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東南アジア最後のフロンティア、ミャンマーのモバイル通信環境をレポート

2012年12月29日 16時00分更新

文● 中山智  編集●KONOSU

 タイの西側に位置する“ミャンマー”。数年前までは政治体制は軍政主導、経済も鎖国政策をとっていて、ビジネスだけでなく通常の旅行者としても訪問しにくかった謎の国のひとつ。しかし2010年の総選挙をかわきりに、民主化へと大きく路線を変更。経済も開放政策がとられ、現在世界中の企業から“東南アジア最後のフロンティア”と注目される国となっています。

 そんな注目される謎の国に訪問して、現時点ではあまり情報のないデジタルトラベラー的視点からレポートします!

■ビザの申請をしよう

 出発前の準備として、ミャンマー入国のためのビザの申請があります。申請の方法などはミャンマー連邦大使館のサイトに詳しく記載されていますが、ここで注意点が3つほど。

 ひとつは職業証明書の提出。申請時に必要なのですが、フリーランスの場合、それがないため、源泉徴収書のコピーなどを用意する必要があります(私は確定申告のコピーで代用しました)。

 次にビザ代の支払い。窓口では受け付けておらず、銀行振り込みが必要です。ただ、この口座が国外扱いなので、ATMやネット振り込みには非対応。銀行窓口で行なわなければなりません。

 最後は申請から発行までに5営業日ほどかかること。郵送での申請だとさらに時間がかかるので、余裕を持って申請したいところです。

 ちなみに、これらの問題点は日本で申請する場合のみ。バンコク(タイ)のミャンマー大使館で行なう際には職業証明書は必要なく、しかも午前中に申請すればその日の午後に即日で発行してもらうことも可能です。旅慣れている人には、海外での申請のほうが手軽かもしれません。

ミャンマーモバイル通信
↑東品川のミャンマー大使館でビザの申請。ライターやジャーナリストは、場合によっては“記事にしない”という誓約書が必要になる場合も。

■通信環境の確保はどうする?

 海外旅行でのモバイル通信環境としては、“日本キャリアの定額ローミング”、“モバイルルーターのレンタル”、“現地SIMの調達”と3つの方法があります。
 しかしミャンマーの場合、ローミングサービスは、ドコモ、au、ソフトバンクともに通話のみで、定額サービスどころかデータ通信自体を扱っていません。また、現地SIMはネットで調べてもあまり情報がないのです。

 そこで今回はテレコムスクエアのモバイルルーターをレンタル。このレンタル自体も2012年10月からスタートしたばかりで、レンタル料は1日1500円です。公式サイトからあらかじめ予約しておき、成田空港で端末をピックアップしてから出発しました。

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↑成田空港のテレコムスクエアのカウンター。ミャンマー用ルーターは数が少ないので、予約をしておいたほうが確実です。

■ヤンゴン国際空港に到着!

 バンコクを経由して、ヤンゴン国際航空に到着。規模は日本の地方空港なみなんですが、2007年にターミナルが新しくなったばかりなので、明るくてキレイ。

ミャンマーモバイル通信
↑最近はどこの空港もターミナルが近代的で、以前の薄暗い東南アジアらしい空港が少なくなりました。旅人としてはちょっと寂しい気もします。

 さて、入国手続きを終え、早速モバイルルーターで通信速度を計測してみましょう。接続は3Gです(ちなみに今回はヤンゴン市内のみの滞在でしたが、繁華街など都市部はほとんど3Gでの接続でした)。

 ヤンゴン国際空港(モバイルルーター)
 1回目 下り1.7Mbps/上り1.13Mbps
 2回目 下り1.66Mbps/上り1.12Mbps
 3回目 下り1.7Mbps/上り1.13Mbps


 上下とも1Mbps越えの速度。3G接続ならまずますといったところです。

 計測を終え、到着ロビーを見まわしてみると、なにやら携帯電話関係らしきカウンター。近づいてみたところ、現地SIMのレンタルサービスでした!

ミャンマーモバイル通信
↑到着ロビーにある現地SIMのレンタルカウンター。カウンターは英語が通じました。

 カウンターでレンタルしているのは、米ドルで1日2ドル(約170円)の“通話用SIM”と、1日4ドル(約340円)の“データ用SIM”、の2種類。さらに、デポジットとして100ドル(約8500円)を預ける必要がありますが、これはSIMの返却時に返金してもらえます。ただ、100ドル札だと嫌がられるので、20ドル紙幣などで用意しておいたほうがいいかも。SIMは通常サイズと、microSIMの2種類。nanoSIMはまだなので、SIMフリーのiPhone5ユーザーは利用できない可能性が大です。

ミャンマーモバイル通信
↑海外版のGALAXY SⅢで使うので、microSIMを借りましたが、通常サイズをカットしただけのようです。

 先ほどのレンタル代は、純粋にSIMのレンタル代。このほか通話や通信を使う場合には利用料をチャージする必要があります。こちらは現地通貨単位となる“チャット”で支払います。このチャージは同じ空港カウンターで行なえるほか、街中のケータイショップでも可能です。通信費はカウンターの説明では1分2チャット(約0.2円)。今回は3泊4日の滞在で、1万チャット(約1000円)をチャージしたんですが、最終的に500チャット(約500円)ほどチャージが残りました。

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↑通信設定はAPNの“mptnet”のみ。設定やチャージはすべて店員さんがやってくれるので、あらかじめ設定で端末の言語を英語にしておくと作業がスムーズ。
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↑通話アプリから“*124#”で、残高が確認できる。

 試しに現地SIMからも通信速度を計測したら、ちょっとおもしろい結果に。

 ヤンゴン国際空港(現地SIM)
 1回目 下り0.25Mbps/上り0.25Mbps
 2回目 下り0.25Mbps/上り0.26Mbps
 3回目 下り0.25Mbps/上り0.25Mbps

 1度だけ0.26Mbpsという数値でほかは全部同じ。このあと都心部でも同様に計測を行なったんですが、ほぼ同じ結果。どうやら0.25Mbpsあたりで速度制限をしているようです。ミャンマーのケータイキャリアは国営のMPT(ミャンマー郵電公社)の1社のみなので、テレコムスクエアで使用しているSIMも同じMPTのものなんですが、なぜかそちらは速度制限がないようです。

 0.25Mbpsあれば、スマホからのテキストベースでの通信には問題ありませんが、大量の写真や仕事でPCも使うといった場合には遅い。さらに、このあとホテルや飲食店が提供している無線LANにも接続してみあましたが、こちらも軒並み1Mbps以下の速度。今回の訪問で最も高速で通信できたのが、テレコムスクエアのモバイルルーター。さらに現地では停電の頻度が高いとのことなので、ビジネスでミャンマーを訪れるなら、2012年末の時点ではモバイルルーターをレンタルしていくのがベストのようですね。

■ヤンゴン最大の観光スポット“シュエダゴン・パヤー”

 通信環境をゲットしたので、市内の観光からスタート。まずは市内で最大の観光スポット“シュエダゴン・パヤー”へ。ミャンマーでもっとも有名な寺院のひとつで、ミャンマー人にとっても一生に一度は訪れたい寺院。外国人だけでなく大勢の観光客で賑わっていました。

ミャンマーモバイル通信
↑金箔が貼られた仏塔は約100メートル。頭頂部には5451個のダイヤモンドがちりばめられているとのこと。

 シュエダゴン・パヤーでの、モバイルルーター通信速度は下記のとおり。

 シュエダゴン・パヤー(モバイルルーター)
 1回目 下り1.21Mbps/上り0.51Mbps
 2回目 下り1.28Mbps/上り0.82Mbps
 3回目 下り1.31Mbps/上り0.71Mbps

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↑仏教国らしく、みな熱心にお祈りしていました。ミャンマー人は信心深く、人当たりもいいので旅がしやすいです。
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↑どうやら基本的にピカピカが好きらしく、光背に電飾を使った仏像も多いんですよ。日本人的な感覚では、若干ありがたみがないような気もしますが。

 現地からiPhoneの『ニコニコ生放送』アプリを使って、生中継もしてみました。画質はあまり良くなかったけど、中継自体は問題なし。中国のようにTwitterやFacebook、YouTubeなどが遮断されているとうことはなさそうです。ただ、なぜかライブドアだけアクセスできませんでした。また、一部のiPhone、Androidアプリもダウンロードできなかったので、必要な設定などは日本で行なっておいたほうが良さそうです。

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↑現地から生中継。カメラ移動時のブロックノイズなどはあるものの、3Gでの通信ならまずまずの画質でした。
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↑街中でも出家して修行中のお坊さんをよく見かけます。

■ケータイショップはたくさんあれど、SIMは高価

 次に街中を散策してみることに。ダウンタンでは通常のショップのほか、露店や屋台も多く、非常に活気があり景気が良い感じ。さらに街中にはケータイショップが多くあり、スマホやタブレットもほかの東南アジア各国と同じく多数のラインナップが揃っています。

ミャンマーモバイル通信
↑ケータイ端末を扱ったショップのひとつ。こういった店は中古端末が多い。
ミャンマーモバイル通信
↑こちらは並行輸入品の新品などを取り扱っている。最新のWindowsPhone8も!
ミャンマーモバイル通信
↑人気はサムスンのGALAXYシリーズ。日本未発売の端末も数多く売られています。

 これだけショップがあるのだから、使っている人も多いのかと思いきや、実は街中ではまだあまり見かけないんですよね。スマホだけでなくフィーチャーフォンを使っている人も少ない。ちなみに現地の日本食レストランでは、10人の現地スタッフのうち、ケータイを持っているのは1人だけでした。

 これは現地のケータイショップ店員の話によると、現地のSIMの契約がいまだに高額なため。一般的なGSM(2G)の通話用プリペイドSIMを契約するのに約2万円かかり、下手するとエントリーモデルのスマホのほうが安いくらい。そのためスマホは無線LANで運用して、SIMは挿していないというユーザーもいるんだそうです。

 この高いSIMなんですが、2005年頃など約15万円程度していたそうで、少しずつ価格改訂が行なわれて現在の価格。SIMが高いので、空港でのレンタルSIMもデポジットを徴収されるんですね。

 これだけSIMが高いと、ほかの国ではあまり見かけない(または見かけなくなった)商売があります。それが“公衆電話屋”。内容はいたってシンプルで、露店や店先に電話機を設置しておいて、通話時間で料金を徴収するというもの。

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↑街中のいたるところで見かける、公衆電話屋。店先に設置して、副業感覚で行なうところも。

 使用する電話は固定回線のほか、一見すると家庭用の電話機だが実はSIMが刺さり、単体で通話できるウィルコムの『イエデンワ』のような端末を使っている露店も多かったです。

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↑SIMを挿して使う固定電話タイプの端末も、モバイルショップで販売されている。

■さてさて、気になる食事は……油まみれです!!

 旅行先で気になるのが食事。ミャンマーの主食は日本と同じ米。そして副食としてポピュラーなのが“ミャンマーカレー”だ。便宜上カレーと名前がついているが、水分が飛ぶまで煮込み、表面が油で覆われている“油戻し煮”という調理方法の料理。

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↑材料ごとに違ったカレーが並んでおり、指さしで選べばオーケー。辛さは種類によって違っているが、辛くないものが多い。
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↑選んだカレーと野菜の炒め物のほか、ご飯(おかわり自由)と生野菜の付け合わせとスープがサービスでつく。これで700チャット(約70円)。
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↑豚肉のカレー。写真のとおり油が多い。肉も脂身が多い。油好きの私でも、毎食はキツイ(笑)。

 ほかの国のように、マクドナルドやケンタッキーはなく、フランチャイズのファーストフードはあまり見かけない。とはいえ、ヤンゴン市内なら中華料理や日本食のレストランも多いので、ミャンマー料理の油がきつくなってきても安心。

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↑屋台の串揚げ屋。中央が油で、モツ串を自分で揚げて食べる方式。現地では人気でした。
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↑串焼き屋でミャンマービールの生。スッキリとした味で、グイグイ飲めちゃいます。串焼き9本と生ビール3杯で5800チャット(約580円)でした。

■ミャンマーのファッションタウン

 続いて行ってみたのが、ヤンゴンの定番買い物スポット“ボーヂョーアウンサン・マーケット”。生鮮食品などはなく、観光客向けのお土産などを扱ったショップが集まっています。

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↑これでもかと商品をならべる店の作りは、アジアの市場らしい風景。
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↑ミャンマーの民族衣装“ロンジー”。1枚布の巻スカートですが、いろいろな柄があってカワイイです。

 ボーヂョーアウンサン・マーケットでの通信速度は下記のとおり。屋内の混み合った市場なので、たまに通信速度が低下することもありました。

 ボーヂョーアウンサン・マーケット(モバイルルーター)
 1回目 下り1.52Mbps/上り0.78Mbps
 2回目 下り1.12Mbps/上り0.61Mbps
 3回目 下り1.54Mbps/上り1.35Mbps

 ミャンマーの人たちは、洋服も多いですが、男女ともに民族衣装の“ロンジー”を着ている人もよく見かけます。訪れた12月は乾期だったので、30度近い気温でも快適でしたが、雨期の湿気の多いシーズンなら、ロンジースタイルのほうが過ごしやすいかもしれません。

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↑バスを待っている女性を撮影させてもらいました。トップはTシャツだったり、民族衣装だったりイロイロ。
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↑男性もロンジーの人が多い。ほかの国でも似たような民族衣装はありますが、ここまで着用している人が多いのも珍しい。
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↑髪を染めている若者もチラホラと。経済開放の流れでしょうか。

 また、ミャンマー独自の風習として、女性や子どもは顔に“タナカ”と呼ばれるお化粧をしています。これは木すり下ろして作る粉で、日差しから肌を守る効果があるとのこと。

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↑女性のほとんどが、ほっぺたやおでこにタナカを塗っています。
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↑子どもも顔中にタナカを塗っています。成人男性はあまり使わないようです。

■不思議な国ミャンマー

 今回はヤンゴン市内だけの訪問となりましたが、それでもほかの国では見られない光景がたくさん。見れば見るほど独特な文化を感じさせる国です。

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↑なぜかカレンダーが縦書き。横書きに慣れているとわかりにくい……。
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↑日本のバスが中古で使われており、これは私の地元の神奈中バス。ドアは右側に改造されている。そしてなぜか運転手がピース。
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↑これはもとが江ノ電バス。“非常口”の表示はそのまま使われている。
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↑ミャンマーの男性の嗜好品として、メジャーなのが噛みタバコ。そのため歯が真っ赤な人が多い。
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↑ほかの東南アジア各国と違い、バイクをまったく見かけず、バイクタクシーもいない。かわりに自転車を使った“サイカー”が活躍。
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↑お土産としてよく見かけるのが、スーチーさんグッズ。Tシャツやケータイストラップも見かけました。

 以前は両替もままならず、外国人が行ける場所も制限されていましたが、ヤンゴン市内に関しては、ほかの東南アジア諸国と同じような感覚で旅ができました。地方にはカンボジアのアンコール遺跡なみの古い寺院群などもあり、観光地としても高いポテンシャルを秘めているミャンマー。まだまだ見たりないところもあるので、私的にはこれからも注目の国です!!

■関連サイト
ミャンマー連邦共和国大使館 
テレコムスクエア 

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