピタルなどの投資会社などが審査員となり、アイデア&技術、実現可能性、成長可能性、ピッチそのものの4項目をポイントで審査し、合計点を競い合う。
グランプリ
『アロマシューター』
●アロマジョイン
グランプリに輝いた“アロマシューター”は、香りを発する噴射装置型のガジェットだ。わずか0.1秒と瞬間的に周りの空気を入れ替えられる。映像と香りを連携する“嗅覚ディスプレー”を実現する、アプリで映像と香りをコントロールできるソフトウェアも用意。USB接続でPCとスマホに接続して利用する。
気体噴射方式を採用する。多くのサービスで使われているミスト型と違い、香りが残りにくいことが特徴だ。6種類の香りの固形型カートリッジを搭載でき、その組み合わせで香りを生成する。液体ではないため、装置を逆さまで設置できる。最長で80センチ噴射でき、上に設置すれば1メートルの範囲はカバーできる。
デジタルサイネージでの利用も想定。すでに店舗で芳香剤などの商品のプロモーション映像に合わせて、その香りを放つ実証実験を予定している収益化も考えられたプロダクトだ。1台の価格は現在9万6600円と高額だが、量産化の際は1万円を切る価格を目指している。
第2位トーマツ賞
『症例議論プラットフォーム e-casebook.com』
●ハート・オーガナイゼーション
イーケースブックは、医師どうしが専門性の高い分野の症例議論を行なえるコミュニケーションサイト。最新医療の情報を収集し、医療の学会、研究会をオンラインに持ち込むサービスで、オペの動画を表示し、掲示板のように議論できる。一部分の画像を抜き出して、説明など書き込みをして共有も可能。
将来的には、ソーシャル機能も追加したいという。マネタイズは医療機器メーカーが、自社の製品の使い方などを紹介する機能を提供して、広告費を得るよう想定している。
AWSベストピッチ賞&第3位Samurai賞
『みちグル』
●Xs
全国各地にある“道の駅”の口コミ情報を集め、地方でしか買えない物産のECを行なうプラットフォーム。道の駅は現在、全国で1030カ所もあり、年間来場者数は2013年に5億人、売り上げは3500億円にも上るという。同社はその全国1030カ所すべてをまわり営業したというから驚きだ。
口コミサイトだけでなく、道の駅のご当地グルメを毎月送る“みちグル定期便”というECサービスも行なう。現在46駅と契約、ネット上でのやりとりなど面倒な部分はすべて同社が担当し、配送の部分だけ道の駅にやってもらっている。また、道の駅に“EV急速充電器”の設置支援も行っている。
第3位Samurai賞
『スポとも』
●だんきち
アプリはスポーツ動画の共有サービス。その有料サービスとして、元プロスポーツ選手によるマンツーマンのスポーツレッスンを受けられる。現在リアルのスポーツレッスンの問題点として、地理的制約で満足な指導が受けられない、また指導の場が少ないという地域格差がある。その解消と、元プロスポーツ選手の現役引退後の収入面のサポートを目的とする。まずは野球のからスタートし、元読売ジャイアンツの石毛博史氏など、元プロ野球選手がコーチを担当する。
提供するのは動画や画像での解説。レッスンはユーザーがピッチングフォームなど動画を送って、コーチがお手本を返信するなど、コミュニケーションを取りながら行なえる。想定ユーザーは小中学生の指導のほか、草野球なども視野に入れている。
このほか惜しくも賞は逃してしまったが、今回のピッチに登場したサービスを紹介。
『あきっぱ!』
●ギャラクシーエンージェンシー
週アスPLUSでも以前紹介した、使われていない月極駐車場を、コインパーキングのように利用できるアプリ。2014年4月25日にサービスを開始、東京都渋谷区のあるオーナーは、駐車場1日2000円の価格で1ヵ月で23日の予約。合計4万1400円の売り上げを達成。本来なら空いているため何もないところから、収益を発生させた。
もともと営業の会社という同社の強みを生かして、定型開拓を行なう。現在も契約する駐車場の数は増加しており、1日1000万円の売り上げを目指す。将来的にはiBeaconを利用し、車が止まっているかどうか判断する仕組みを取り入れたいと説明する。
『Guider』
●ニューワールド
ドラマなどテレビで芸能人が着ている服を売っている販売サイトへ案内するECサイト。芸能人の衣装だけではなく、アニメとコスプレ衣装のほか、海外のファッションショーとも連携。日本のファッションや文化を好む台湾やタイなどでサービスを広げ、海外を見据えた展開をする。審査員からは早めにスマートテレビとの連携を抑えてはとアドバイスを受けていた。
『MAKE5』
●REAL SAMURAI
今注目を集めているアドテック関連のサービス。日本でネット上にある教育コンテンツはフラッシュが主体。フラッシュでつくられたサービスをMAKE5ではリアルタイムにHTML5に変換できる。ほかの分野にも応用できそうなサービスだが、コンテンツ配信や流通も狙い教育分野に特化する。同社によると、すでにネイティブ対応しているサービスが出始めているので、変換ツールは3~4年ほどの需要と思っており、HTML5の制作ツールへビジネスモデルを移行する予定。
『DOLK STATION』
●ボーダレス
国境なきネットショップを自認。メーカーが商品を登録するとボーダレスが基幹システムとなり、各国にある子会社が翻訳&現地化して、それぞれの国でネット販売を行なってくれる。各国で異なる、商習慣、決済を考慮せずにメーカーは商品を海外展開できる。講談社とコラボして『進撃の巨人』ドールを販売したところ、15万円の製品がわずか5分で完売したという。現在、英語、中国語、韓国語に対応。ロシア語も製作中だ。
『職人さん.com』
●職人さんドットコム
建築業界の職人出身のIT経営者が始めたサービス。建築現場に情報革命を起こしたいという。ホームセンターでも取扱いがない、プロ向けの工具や資材メーカーの情報などはまだまだつかみにくい。そんなプロ向けの製品やショップなどの情報を掲載し、また求人情報や現場の困りごとを解決する掲示板なども設置している。
『MANABOZ(2014年7月末ローンチ予定)』
●Team OZ
家庭教師のマッチングサービス。教師をサービス上で検索でき、指導履歴や価格などから選択できる。同社の特徴は、学習における重要なテーマである“動機付け”で学習意欲を高められるところにあると説明するが、実際どのように行なうかはこのピッチでは具体的説明はなく、今後ローンチ後に期待。
関西は大阪・梅田の再開発を機に、スタートアップやベンチャーの機運がどんどん高まっているという。大阪駅前のグランフロント大阪には、このイベントの開催場所だった“大阪イノベーションハブ”と人の集まる場所もできた。ここから世界に出ていけるようベンチャーのエコシステムをつくり、関西の盛り上がりを支援する。
■関連サイト
トーマツ ベンチャーサポート
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