週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。
文具とパソコンの話
↑私のいちばん好きな文具のひとつ"Swingline 790"(手前)。電動の"同270"(中)、日本でステープラーをホチキスと呼ぶきっかけになった"HOTCHKISS No.1"(奥=イトーキ創業百周年で作られた復刻品)。 |
串田孫一さんの『文房具56話』(ちくま文庫)を読むと、ひとつずつ文房具をとりあげているのだが、“消しゴム”を、鉛筆でつつかれて黒くなっていたり文具の中では“いじめられっ子”だなどと書いていて楽しい。ちなみに、“鉛筆”なんかは、饒舌ですぐ折れる気むずかし屋だというようなことだった。
私は、文具が好きで、自分で考案したボールペンを丸善本店や神保町の文房堂で売ってもらったりしている(アニメーションフローティングペン=新バージョン準備中)。文具好きといっても、海外製ノートや高級万年筆に興味があるわけではなく、“イロブン”(色物文具=ジョーク商品と文具の境界線上の文具=きだてたくさんの世界)でもない。文具の“ファンクション”というのが好きなのだ。
それでは、どんな文具がこの範疇に入るのかというと、かなり前に買ったもので“TURIKAN-STAPLER”というのがある。紙の端をガチャンとやると、アラ不思議、壁やケーブルにかける“吊りカン”ができている! どこで買ったかも正確には覚えていないのだが、美術系の方々なんかには超便利な道具だと思う。米国の文具メーカーのものだが、名前もローマ字ながら日本語で、“Made in Japan”とある。
“TURIKAN-STAPLER”(EMPIRE PENCIL Co.) |
米国製ステープラーの“Swingline 790”も好きな商品だ。ロールした針のカートリッジで5000回も連続して綴じることができる。針は、綴じ込む動作の直前に“コ”の字の形に曲げられる仕組みもすばらしい。ちなみに、電動式の“同270”というモデルもあって、こちらは70枚まで綴じることができる。以前、コレ買ったよと会社で自慢してたら「遠藤さん、70枚を連続5000回=35万枚=コピー用紙で30メートル以上、そんなに綴じないでしょう」と言われた。
5000本の針が巻かれたカートリッジ |
たまたまふたつともステープラーになってしまったが、何かに噛みつく金属性の生物みたいなどう猛さがあり、エイリアンのツメみたいな感じで反対側からおさえてはなさない感じがいい。ただし、TURIKAN-STAPLERはもう販売されていないようだし、Swinglineは米国を代表するステープラーの会社だが、通常の“コ”の字形の針の製品が主流である。どうも“ファンクション”の突出した文具は、一般には定着しない傾向があるようだ。
しかし、ステープラーの魅力は、連装される針に象徴されるミニチュアのオートメーション工場を所有するような満足感だ。連続動作するあたりは、コンピューターのプログラムに通ずる楽しさがあるような気もする。机の上の住人という点では、パソコンも、今や文房具なのだろう。そして、今のところ共存はしているがほかの文具のファンクションをバーチャル化してのみ込んでしまっている。串田孫一さんっぽく言えば、文具のセカンドライフみたいなモンスターなのだ。
【緊急告知】
神は雲の中にあれらるでお馴染み 遠藤諭が語る!
「デジタルと紙の間にチャンスがある~サイバーフィジカルな知的生産のススメ~」
Canon×CamiApp コラボスペシャル 第2弾
プログラミングの本をつくったときに「まず用意するモノは?」と著者に聞いたら、コンピューターではなく「ノートと鉛筆」と答えた。私の知っているデザイナーはもちろんプランナーも、自分の慣れたノートを必ずもってくる。クリエイティブな仕事をする人がノートを使うのなら、ノートを使うことでクリエイティブになれる。スマートデバイスが年間で3000万台も売れる一方、紙のノートが人気なのはなぜなのか? 月刊アスキー編集長をながくつとめ、「超」整理手帳やThinking Power Noteなど文具の企画までかかわっちゃう発想から、“デジタル”と“紙”の間にこそある知的生産とこれからについて語る。レア&愛用の文具も持ちこみます。
※後半パートでは、Canon imageFORMULAとCamiAppから、それぞれの中の人が、紙とスマートフォン、スキャナー、ガジェットを活用した便利な使い方をご紹介します。
日時:2014/03/15 15:00 〜 17:00
会場:コクヨ品川オフィスショールームエコライブオフィス
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