いよいよ今週末の26、27日、niconicoの総力をあげてのお祭りである“ニコニコ超会議3”が幕張メッセにて開催される。ブースでは、歌ってみた、踊ってみた、演奏してみた、描いてみた、技術部、コスプレといったユーザーが作り上げてきたカテゴリーに加えて、大相撲、囲碁・将棋、自衛隊、宇宙、深海など、名だたる団体も巻き込んで、カオスな空間が展開される。
その夜に開かれるのが、2日間で約530名が出演するという大規模ライブフェスの“ニコニコ超パーティーIII”だ。アスキー的に注目したいのは、全天周でニコニコ生放送を実施するという点。そのシステムが報道陣に向けて公開されたのでチェックしていこう!
↑昨年の超パーティーIIの様子。
■客席のサイリウム振りまで見れちゃう!
超会議の前身となった“ニコニコ大会議”の時代を含め、ここ数年、ニコニコの大規模ライブでは、会場だけでなくネット視聴用にも有料のチケットを販売してきた。ライブの生放送は、現地に行けない人でも参加できるメリットがあることに加えて、コメントを入力して一体感を味えたり、リアルタイムで3DCGの演出を重ねた映像を見れたりと、会場とはまた違った楽しみ方がある。「ライブって生で見た方がいいでしょ」というのとは別の価値観を提案し続けてきたわけだ。
ライブ中にいろいろな場所を見れるということに関しても挑戦してきた。通常は提供側が意図した演出の映像を見続けるしかないが、ステージにいくつか置かれたカメラをユーザーが切り替えて、好きな視点で楽しめるという生放送も多い。それをさらに押し進めたのが、今回の全天周での配信になる。
↑仕組みとしては、まず1600×1200ドットのレンズを天面に1つ、側面に5つ備えた『LadyBug3』という特殊なカメラで撮影する。このカメラだけで160万円以上はするとか。
↑その6つの映像をひとつに統合して、配信用に圧縮する。
↑ニコ生で見る際には、プレーヤー上でクリックしながらカーソルをドラッグすると、スムーズに切り替えながら見たい場所に視点を動かせる。上下スクロールで、ズームイン/アウトも可能だ。
実際に見るときには、音声に注意しよう。超パーティーのニコ生は基本有料(1日目1500ポイント、2日目2000ポイント、両日通し2500ポイント、1ポイント=1円)だが、冒頭だけ無料で公開される。まだ実験的な試みなので、無料パートは音声付きで見られるが、有料パートになると仕様上、通常の表示と360度を別ウィンドウで開く“2窓”状態にしないと音がつかない。タイムシフト(事後の視聴)は技術的には可能だが、見られるようにするかどうかは未定とのこと。
実物を体験してみたが、やっぱりマウスでぐりぐりと動かせるのはかなり新鮮だ。超パーティーの会場には一度に6000人が集まっているが、ステージ上を映したカメラだけではその規模感がなかなか伝わりにくい。カメラをぐるぐる回して、上の席までの広さや、揺れるサイリウムの“海”が眺められれば、よりその場にいる感じが高まるはず。当日は、360度を意識したステージ演出や、お客をあおってウェーブさせるなどの要素がぜひ欲しいところだ。画質的には、全天周の映像でビットレートが2Mbps前後ということもあってエコノミーな感じだが、目新しさもあって意外と気にならなかった。
■niconicoだから継続して360度配信できる
東京・六本木にあるniconicoのライブ施設“ニコファーレ”で技術面を担当するドワンゴの岩城進之介氏によれば、全天周での配信はこのニコファーレが2011年にオープンしたときからずっとやりたかった夢だったという。考えているだけではダメなので、あるタイミングで稟議を通して、LadyBug3を購入。昨年の7月からテストしてきて、どんな形態で配信すればいいのか模索してきた。
↑ドワンゴの岩城氏。
↑昨年8月に実施したDJイベント『VocaNicoNight』でも、LadyBugでテストしていた。
折しも2013年11月に、リコーがワンボタンで手軽に360度写真が撮影できるカメラ『THETA』を発売して、全天周で撮るという楽しさが一般に伝わりつつあるタイミング。「時は来た!」ということで、ニコ生用のプレイヤーを勝手に開発して提案し、「ここまでできたならやろうよ」と今回の超パーティーIIIで実戦投入となった。
ドワンゴでは、超パーティーだけで終わらず、今後も継続してライブを360度で配信していくとのこと。筆者も知らなかったのだが、実は全天周のライブ配信はこれが初めてではなく、過去に何度か提供されていたのこと。ただ、イベント的にスポットで実施しているので、なかなか一般には定着しなかった。ドワンゴは、ニコ生という配信システムとニコファーレというライブ施設を自前で持っているため、全天周カメラを常設して定期的に配信していけるという。
↑ちょっとわかりにくいが、ニコファーレの天井に据え付けられたLadyBugの写真
内覧会では、この2月にNTTのR&Dフォーラムで出展していた(ASCII.jpの関連記事)、Oculus Rift対応のデモも見せてくれた。Oculus Riftは、技術者の間で話題になっているVRヘッドマウントディスプレー。かぶると視界が全部覆われ、頭を向けた方向にあわせて映像をスムーズに切り替えてくれるのが特徴になる。
ネットの通信は環境によっては通信速度が限られており、最高画質の映像を大容量で送ってしまうと見られない人が出てくる可能性がある。このシステムでは限られた帯域でも多くの人が見られるように、画質の異なる映像を用意し、ユーザーが見ている部分をサーバーにフィードバックして、そこだけ高画質な映像に差し替えるという方式をとっている。VRヘッドマウントディスプレーでは、SCEもPS4向けに『Project Morpheus』の開発を発表しており(関連記事)、これからアツくなってきそうな分野だ。
↑VRヘッドマウントディスプレーは、視界を全部覆って、頭の方向にあわせて映像を切り替えてくれるので、まるで会場にいるかのようにライブを楽しめる。
VRヘッドマウントディスプレーをかぶるとキーボードが見えなくなってコメントが打てないという難点もあるが、この辺も含めて改善されていき、東京オリンピックあたりにはVRヘッドマウントディスプレーで中継を見るのが当たり前になっているかもしれない。そんな可能性を秘めた超パーティーIIIの360度配信は、ぜひ体験しておきたい!
■関連サイト
・ニコニコ超会議3
・ニコニコ超パーティー3
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