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ジョブズらとともに作り上げたアップルストア。エイトインクCEO、ティム・コービー氏インタビュー|Mac

2014年06月09日 18時00分更新

ブランド体験を与える場=アップルストア

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 世界で400店以上が運営されている実店舗型のアップルストア。6月13日には表参道店がオープンすることも決まり、その拡張の勢いはいまだに留まるところを知りません(ちなみに上の写真は「ミニストア」と呼ばれる小型店舗のデザインです。表参道店ではないので念のため)。

 アップルストアにはさまざまな大きさやデザインのものがありますが、初めて訪ねる店舗でも、一歩店内に入ると「あ、やっぱりアップルストアだ」と感じさせられる一貫性があることに気づきます。その正体とは何なのか、初期からアップルストアのデザインに関わってきたデザイン集団、米エイトインク社のティム・コービーCEOに話を聞きました。
 

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ティム・コービー 米エイトインク社(Eight Inc.)の創設者にして現CEO。ジョブズがアップルに復帰したころより依頼を受け、アップルストアの立ち上げを手がける。建築やインテリアデザインのみならず、企業のブランディング戦略を提案する


■現在はデザイン戦略の過渡期

──エイトインクは、世界中の主要なアップルストアのデザインやイベント演出などを手がけてきたんですよね?

コービー 弊社はこれまで、アップルの外部コンサルタントとしてアップルストアのデザインコンセプトを立て、その標準的なフォーマットを策定してきました。外観だけでなく内装の構成要素も含め、世界中のアップルストアはそのフォーマットに従ってデザインされています。

──エイトインクでは「常に革新すること」を標榜されていますが、アップルストアの基本路線はしばらくは変わらないと?

コービー 「顧客にアップルを体験させる」という根本の考え方こそが、われわれがフォーマット化したもののいちばんの強みで、これは空間デザインだけでなくすべての面で徹底されています。その点については今後のアップルストアでも継承されていくでしょうね。

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■ブランド体験を与えるデザイン

──具体的にどういう「体験」がユーザーにアピールするのか、例を挙げてもらえますか?

コービー 大切なのは、ユーザーとブランド(製品)の関係性をできるだけ強化することです。その製品がユーザーにとって何を意味するか、どれだけ重要なことであるのかを明確に示すわけです。その世界観を示す環境、サービス、ビヘイビア(ふるまい)を含めた総合的なコミュニケーションでユーザーに訴求し、さまざまな点で差別化を図るようにデザインしています。

 一般に、会社側が自社と競合他社を比べると80%ほど差別化されていると考えるとき、実際にユーザー側は8%程度の違いしか感じていません。仮に製品そのものは80%の差別化ができていたとしても、売る段階でそれをうまく訴求できていないのです。例えば、販売スペースには製品のポスターが張られますよね。ポスターが質の高いものであることは当然ですが、目の前にあるリアルな製品よりもポスターのほうがよく見えてはいけません。製品がチープに見えてしまい、ユーザーの信用を得られないからです。

 そのため、我々は展示スペースのライティングには入念に注意して、何カ月も試行錯誤を重ねることもあります。そういう部分にユーザーが意識を向けることはほとんどありませんが、こうした工夫こそが非常に重要なのです。

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──確かに、アップルストアで製品が安っぽく見えることはまずないですね。

コービー 特定のブランドを選んで買う人の動機の50%以上は「口コミ」で、それは直接的な経験談が大きく影響していると言われています。つまりアップルストアの店舗では、そうした「体験談として語られるに足る素晴らしい経験」を与えることが重要になります。ひとつの例が、プロのサービスマンと直接対面できる「ジーニアスバー」というサービスカウンターです。

 どのメーカーの店舗にもあるサービスカウンターに、あえてジーニアス(天才)という言葉を冠することで、通常のサービスとは違った接客、対応法やテクノロジーを提供し、それが貴重なユーザー経験となるようにデザインしています。ちなみに、ジーニアスバーという名称は「Think different.」キャンペーンに登場した数々の天才たちからヒントを得て、考案されました。

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■コピーされないデザインの秘密

──店舗デザインにおいて、インテリアやエクステリアといった各要素の形状や素材、色彩などの要素はどのように選んで決めているのですか?

コービー バブルダイアグラム(構想図)を描いて案を発展させながら、だんだんと素材やディティールを決めて、ドローイングや図面に落とし込んでいきます。ただ、スティーブ(ジョブズ)が図面ではイメージできないというので、毎週のように模型を作って見せに行きました。トータルで50個は作ったでしょうか(笑)。

 最初の数年は毎週のようにミーティングでしたね。巨大な倉庫内に実寸大のストアのモックアップを作ってプレゼンテーションしたこともあります……(続きは、MacPeople 7月号で!)
 


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 さて、MacPeople 7月号(5月29日発売)では、コービー氏へのインタビューを含め、アップルストアのデザインの裏側に隠された意図を探る特集『アップルストアの知られざる真実』を掲載しています。表参道店に行く予定の人は、読んでから行くといろいろと楽しめるはずです。

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