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【BUILDレポートDay1】Windows8は時代に即した新しい価値を提供できるか?【動画でチェック!】

2011年09月15日 02時45分更新

BUILD

↑BUILDの会場を埋め尽くす開発者たち。新時代のWindows OS登場に期待をよせる彼らにマイクロソフトが出す答えとは?

「Windows? XPで十分じゃない。Vistaはもとより、7もいらないよ」――そんな声を聞くことがある背景には、Windowsが徐々に時代にそぐわないOSになってきたことがあるのだと思う。実際にはXPよりも7のほうが、今どきのパソコンならば、より機敏に動くものだ。GPUをうまく利用し、システム全体をコンパクトにまとめる努力をした結果、Windows7は歴代のWindowsで最も高性能なOSになった。

 しかし、時代は変化している。従来路線に軌道修正を加えながら、より良いWindowsをつくる。それだけでは、時代に即した新しい価値を提供できなくなってきたのだ。タッチパネルを使ったユーザーインターフェースは進化し、スマートフォンがクラウドの力を借りて大きな価値を提供する。今や、個人にいちばん身近なコンピューターは、“パーソナル”コンピューターではなく、スマートフォンなのだ。

 この時代、部分改良と建て増しで乗り切ってきたWindowsも、そろそろまったく新しいことに挑戦しなければならないタイミングに来ていたということだ。Windows & Windows Live部門プレジデントのスティーブン・シノフスキー氏は、世界中から駆けつけた5000人の開発者の前で「Windowsとは何か。どうあるべきなのか。もう一度考えなおそう」と話した。

「Windows8は、Windows7以上でなければならない。7で動くアプリケーションは、すべて8でも動く。まったく同じことが、より高速、より便利に動作する。Windows8は7の改良版だ。それが大前提としてある(シノフスキー氏)」

 しかし、世の中を見回すとクラウドコンピューティングの勃興によって、コンピューターの利用スタイルは大きく変化してきた。常にネットワークに接続され、身に付けるように持ち歩く機器でネットワークサービスを日常的に使い、コンピューターを使う場所も机の上から解放され、高い携帯性を求められるようになってきている。

 マイクロソフトは、時代の変化に合わせてWindowsを、再び組立て直す必要に迫れている。このため、従来ユーザーを満足させる“より進んだWindows7”としたうえで、新時代にふさわしいシステム構成と、最新デバイスや技術トレンドに合わせた、新設計のユーザーインターフェースをWindows8に追加した。それが“Metroスタイル”と言われる、新しいタイプのアプリケーションだ。

 Metroスタイルのアプリケーションが、どのように動くかは、別記事(関連記事)でも紹介した動画などからもよくわかるだろう。ものすごく簡単に言えば、スマートフォンやタブレット端末に見られる、フルスクリーン型でGPUを多用したアニメーションによる、タッチパネルを意識したユーザーインターフェースだ。

 筆者も滞在先のホテルで簡単に使ってみた様子を収録してみたので、こちらの動画を見てほしい。通常の画像をピックアップするダイアログを呼び出すだけで、Metroスタイルの操作画面が現われる。また、SNS統合も進んでいて、Facebookに接続する“Socialite”というプラグインをとおし、Facebookのアルバム内にある写真を手元にあるかのように操作しているところを見ることができるはずだ。

Windows8


 

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↑試用に使った端末とスペック。

 従来のデスクトップをメタファーとした操作画面は、”Metroスタイルアプリケーションのひとつ”であるかのように見える。まるで2つのOSがシームレスに切り替わりながら動いているように見えるだろうが、実は内部的にもまさにそのとおり。

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 OSの核となる部分は共有しているが、アプリケーションを動作させる、“ランタイム”と言われる部分が新規に再構築されており、Metroスタイルのアプリケーションは従来のアプリケーションとは別の世界で動く。

 このようなデスクトップとMetroスタイルの世界の混在が、いまひとつシックリこないのでは?という意見もあるだろう。しかし、試用機を使っている限り、そこに大きな混乱はない。Metroスタイルのアプリケーションは、クラウドを中心にしてコンテンツを受け身で楽しみつつ、SNSをとおしてコミュニケーションに参加する。そんなスマートフォン的な使い方を、パソコンらしいパワフルさで受け止めているが、前向きに文書を作成したり、複數のデータを机の上に広げ、適材適所のアプリケーションを使いこなす使い方には、デスクトップのほうがいい。

 Windows8は、それぞれの方向に改良を加え、2つの世界をスムースに行き来できる。まだ整合性が合わないところ、違和感の残るところは存在するが、一貫したポリシーと目標をもって来年に向けての開発を行なっているので、まだまだ熟成が進んでいくはずだ。

 さて、Windows8に関しては、まだまだたくさんの情報があるので、ここではQ&Aのような形で、初日に取材した様子をお伝えすることにしたい。


●Windows8を試すことはできるの?


 前回の記事に挙げたように、開発者向けプレビュー版が、Windows Dev Centerというサイト(関連サイト)で公開される。開発者向けプレビュー版なので、まだ品質はよくないうえ、ユーザーインターフェースもファイナルではない。デモで行なわれた機能のうち、入っていないものも多い。あくまでアプリケーション開発の元にするバージョンだが、Windows8のエッセンスぐらいは感じられるかもしれない。

 たとえばメール、カレンダー、ピープル、フォトなどのMetroスタイルアプリケーションは、開発者向けプレビュー版には含まれておらず、スタートスクリーンの拡大縮小などもない。そうした点を承知で余っているパソコンにインストールしたいのであれば、アクティベーションなしで自由にインストールできる。


●従来システムに加えてMetroスタイルが増えてるなら、動作は重くなる?


 いや、むしろ軽くなっている。

 Windows7の開発者向けプレビュー版は、それ以前のWindows Vistaに比べて大幅に軽くなったと言われたが、それでも起動直後のメモリー専有量は540MBあり、34本のプロセスが起動していた。現在のWindows7 SP1では、これが404MB、32本に削減されている。

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 ところがWindows8は開発途上の現段階で、すでに281MB、29本に減らされた。もちろん、必要なサービスが呼び出された場合には、後からメモリーにロードされることもあるだろう。とはいえ、まだまだ軽量化は進むようだ。Metroスタイルをサポートする、Windowsランタイム(WinRT)と呼ばれるパートがまるまる増えている中でのこの数字には驚き。

 さらに、Metroスタイルのアプリケーションは、タッチパネルでの操作を重視して、ユーザーの操作に対するレスポンスを最優先するようシステムが組まれているという。アニメーションなどグラフィックス要素には、全面的にGPUが活用されており、まさに“スマートフォンのシステムを、パソコンの強大なパワーで動かしたらどうなる?”という興味に対する答えを用意してくれるはずだ。


●ARMプロセッサー採用機はどんな感じ?


 ARMを採用したWindows8マシンは、クアルコムのSnapDragon、NVIDIAのTegra 3、TIのOMAPを採用したタブレット型端末が並べられ、それぞれデモで動かしていた。クアルコムのSnapDragonを採用した試作機には、LTEをサポートするGobi(通信モジュール)の新バージョンが搭載されているという。

 基調講演会場などでは、少なくともタッチ操作に対してレスポンスよく動いているように見えたが、実は実物はまだ報道陣も触れていない。2日目にはこれらを展示するショーケースが開かれるようなので、そこで触れることができるかもしれない。

 技術カンファレンスなどでも、まだARMマシン上で従来型のWin32アプリケーションが動くのか?(ARMマシンでOfficeが動いているところを以前にデモしているので、“動くはず”ではある)とか、デスクトップアプリケーションのARM版を積極的に増やす意向なのか? あるいは、ARM版WindowsでX86のコードは動作するのか?(消費電力の問題があるとシノフスキーが話していたので、おそらくさせない)など、よくわからない部分はたくさんある。

 ただ、おそらくARM版Windowsは、Metroスタイルアプリケーション中心に使うタイプの端末がメインのターゲットになるはず。タブレット型のシンプル端末が中心になるなら、クリエイティブ作業がメインとなるデスクトップは重視しなくていいのではないだろうか。

 それよりなにより、SnapDragon搭載機を使った、携帯電話ライクな“ネットワークにつながっていながら省電力”という動作を、Windowsがサポートしたことは興味深い。これはすなわち、スマートフォンと同じように待機中もずっとネットワークにつながっている状態を保つ、そんな使い方をWindows8が想定しているということ。

 どんなARM搭載パソコンが生まれてくるのか、今から楽しみだ。


●バッテリー消費はどうなるのか?


 従来のデスクトップアプリケーションも含め、そもそもがコンパクトで高性能になっており、省電力化は進んでいくだろうが、興味深いのは、やはりMetroスタイルアプリケーションに追加された新しいアプリケーションの動作状態。

 Metroスタイルアプリケーションには、“Saspended”というステータスが追加された。Metroスタイルでは必ずアプリケーションが全画面で動作するので、裏にまわったときは一時停止させておけば、バッテリーをアプリケーションが消費しなくなる。

 このような工夫をしているため、たとえばARM端末でMetroスタイルでしか使わないといった場合には、スマートフォンや巷のタブレット型端末と同等の電力消費に抑えることができそうだ。


●画面解像度が変わるとどう変わる?


 Windows8は16:9の画面サイズしかサポートしないという話もあったが、そんなことはない。最低限の解像度は1024×768ピクセル、いわゆるXGA以上なら大丈夫。16:10の画面、たとえば1280×800ピクセルといった解像度の場合は、上下に黒い帯が出てしまうそうだが、4:3や16:9の画面ならば黒帯は出ない。

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 また、Metroスタイルのアプリケーション向け部品は、ほとんどがベクターグラフィックスでつくられており、解像度が高まれば高まるほど、高精細で美しい表示になっていく。ビットマップ表示の部品も3種類の解像度をもっているため、世の中にある高精細ディスプレーの能力を生かした表示が期待できる。

 マイクロソフトは液晶解像度の高さを生かした、美しい表示に力を入れており、Metroスタイルのアプリケーションが増えてくれば、ピクセル密度が200ppiを超えるようなディスプレーに美しい表示を行なえるようになる。


●Windows8はクラウドと密接に関わっている?


 最初のレポートで書いたように、クラウドとWindows8は密接に統合されている。いろいろな機能が、マイクロソフトの“SkyDrive”というネットストレージと連動しており、Windowsの使う各種設定はクラウドに保存され、設定次第でデータもクラウドへと同期される。もちろん、メールやカレンダー、写真などもWindows LiveをはじめとするWindows対応のクラウド型サービスと接続しておけば、その情報も同期される。

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 あるパソコンで変更をかけた内容は、クラウドを通じてほかのパソコンにも反映されるため、これから必要に応じて複數の端末を使い分ける、という使い方が簡単になるはずだ。あるいは出先のパソコンを拝借して、自分のIDを入れると、自宅にある自分のパソコンと同じ設定、同じデータでパソコンを使い、ログアウトするとそこには何も残らない。そんな使い方(ローミング利用)も可能だ。

 自宅ではデスクトップパソコンを使い、出かけるときには書類作成もできるノートパソコン、情報を閲覧するだけのタブレット型など、その場に合わせた使い方を運用の工夫なくスムースに行なえるようになるだろう。

 実はシノフスキーさん、Windows Liveの責任者でもある、というところがポイントではないだろうか。

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●WindowsPhoneとWindows8の関係は?


 Metroスタイル用に開発するアプリケーションは、つくり方を少しばかり工夫して、WindowsPhone用のユーザーインターフェースもデザインすることで、同じ機能をもつWindowsPhone用アプリケーションをつくることもできる(開発ツールが両方のアプリケーションを生成できる)。

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 つまりMetroスタイル向けにつくれば、それを手軽にWindowsPhoneで再利用できるわけだ。さらにWindows Liveや各種クラウド型サービス、SNSとの連動の考え方は、Windows8とWindowsPhoneで共通なため、相互に行き来しながらの使い勝手はとてもよくなるだろう。

 これだけでも十分に連動性が高いと言えるが、WindowsPhoneは7.5の次の次がWindows8をベースに軽量化したものになると言われている。そうなればセキュリティー機能や企業システム向け機能などもWindows8に近くなると予想されるので、両者の一体感はさらに高まっていくだろう。


 と書き連ねているうちに、そろそろ2日目の基調講演の時間が近づいてきたので、今回はここまで。また機会があれば、Windows8がどんな世界観を目指しているのかについて書いてみたい。


●関連サイト
BUILD公式サイト

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