日本は世界市場で「ガラパゴス」と言われることが多いが、スマートフォンでも極めて特殊な現象が起きている。世界ではアンドロイドがiPhoneの約5倍ともいわれる市場規模なのだが、日本ではiPhoneが売れまくっている。稼働台数ではアンドロイドの半分くらいだが、秋以降、売れゆきではiPhoneが上回っている(BCNなどのデータによる)。実は、角川アスキー総研の1万人調査「メディア&コンテンツ・サーベイ」の今年1月の結果で、たしかにiPhoneとアンドロイドの購入意向は拮抗していた。
iPhone好調の理由は、NTTドコモの参入で過剰に客を奪いあう施策が講じられているとか、海外に比べて日本人は高い端末を買えるなのだとか指摘されている。しかし、結果的には、このユーザーの購入意向のとおりの経過を踏んだのだ。
それでは、一体どの層がiPhoneを買いたがっているのか、そして、同じiOS搭載のiPadを買いたがっているかを示したのが、図1のグラフだ。前述の1万人調査で、「1~2年以内に購入したい情報機器」という設問に対する答えを集計したもので、いくつかの特徴が読み取れる。簡単に整理すると、次のようになる。
・男女とも10代はハンパなくiPhoneを欲しがってる
・男性50代ミドルエイジはiPhone購入意向が高い
・「買いたい」気持ちではiPadはiPhoneなみの高さ!
・女性40代以上はiPhoneよりiPadを欲しがってる
なんといっても、いま10代がいちばん気にしているアイテムの1つがiPhoneであることが想像できる。中高年のiPhoneの購入意向の高さはについては、「20代~40代はすでにiPhoneを買っているので50代がやっと欲しがってきているのでは?」と思われがちだが、“現在所有”している人と合算しても、50代は、30代や40代よりもiPhone率が高いのだ! これらをまとめると、iPhone関連のビジネスを考えるなら10代と50代オヤジ層が狙い目のヒントとなりそうだ。
iPadに関してみると、“1~2年以内”という条件付きだが、日本でもタブレットの購入意向が高くなってきている。北米の成年層では半数近い所有率のタブレットだが、日本ではまだ10%台ときわめて低い普及率だ。“何が得られるか”が重要なので、このグラフからは、タブレットで楽しめるコンテンツ充実への期待感が高まってきていると読んでもよいだろう。ちなみに、iPadは、米国で“メディアタブレット”と分類されるようにコンテンツ端末的な性格のデバイスだが、iPad miniは、どちらかというと“情報端末”的な性格が強いと思う。ところが、図2のとおりにiPad miniに対してiPadの購入意向がいちばん高いのは、情報も頻繁に扱いたいはずの男性20代・30代である。また、女性は年令による差が小さく、シニア層のiPad購入意欲の高さも見逃せない。
さて、この日本独自の“iPhoneガラパゴス現象”、一体、どこまで続くのか? この原稿を書いている間にも、アップル自身によるSIMフリー版iPhoneの販売が始まった。それでも続くだろう。3キャリアのiPhone優遇施策はサービスやコンテンツなど関連業界にどんな結果をもたらすのか? 個人的には、アプリ間の情報受け渡しのラクなアンドロイドが捨てがたいが、入門者などにはiPhoneを勧めている。そんなこんなが入り混じって、今年の年末商戦は、iPhoneとiPadに対する消費者の注目はピークに達することが予想される。それによって、日本の世の中が1つでも2つでも、よりネットやデジタルで便利になるんならそれはすばらしいことでありますが。
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