去る3月9日と10日、福島県会津若松市の歴史的なシンボルである、鶴ヶ城(会津若松城)を舞台に、プロジェクションマッピングのイベント「はるか」が開催された。鶴ヶ城の純白の天守閣をキャンバスにして、桜の花をモチーフにした壮大な映像が投影され、観衆を魅了した。プロジェクションマッピングとは、建物などの巨大な壁面に映像を投影するメディア表現で、都市内に実現する新たなスペクタクルとして、世界的に注目されている。
「はるか」は1回5分の上映で、会場に入れるのは1回1000人。もともとは9日と10日にそれぞれ3回ずつの上映予定だったが、あまりの人気ぶりに10日は上映回数を6回へと倍増。それでも会場に入れない人が続出したほどの人気ぶりだった。地元福島県を中心に東北各地から集まった観衆が、感動の体験を共有した。
今回のプロジェクションマッピングは、東日本大震災の復興への祈りを込めたもので、福島県に贈られた新種の桜である「はるか」をシンボルとして定着させようという取り組みの一環として、開催されたものだ。このイベントを手がけたのは、NHKエンタープライズのチーフプロデューサー・森内大輔氏。昨年9月に、東京駅丸の内駅舎保存・復元工事の完成記念として開催された、日本最大規模のプロジェクションマッピング「TOKYO STATION VISION」を率いた人物。同氏が今回の映像制作に起用したのは、オーディオ、ヴィジュアル、テクノロジーなど各分野で世界的に活躍するアーティストの集合体「JKD Collective」だ。
鶴ヶ城天守閣の東と南の2つの側面に、光束2万ルーメンという極めて明るいプロジェクターを8基用いて、鮮やかな映像が照らし出された。森内氏によれば、ミュージックビデオでの制作経験と多くの3D CG制作の実績から、さまざまな世代の観衆に感動してもらえる演出を期待してJKD Collectiveを起用したという。建造物の2側面を用いた立体的な映像感覚は、見事な出来映えだった。ちなみにこの映像の制作現場では、Macが大いに活躍したとか。
上演時間5分の映像は、4部構成となっており、福島県や会津の風土をモチーフとした映像詩は最後、NHKの大河ドラマ「八重の桜」のテーマ曲で締めくくられた。ご承知のとおり、「八重の桜」は当地を舞台にしたもの。いまから10年後に各地で花開くであろう、満開の「はるか」の姿が強く印象に残った。その満開の姿は、福島県の子供たちの健やかな成長を願ったものなのだ。
プロジェクションマッピングはヨーロッパを中心に、公共空間を利用して地域の人々の共感を呼ぶメディアアートとして、大きな広がりを見せている。森内氏は、スペクタクル性のある大規模なプロジェクションマッピングを、これから全国に広げて行きたいと考えている。地元の人々が地域を愛し、また、他地域の人々にもその値の魅力を再発見してもらう手段として。
「はるか」の仕掛け人であるNHKエンタープライズのチーフプロデューサー・森内大輔氏 |
鶴ヶ城内に設置された、プロジェクションマッピングのコントロールルーム |
■参照サイト
はるか:鶴ヶ城 プロジェクションマッピング
TOKYO STATION VISION(NHKエンタープライズ)
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