ソニーは、PC事業を売却し大きな変化からスタートした2014年度の経営方針説明会を行なった。「構造改革をやり切る年。(構造改革を)何年やっているのか、というお叱りの声を真摯に受け止め、先延ばしせずに本年度中にやり切る」という平井一夫CEOの言葉から始まった。
発表のテーマは大きく分けて3つ。まずは、赤字体質が改善できていない“エレクトロニクスの事業構造の改革”だ。7月1日をメドにPC事業を『VAIO株式会社』に移管することは既報通りだが、新たにテレビ事業を『ソニービジュアルプロダクツ株式会社』として分社化し、同じく7月1日をメドに発足する。
こういったエレクトロニクス事業の構造改革の費用として、2013年度と2014年度で3000億円以上の費用を計上してきた。その効果は2015年度以降に1000億以上のコスト削減を見込んでいるとのこと。
次に“2014年度の注力事業における重点施策”だ。平井CEOが繰り返しアピールしているとおり、“ゲーム&ネットワークサービス”、“モバイル”、“イメージング”を3つをコア事業としていくのは変わらない。
PS4は全世界で700万台の実売を達成し、関連ソフトも2050万本実売と好調だ。収益面でもハード単体で利益を出しているとのこと。「PlayStation誕生から20年目で、PS2がもっとも成功したハードだがPS4はそれ以上になる可能性をもつプラットフォーム」と手応えを感じている。また、購入者の半数が定額ネットワークサービス『PlayStation Plus』の会員で、『PlayStation Network』及び『Sony Entertainment Network』のアクティブユーザー数は5200万人を超えている。今夏からアメリカでストリーミングによるゲーム配信『PlayStation Now』のベータテストを開始するのは楽しみな要素だ。
ゲームや音楽、動画を含めたネットワーク関連の売り上げは2013年度に2000億円を超えており、さらなる成長が見込める分野になりそうだ。
モバイル事業では、『Xperia』のフラグシップモデルだけでなく、地域に合わせた普及価格帯のラインアップを拡充させていく。日本や欧州に加えて、アメリカ市場にも参入する。
ウェアラブルデバイスもキーになる製品として、ラインアップを拡充する。
カメラなどイメージセンサー事業は積層型CMOSセンサー“Exmor RS”の生産能力を向上させ、コンシューマー向けにはデジタル一眼と高負荷価値コンパクト機に注力していく。4Kは業務用のカメラとともにソリューションビジネスにも幅を広げる。
なかでも、デバイス部門の、イメージセンサーとバッテリーには大きな期待があるようだ。とくにラミネートフィルム型のゲル状ポリマーバッテリーは高容量薄型化が可能で、今後スマホ以外にもウェアラブルデバイスの部門でも他社より優位に立てるという。
一方で好調な映画や音楽などの“エンタテインメント”は2015年度までに合計3億ドルのコスト削減を実行しつつ拡大し、“金融”についても安定的な利益の成長を目指し、2013年に参入した“介護事業”も育てていく方針だ。
最後に“2015年度以降の成長に向けた技術開発の方向性と新規事業創出への取り組み”については、「初めはニッチなものでもイノベーションがあるものなら積極敵に推進する」ことを続けていく。レンズスタイルカメラ『QXシリーズ』や、ミュージックビデオレコーダー『HDR-MV1』がその例だ。また、4Kの超短距離照射プロジェクター『ライフスペースUX』や『ラケット装着型Smart Tennis Sensor』は専門組織を設置して生まれたものだ。4月以降は新規事業の事業化を推進する専門組織を立ち上げていくという。不動産業が例として挙げられていた。
5月14日に発表した2014年3月期の連結経営成績は1283億円の赤字で、2015年3月期も500億の赤字の見通しと2年連続の赤字だが、改善する見込みだ。PC事業の譲渡などで“止血策”は効果が出始めているが、この数字を達成するには、平井CEOの構造改革はなにがなんでも2014年度で終わらすという方針が実現すること、説明会のなかで再三登場した「環境の変化による影響に迅速に対応できる体制をつくる」ことが必須条件といえそうだ。
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経営方針説明会
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