動画コミュニティーサービスの“niconico”では、今年7月から日本各地のお祭りとコラボするイベント“ニコニコ町会議”を実施していた。今年4月に幕張メッセを貸し切って開いた大規模フェス“ニコニコ超会議”に来られなかった地方の“ニコ厨”(ニコ動ファン)のために、ニコ動の有名ユーザーを呼んでライブや出し物をする内容だ。
鳥取の八頭町を頭に、佐賀県の唐津市呼子町、北海道の長万部町、福島県の三春町、東京の八丈島(八丈町)、島根県の松江市向島町──という、名前に“町が”付く6ヵ所で開催。無料ということもあって各地で大盛況を収めて、合計で4万人近くの来場者を集めた。
その7会場目となる“ニコニコ町会議 in 名古屋・栄”が18日、愛知県名古屋市にて開催された。過去の6会場をすべて取材してレポートしてきた週刊アスキーですから、名古屋に行かないという選択肢はない! というわけで今回もがっつりレポートしていきます。
↑名古屋市長の河村たかし氏もオープニングに出演した“ニコニコ町会議 in 栄”。来場者はリアルで1万人、ネットで30万人という過去最高の数を記録した。
↑今回の会場は名古屋テレビ塔の真下とその周辺。繁華街近くで、めちゃくちゃアクセスしやすい場所でした。
■ハンズの“ニコ厨”が望んで実現した町会議
“町会議 in 栄”は、さまざまな点で異色の町会議だった。会場となった名古屋テレビ塔があるのは名古屋市中区錦で、名前に“町”が付かない。さらに併催となる地元のお祭りも特にない。筆者としては、町会議を開く条件がいくつか満たしてないのに、地方でうけたからさらなる集客を狙って安易に都市部に進出したのか? と勘ぐってしまったが、取材を進めるとひとりのキーパーソンが浮き上がってきた。
実は、テレビ塔の近くにある“東急ハンズANNEX店”では11月15日に、“ニコニコ本社出張所 in 名古屋アネックス”というコーナーをオープンさせた。ぬいぐるみやストラップなどの関連グッズを扱うだけでなく、ニコニコ生放送できるブースも用意するという力の入れよう。今のところ終了期限を考えていない常設として展開していく予定だ。
↑東急ハンズANNEX店では、5階に“ニコニコ本社出張所 in 名古屋アネックス”を用意している。
このコーナーのオープンに尽力したのが、東急ハンズのとある“ニコ厨”の方だった。現在53歳で、ニコ動は子供が観ていたのがきっかけで知ったという。“踊ってみた”のカテゴリーで名古屋の女の子が出ていることに気づき、「疲れた仕事の癒し」として応援しているうちにハマっていく。そうした趣味からニコ動にグッズがあることを知り、今年の夏にニコニコ本社を訪れてコラボの話が盛り上がり、東急ハンズのコーナーが実現した。
さらに「どうせやるなら……」とイベントの開催も企画。「商店街のみんなを巻き込むから」と熱意でニコ動の運営を口説き落として、スポンサー集めに奔走したり、40名以上のボランティアスタッフを呼んだりと尽力して、町会議 in 栄が実現したわけだ。ひとりの“好き”から始まって、ここまで大規模なイベントにつながるって、すごくニコ動らしくていいですよね。
↑ステージのバックパネルを見ると、左右にスポンサーの名前がずらり。もちろん会場となるテレビ塔にも交渉したという。
↑左は会場前の円陣で、「今日は1日がんばろうみゃー!!」、「みゃー!!」のかけ声で気合いを入れていた。スタッフの人数も機材の多さも過去最高という、かつてない力の入れようだった。お客さんも気合いが入っていて、イベントは午後からというのに午前中から多くの人が集まっていた。
↑13時にオープニングがスタート! 司会は左が“生主”(ユーザー生放送の提供者)で有名な“百花繚乱さん”、右がニワンゴの杉本社長。
↑ユーザーからの出演者は、総勢14人と大所帯!
↑特別ゲストとして、名古屋市長の河村たかし氏が挨拶。脳波を読み取ってピコピコ動くアクセサリー『necomimi』を頭に付けて登場し、いきなりアカペラで“燃えよドラゴンズ!”の“歌ってみた”を披露して会場の喝采を浴びていた。
↑ステージ前も各ブースも通路も、とにかく人、人、人……。めちゃくちゃお客さんが多いのが印象的だった。
■圧巻すぎる! 200人と一緒に“踊ってみた”
町会議の出し物は、メインステージとブース展示の2つに大きく分けられる。ステージでは、“歌ってみた”や“踊ってみた”、地元のPRを実施していた。
↑“歌ってみた”では男性歌い手の代表格、“ぽこた”さんが出演。伸びやかな美声でGACKTさんの『12月のLove song』と、12月発売するCDから『ドラマチック夢物語』を歌い上げる。
↑同じく男性歌い手の“新社会人”さんも、『心臓デモクラシー』と『からくりピエロ』を熱唱。ちなみにお名前は“新社会人”ですが、実際は5年目だそうです。
↑“踊ってみた”からは、写真左から、足太ぺんたさん、わたさん、にゃもさんという地元の3人が出演。
↑SmileRさんのボーカロイド曲『Melody Line』で、息ピッタリのコンビネーションで会場を大いに沸かせる。
↑希望者に集まってもらい、振り付けを直接教えてもらえる“踊ってみたレッスン”も夕方から実施していた。その数、何と200名ほど! ほかの町会議でも同じレッスンをやっていたが、これほど大規模になったのは初めて。今回の課題曲は『トゥインクル』。
↑その後、ステージでみんなで発表した。あまりに参加者が多くて、ステージ前に集まった人に5メートルほど後ろに動いてもらうことに……。それでもかなり狭そうでした。
↑踊り手3人は、女性ファンも非常に多くて黄色い歓声を集めてました。ちなみに名古屋の“踊ってみた”といえば、このテレビ塔からすこし離れた場所にある白川公園で撮影されることが多いです。東京の“踊ってみた”における代々木公園みたいな“聖地”ですね。
↑来場者から抽選で選ばれた人がステージに立てる恒例のカラオケ大会も大人気。抽選を閉め切ってからも「どこで申し込めますか?」という質問が何度も聞かれていた。
■人が集まりすぎて動けない ゲーム実況が大盛況
ブース展示で一番お客さんを集めていたのは、“ゲーム実況”だった。ゲームを遊んでる様子を観ながら、実況主の雑談も楽しめるという一石二鳥なジャンルで、ニコニコ生放送でも人気が高い。放送者は圧倒的に男性で、複数人のことも多い。その掛け合いトークやなれ合いな雰囲気がおもしろくて、若い女性ファンも大勢付いている。
……というのは何となく頭で知っていたんですが、町会議 in 栄のゲーム実況ブース前はめちゃくちゃ大盛況! あまりに集まりすぎて前のほうの方に座っていただくという自体に。そのほかのブースも行列が伸びすぎて、早々に受付を終了するところも出ていた。
↑こんな感じで人の輪が何重にもできてました。
↑実況主は“M.S.S Project”で、写真左からKIKKUN-MK-IIさん、あろまほっとさん、FB777さん。11月8日に発売されたばかりの『Halo4』のほか、『熱血高校ドッジボール部』と『ぷよぷよ!!』をプレー。
↑食べ物系の“ニコニコ超フード”では、町会議の定番、百花繚乱さんが自ら焼いたたこ焼きや、怪しい色のハーブティー“ニコ動オリジナルポーション”などが無料配布されていた。
↑輪ゴム銃でコップを倒すと景品がもらえる射的コーナーも大人気。絵師の五月病マリオさんによる似顔絵コーナーでは、100人ほどがイラストを描いてもらっていた。
↑鳥取の町会議でも出演していた大道芸人で生主の“うー”さん。初音ミクの巨大バルーンをつくったり、筒の上に置いた板に立ってバランスをとりながらナイフをジャグリングするという離れ業で喝采を集める。
↑“つくってみた”からは、ニコニコ手芸部のミツさんが出演。男性も含めて20人ほどと、クリスマス版テレビちゃんをつくっていた。
↑地元のニコ動ユーザーが出展できるユーザーマーケットでは、ガンランスやザクマシンガンのつくってみたで知られる庄松屋さんと、ボーカロイド曲『よっこらせっくす』の動画イラストでも有名なブラボー山田さんが参加していた。
↑お参りに来る人々を生放送する“ニコニコカー神社”や物販もなが~い行列が……。
■iPad miniが当たる抽選会に会場が大いに沸く!
↑日が落ちてきてからは、地元PRのコーナーが始まった。助っ人として、名古屋のおもてなし名人“ヨコネエ”こと横田佳代子さんもステージに姿を現わした。
↑桶狭間古戦場保存会のマスコット“おけわんこ”、名古屋グランパスの“グランパスくん”などがステージで踊りまくる!
↑地元商店街の協力で、物販や会場周辺の屋台で何かを購入した人対象に、iPad miniやiPod touch、商品券などが当たる抽選会を実施。見事、iPad miniを引き当てた2名の男性には、会場から羨望の声が上がっていた。
↑楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。踊ってみたの発表のあとには、出演者が全員ステージに上がってエンディング。わたさんは「地元の名古屋でこれだけの人が、今自分を見てると思うと心臓が口から飛び出そうですけど、本当に今日は宇宙一楽しい時間をありがとうございました」とコメント。
↑ニコ動ユーザーから募った8名のボランティアも挨拶。口々にお礼や楽しさを語っていた。
↑最後にみんなでヒャダインさんの楽曲『ぼくとわたしとニコニコ動画』を合唱……のはずが、歌詞がモニターに出てこなかったのか、何となく寸劇をやったり踊ったりという出し物にスイッチ。
↑その後、高校や専門学校、大学とコラボするイベント“ニコニコ文化祭”の青春サポーターである、ドグマ風見さん、Hamar@キラー、ふでぱさんの3名が登場。25日に開催したイベントをアピール……するついでにドグマ風見さんがぽこたさんに熱い“口撃”をかましたりと大惨事に。
↑鳴り止まない拍手の中、およそ5時間にわたったイベントは幕をおろした。
振り返ってみると町会議 in 栄は、ものすごい数の“ニコ厨”を集めた大成功のイベントだった。興味深かったのは、各地の町会議で出演した有名ユーザーも自腹を切ってわざわざ足を運んでいたということ。そういえばニコニコ超会議のキャッチコピーは、“集まれば、強くなる”。超会議から派生した町会議も、そのDNAをきちんと受け継いでいるのかもしれない。
仕掛人である東急ハンズの“ニコ厨”さんは、「本当にこれだけ来てくれてうれしい。商売もなんでもそうなんですけど、お客さんのよろこんでいる顔を見るのがうれしい」とよろこんでいた。
↑ジョジョの恰好をした“爆笑コメディアンズ”の秀作さん、声まねで有名な生主のナオキ兄さん、ミスニコ生2011を受賞した生主のゆうこりんさんなどが自腹で来場。
↑さらに八丈島の町会議にいた亀田大毅のそっくりさん、亀田大吉さんや、佐賀の会場で注目を集めていたオ○ーナのコスプレをした方なども姿を見せる。勝手に“町会議オールスター”な状態になっているのがおもしろい。
↑お客さんに捕まって声をかけられたり、写真をいっしょに撮ってもらったりと、ステージやブースとは関係ない場所でも笑顔が生まれていたのだ。
町会議は、まず自治体が組んでくれるのかという手探りの状態から始まったが、回を重ねるごとに若者が集まるということが分かり、今や引く手数多の状態にまで上り詰めた。
この勢いのまま来年の町会議も各地で開催されるのか? やるにしても当然ニコ動だから、同じ内容ではなく“斜め上”の新しい要素を入れてくれるはず。会場にいるだけでもいくつも発見があるため、地方在住の方は近くで開催されたあかつきには、ぜひ訪れてみよう。
■関連サイト
ニコニコ町会議 全国ツアー2012|niconico
ニコニコ町会議 in 名古屋・栄~本社出張祭~(ニコニコ生放送)
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります