今年もゴールデンウィークの頭である4月26、27日に、niconicoの祭典である“ニコニコ超会議3”が開催される。会場となる幕張メッセでは、ブース展示とステージイベントでniconicoの各カテゴリーが地上に再現される予定だ。
その昼に続いて、夜は隣にあるイベントホールでライブ“ニコニコ超パーティー”を実施する。歌手の小林幸子さんやふなっしーなどに加えて、今年の目玉といえるのは“陸上自衛隊中央音楽隊”の出演だろう。「ふーん、自衛隊が演奏するの?」といまいちピンと来てない人もいるかもしれないが、実はコレ、めちゃめちゃスゴいことなんです!!
↑昨年の超パーティーIIの様子。陸上自衛隊は超会議に3年連続で出展しており、昨年は最新鋭の“10式戦車”を展示していた。
というのも、中央音楽隊は国レベルのイベントで演奏している吹奏楽団だからだ。1951年の設立後、海外の国賓や公賓を出迎える場はもちろん、天皇や皇族の儀典、東京、札幌、長野五輪、日韓共催のW杯といった、数々の大舞台を支援してきた。
そうそうたる活動のいちページに、なぜかニコニコ超パーティーIIIが加わるわけだ。なぜ、今回“ご降臨”していただけたのか。隊長である1等陸佐の武田晃氏に真意をインタビューしてみた。
↑やってきたのは陸上自衛隊の朝霞駐屯地。中央音楽隊の宿舎の前には、ト音記号をかたどった庭木があってオシャレ。
↑インタビューに先立って、展示を案内して頂きました。クリントン元大統領を歓迎した式典の写真、天皇陛下ご即位10周年記念の品などが並んでます。
↑東日本大震災の慰問演奏、米国のシカゴで参加した吹奏楽の祭典“ミッドウェスト・クリニック”などのパネルも。
↑東京五輪で吹かれたトランペットやその衣装なども展示していました。
↑本体は金属だけど音色が木管楽器に近い“バスサキソフォーン”や、金属製のダブルリード楽器“サリューソフォーン”など、貴重な楽器の展示もスゴい! 吹奏楽をかじっていた人なら、垂涎の展示室だろう。
■超パーティーは片手間ではなく、全力で挑みます
↑武田隊長。武蔵野音楽大学でトランペットを専攻し、卒業後に陸上自衛隊幹部候補生学校を経て、1980年に中央音楽隊所属。2007年8月より現職。
──中央音楽隊の出演が明らかになったのは1月の発表会でした。生放送の反響を見てどう感じられました?
びっくりしましたね。過去2回、超会議の参加を発表したときの流れから見て、ある程度の反響があるとは思っていましたが、あそこまでとは。
──国賓クラスの式典や五輪、W杯に並んで、超パーティーというのがちょっと信じられません
そうした決まった演奏だけでは幅が広がっていかないので、時代に合わせてチャレンジしているんですよ。元々、超会議への参加も陸上自衛隊の姿を国民のみなさんに知ってもらいたいという、広報の目的があります。自衛隊というと戦車や大砲などの堅苦しくて真面目なイメージもありますが、そればかりではない。われわれもみなさんと同じ日本人として考え、泣き笑いしているんだという。
インターネットは、今では限られた人が使うものではない。陸上自衛隊はそんなネット社会に、海上、航空よりも先に目を向けていて、広報活動をする方針を決めました。その広報室から打診があって、「そういえばそうだね」と出演を決めています。何も特別なことをやってるわけじゃない。
──最初の超会議では、自衛隊の車両近くにあるステージでアイドルがライブをやっていたりして、そのギャップに驚きました。超会議2では、最新の“10式戦車”を展示したインパクトが大きかった
日本は庶民と政府、娯楽とそうじゃないものを線引きして完全に分けたがりますが、実際は重なっている。しかも、自衛隊の戦車や大砲はわれわれの占有物ではなく、税金で成り立っている国民の財産です。10式戦車などの展示も、国民の目の届くところに置いて理解してもらおうという趣旨。
↑アニメやゲームの曲などを演奏したCDも発売している。
──ところで中央音楽隊に入るためには、どんなテストを受けるんでしょうか?
まず自衛官の採用試験に合格して、その中から適性のある者が選ばれます。毎年、全国に20以上ある陸自の音楽隊で30~40人ぐらいの空きが出ますが、そこに300人ぐらいの受験者が集まります。
──10倍!
その300人に採用試験を受けてもらい、同時に説明会をやって、そこで演奏してもらって適正を見ます。これはあくまでも適正を見るだけで、楽器が上手かったからといって試験の点数がアップするわけじゃない。合格したあとに、その名簿と照らし合わせて適正のある人を音楽隊要員にする。
──中央音楽隊の前にかなり高いハードルがあるんですね
そうですね。そこからまず中央音楽隊以外に配属してもらって、空きが出たときに希望者から選抜するのが一般的です。特殊楽器では、最初から中央音楽隊要員として募集することもありますが。
──やはり音大出身の方が多いんでしょうか?
ここ15年ぐらいは、ほとんどが音大、音楽短大、音楽専門学校です。
──まったく知らない一般人の中には、「自衛隊の中の音楽好きが演奏してるのかな?」という印象を持つ人もいるかもしれませんが、かなりの狭き門を抜けてきたエリートですね
実力的にはオーケストラのほうが上だとは思いますが、かなり鍛えられた中から選抜しているっていうのはあります。
──年間の演奏回数はどれくらいでしょうか?
160回ほどですね。そのうち30~40回は国賓や公賓が来られたときの歓迎式典で演奏する“儀仗”になります。ほかに舞台やパレード、アトラクションなどがあって、残りは国民向けのコンサートですね。東京都内でやってる定期演奏会が年間3回。この前は沖縄に行ってましたが、そうした巡回演奏活動が年1回。
↑2月2~13日にかけて、沖縄本島、与那国島、石垣島、宮古島で演奏会を実施。現地の学生に演奏指導をする場面も。
──160回というと、2、3日に1回演奏する計算ですね。移動もあるので、練習時間が取れなさそうです
練習のスケジュールを組むのは本当に大変。個人レベルでは、指使いなどが特別難しくなければ、楽譜を見てすぐに演奏できます。しかし全員で合わせるために、4日、5日ぐらいのまとまったリハーサル期間がほしい。
──“まとまった”で4、5日!
プロの演奏団体はみんなそうですよ。われわれも3、4日でステージということもありますが、できれば4、5日を連続して取りたい。しかし、いろいろな式典が間に入ってなかなか取れないのが実情です。
──そんなご多忙の中、超パーティー用に練習していただいて……
超パーティーは片手間ではなく、全力で挑みますよ。これはユーザーの方々にも強く言っておきたい。みなさんに受け入れてもらうためには、どうしたらいいかと真剣に考えています。私よりずっとネットに詳しい若い連中に聞いて、「隊長、変に演出に凝ったりしなくて、陸上自衛隊中央音楽隊で見せたほうがいいですよ」とアドバイスを受けたりとか。今までの広報活動で見向きもしてもらえなかったような人たちが知ってくれるきっかけになるんじゃないかと期待しています。
──超パーティーでは、クラシックのコンサートを初体験するお客さんも多いかと思います。昨年の超パーティーIIではユーザーの有志で結成した“超ニコニコ管弦楽団”が出演して、クラシックとは思えないほどの歓声で大盛り上がりでした
普通にクラシックコンサートを聴きに行っている人だと、しゃべらず、かしこまって聴かなきゃいけないという頭があるかもしれません。日本の音楽教育が原因という話もありますが、そういう呪縛がない方に聴いてもらえるととても面白い反応をしてもらえる。
──今回も歓声や手拍子をしてもらうのもアリですか?
ありでしょうね。この前の沖縄の巡回演奏も、演奏が終わったところで「ほーっ」とか「おー」とかなんか声を出してくれました。芸能が日常にある土地だからこそでしょうね
──最後に演奏するのはどんな楽曲でしょうか?
曲名までは教えられませんが、人気ボカロ曲のアレンジを演奏しようと考えています。ぜひ会場とネットで一緒に楽しみましょう。
↑練習風景。超パーティーの演奏中はこちらも会場やネットで全力で望みましょう!
2014年2月2~13日、沖縄本島、与那国島、石垣島、宮古島にて演奏会を実施。そのうち2月13日、名護市民会館にて実施した沖縄本島演奏会の一部を動画でお届けします。
■関連サイト
ニコニコ超会議3
ニコニコ超パーティーIII
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