ニコニコのアツい夏が始まった──。“ニコニコ町会議全国ツアー”といえば、国内随一の動画コミュニティーサービス“niconico”(ニコ動)が昨年から企画している夏のイベントで、今年は全国8ヵ所を回る予定だ。7月14日には、岩手県洋野町で今年1回目となる町会議を実施し、5000人の来場者を集めた。その全貌を時系列順にがっつりレポートして行こう。
■超会議の町バージョンだから町会議
ニコ動のイベントといえば、4月末に千葉の幕張メッセで開いた“ニコニコ超会議”が知られている。今年は2日間で来場者が10万3561人を超え、安倍首相も姿を見せたり、赤字額も昨年の約4億7000万円から約8854万円に減ったりと大成功に終わった。しかし、ニコ動の中心ユーザーといえばあまりお金を自由に使えない10代と20代。いくらニコ動が好きでも、関東から離れた場所に住んでいる若者がこのために上京するのは難しい(来る猛者もいますが)。
というわけで、全国ツアーバージョンとして用意されたのが、この町会議だ。地方巡業というと、おおよそ県庁所在地に行ってしまいがちだが、そこはニコ動なので斜め上の方向に進んで、基本的に市町村の“町”をチョイスしている。なぜ町なのか? それは超会議から来る言葉遊びです。
しかも、ユーザーから来てほしい場所の応募をもらって初めてニコ動の運営が自治体に働きかけ、オーケーをもらったところに行くという流れだ。昨年は鳥取/佐賀/北海道/福島/東京(八丈島)の5ヵ所に加えて、島根と愛知の2ヵ所を追加で回った。今年は7月半ば~9月半ばの2ヵ月間で、岩手/香川/鹿児島/島根/山形/山口/北海道/東京(檜原村)という8ヵ所を回る予定だ。
その内容は、歌ってみた、踊ってみた、ゲーム実況、物販など、超会議でもやっていた企画をぎゅっと濃縮して再現したものになる。しかし超会議とは異なり、入場は無料で、物販以外はタダで楽しめる。さらにニコ動単独ではなく、地元の夏祭りと併催するのもユニークだ。
■ウニづくしの“たねいちウニまつり”と併催
岩手県洋野町は、岩手県の沿岸部(三陸海岸)の最北端に位置する。ウニとホヤで知られており、NHKの連ドラ『あまちゃん』のロケ地のひとつである種市高等学校が存在する。人口は2013年6月で1万8538人。その町で一番のお祭りとなる“たねいちウニまつり”と、町会議が併催した。ウニまつりは『あまちゃん』効果もあってか、昨年の倍で町の人口を超える2万人が来場。町会議と合わせて2万5000人の集客があったことになる。
↑会場となった種市海浜公園は、種市駅から徒歩15分ほど。東京からだと、東北新幹線にのって4時間かけて青森県の八戸に移動し、さらに種市駅まで50分ほど。岩手県は1万5378キロ平方メートルで、広さは北海道に次ぐ日本で2番目なので、同じ県内でも南に住んでる人は洋野町まで遠い。
↑海にせり出した防波堤からパノラマ写真で撮ってみた。中央に町会議、左側にたねいちウニまつりの会場が設営されている。徒歩で5分ほど離れていたが、かなり人が行き来していた。
↑洋野町といえば、東日本大震災の津波で、三陸沿岸の人的被害がゼロだった自治体。住民がしっかり避難したことに加えて、会場脇にもそびえ立つ12メートルの防波堤が町を守ってくれた。
↑洋野町には、100年続くヘルメット式の潜水技術“南部もぐり”が受け継がれている。種市高等学校では、その技術を学べるプールを有している。
↑ウニまつりは10時の販売開始を前に、朝7時ぐらいから行列ができていたようだ。筆者も9時頃に会場についたが、写真のようにズラリ……。周囲の道路も渋滞して、会場の中に入るだけでも苦労したとのこと。
↑ウニ丼、焼きウニ、イチゴ汁(ウニのお吸いもの)、ウニのから割り体験と、とにかくウニづくし! ちなみに筆者は町会議の取材があって食べれず。ええ、血の涙を流しました。
↑もちろん町会議の会場にも行列ができてましたよ。町会議のスタートは12時とウニまつりより遅かったので、流れてくるお客も多かったです。
↑開場前にパッと見て気づいたのは、昨年よりセットが豪華になっていたということ。トレーラーの荷台をまるごとステージにしていたり、中央にはやぐらが組まれて提灯が伸びていたりと、かなりお祭り感がアップしていた。
■オープニングから止められない盛り上がり
岩手の町会議は、決まった経緯がおもしろい。もともと地元の女子高生・アリサさんが運営に応募して候補に入っていたとのこと。さらに後押ししたのが、岩手県知事の達増拓也(たっそたくや)氏だ。
4月30日、達増知事がTwitterで「岩手県知事こそ超会議に呼ぶべきお方ですよ!」といわれた際、「岩手でニコニコ超会議をやって欲しいです」と返答。この一言に運営のFooさんが「知事!はじめまして。ニコニコ動画の運営でございます。是非岩手県でニコニコ町会議を実現できると嬉しいです!ご一考ください!」と@を飛ばして話が進み、5月24日にはドワンゴのメンバーが知事室に行って交渉したそうだ。
↑オープニングの司会は、ユーザー生放送出身の百花繚乱さん、“ニコラジ”のパーソナリティーとしても知られるラジオDJのやまだひさしさん、ニワンゴの杉本社長さん。やまださんの出演は先週急に決まって、前日の鹿児島から強行して来たそうだ。
↑こちらが町会議を開くきっかけのメッセージを出した女子高生のアリサさん。「信じられなくて、こういうことが起きるんだなと実感しました」と語っていた。達増知事も「本当に大手柄です」とほめる。
↑達増知事はニコ動について「私も会員になってて、趣味でいろいろ見ています。いつも画面で見ていることが目の前で広がっているのが本当にすごい。岩手県としてもドワンゴさんの力を借りて情報をどんどん発信していきたい」と挨拶。プレミアム会員ということが分かると、やまださんから「プレミアム県知事!」との声がかけられて会場から歓声が上がった。
↑ドワンゴの夏野取締役(左)、洋野町の水上町長(右から2番目)も含めてテープカットをしてスタート。夏野取締役は超会議が赤字だったのに反して「町会議はスポンサーがついたため黒字の気配がしてる」と触れて、会場を沸かせていた。
■歌って、踊って! 地元紹介も盛り上がったステージ
祭りは理屈じゃない、肌で楽しむものだっ! ……ということであとは怒濤の写真でお送りしていこう。町会議は基本的にステージの出し物と、ブース展示に大きく分けられる。まずはステージから。
↑恒例となったユーザーにステージで歌ってもらう“町のど自慢”。町会議はニコ動の有名ユーザーを見るだけでなく、ユーザーといっしょにつくり上げるもの。司会は、踊り手の仮面ライアー217さん(左)やユーザー生放送のモロさんがつとめた。
↑のど自慢はいつも参加者が多数で抽選になるのだが、洋野町に町会議を呼んだアリサさんも選ばれていた。なんというラッキーガール!
↑人気の歌い手、ぽこたさんものど自慢に参加。観客はとにかく女性が多くて黄色い声援が飛びまくっていた。ちなみに最前列のメンバーは常連のファンで、東京から来た方々とのこと。
↑『タカラモノ』と『be foolish///』の2曲で伸びやかな美声を披露。自らを“フリー素材”と公言し、歌ってる最中も撮影に応えていたのが印象的だった。
↑希望者を舞台に上げて、観客も含めて大合唱した『千本桜』が壮観。この一体感はディスプレー越しではなかなか味わえないです。
↑踊ってみたでは、めろちんさんとみうめさんから、『ハッピーシンセサイザー』と『Shake It!』の振り付けを教えてもらう“踊ってみたレッスン”を実施。
↑レッスンのあとには、ステージに集まって成果を発表していた。40~50人の大人数で踊ると迫力が違います。
↑左からみうめさん、めろちんさん。2人とも楽しそうに踊るので、こちらも自然と笑顔がこぼれる。
↑『Shake It!』では217さんも乱入したがってました。
↑会場のあちこちを生中継する“町おまつりぐるり”。何回かに分けて、ぽこたさんとゲーム実況のドグマ風見さん、モロさん、やまださん、217さんが、乱入して盛り上げていました。
↑ステージでは地元の方にはぐっとくる“岩手県あるある”を紹介。ドグマ風見さんが南部もぐりに挑戦し、四苦八苦しながら潜水に成功するビデオが流れると、笑いと謎の感動に包まれた。
■並んだ甲斐があった! ブース展示
各ブースも最初から行列ができて、“最後尾”の看板があちこちで見られた。一番人が集まっていたのは、町ゲーム実況のブース。ゲーム実況の中でも人気が非常に高い4人組“M.S.SProject”が出演していたからだ。
↑左から順にあろまほっとさん、FB777さん、eoheohさん、一番右がKIKKUN-MK-IIさん。右から2番目のドグマ風見さんはふらっと遊びにきていた。
↑ゲーム実況は、歌ってみたといっしょで女性人気がスゴい。この日も7、8割が女性でした。『MINECRAFT』でウニをつくったり、『熱血高校ドッジボール部』で対決したり。男子が楽しそうに会話しながら、キャッキャウフフと戯れるのを見てるのが楽しいのです。
↑オープニングで司会をしていた百花繚乱さんは、昨年に引き続き町フードブースでたこ焼きを提供。外はカリッ、中はふわっで、「うーまーいーぞー!」と叫びたいほど美味です。
↑時間帯によってはポーションも提供してました。次々ともらわれていくたこ焼きとは裏腹で、こちらは割と残っていた感じ。ニコ動ユーザーなら、動画のトラウマでちょっと敬遠された?
↑大道芸人のうーさんは、バルーンアートを子供たちに伝授。ほかにも目隠ししてバランスをとりながらのナイフジャグリングなど、惜しみなく芸を披露して、喝采を浴びてました。
↑昨年の輪ゴム射的に代わり、手軽に楽しめるゲームとしてが輪投げが用意された。得点によってTシャツやマグカップなどもらえる景品が変わります。ちなみに的の上についてる置物はユーザーから募集したものだ。
↑踊り手かつ絵師の雪さんは、1枚の板に来場者の似顔絵を描いていく“町集合似顔絵”に挑戦。写真の出演者のほか、6時間かけて70名を描き上げていった。
↑ネット経由で視聴者にお祈りするニコニコカー神社も鳥居付きで出現。吉本芸人のF2鈴川絢子さんを中心に、M.S.S Projectのメンバーやドグマ風見さんが案内役を務める。
↑パーティーゲームの“人狼”をアレンジした“町規模人狼”。運営のメガネさんが参加者にやり方を教えてました。
↑物販ブースは今回、夕方まで行列が途切れなかったほど大人気だった。1枚500円でIDカードを発行してくれる“ニコニコ住民票”ブースも列が伸びていたが、潮風や湿気のせいか機械の調子が悪くて途中で終了していた。
↑事前に希望したユーザーにブースを構えてもらい、制作物の頒布や展示を行う“町ユーザーマーケット”では、なんと岩手県が“いわてまんがプロジェクト”を紹介していた。
↑痛車も4台展示してました。
↑痛車その2。これでブースは全部。長い行列も、ステージの催し物を眺めていれば意外と気がまぎれる?
↑痛車のオーナーの方とそのご友人がミリタリーファッションでキメていたのが印象的でした。
■土砂降りの中で舞った、ナニャドヤラ&ニコニコ盆踊り
楽しい時間はすぐに過ぎてしまうもの。あっという間に17時20分になってエンディングを迎えたのだが、あいにくの大雨が降ってきて大変なことに……。この日は曇りだったり、日差しが照りつけたり、海霧が発生したりと天気がめまぐるしく変わっていたのだが、最後に一番大変なボスが待ってました。
↑傘を持ってない人の多くは、ブースや堤防の下で雨宿りしていたが、最後までステージ前に残って気合いの入った精鋭もいました。
↑岩手の町会議を支えたボランティア10名を紹介。誘導やブースの案内などで活躍されてました。忘れられない夏の思い出になったはず。
↑出演者挨拶の頃には、トラックから水が滴り落ちるぐらいに雨脚が強まっていた。屋根のある移動式トラックがメインのステージでよかった……。
↑今年は、めろちんさん振り付けの“ニコニコ盆踊り”をみんなで踊ってシメというのが恒例になる。そのために写真のようにレッスンしていたのだが、無情なことに雨がやまない。
↑しかし、ステージの「やっちゃいましょうか?」というかけ声に「イエーイ!」と観客が元気よく応えて踊ることに。中央のやぐらをぐるりと囲み、まずは日本最古の盆踊りともいわれる地元の“ナニャドヤラ”から。
↑続けて、最も新しい“ニコニコ盆踊り”にスイッチ。盆踊りといっても、ニコ動のイベントでよく流れている曲『ぼくとわたしとニコニコ動画』を和風にリミックスしたもの。
↑雨の中でみんなで踊りまくり、テンションが上がりまくったままみなさんとお別れ。洋野町、すごく楽しかったよ!
↑当然のことながら運営もずぶぬれなのですが、なぜかやりきった清々しい顔に!
ニコ動が2006年末に始まってはや6年半。ネットのサービスでありながら、すでに2007年にはユーザーを呼ぶ記者発表会を開催し、2009末~2010年頭には『ニコニコ大会議2009-2010 ニコニコ動画(9)全国ツアー』で全国を回って、多くのユーザーを舞台に上げて、みんなで一体となってステージを楽しんできた。町会議は、その全国ツアーの血を受け継ぐ伝統のイベントだ。
超会議よりも内容が凝縮されているので、会場をすべて回ることもできる。次回は7月27日、香川県琴平町の“こんぴら夏まつり”との併催なので、開催地の近県に住んでいる人なら、何としても予定をあけて行ってみるべし。ネットで見るとの、リアルで触れ合うのとでは結構、ニコ動の印象も変わって来ますよ。
↑有名ユーザーによっては、空いてる時間にいっしょに写真やサインをしてもらえるチャンスもありますよん!
■関連サイト
ニコニコ町会議 全国ツアー2013
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