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地方密着型の電力小売りに続くエナジーテック企業の戦略

実績ゼロから変える業界標準 パネイルが目指す電力業界の刷新

2019年04月26日 07時00分更新

人で行なう“安定運用”をシステムに生かす

 独立系新電力のナンバーワンになったものの、パネイルは電力の小売りを目的に設立された会社ではない。圧倒的に古く、利用料も高いという、電力業界のシステムの悪しき風習を変えたいと思ったのが同社の起業のきっかけだ。人ありきで運用されている現在の電力業界の古臭いシステムがビジネスとしての狙いでもある。

 「目を疑うソリューションは結構あった。OSのバージョンや使用している環境に依存しすぎたアプリを使っている電力会社は意外に多い。2010年時点で、配布されたDVDを使ってアプリをインストールしなければ使えないシステムもあった。伝統と実績のあるアプリだから大丈夫という、まったくロジカルでない発想がはびこっていた」(名越氏)

 既存ベンダーが作る基幹システムは、ユーザーの意思決定が介在できない仕組みになっている。自動化したときに、発生した問題に対してベンダーが責任を取りたくないためだ。あくまで、「電力会社の責任で現場の人が操作してください」という仕組みである。システムの提供側と運用側で責任の範囲が明確に分かれているために、自動化が進まなかった。

 「電力業界には、“安定運用”という怖い考え方がある。この四文字熟語で、思考が停止してしまうことが多い。ミスがあったときに、責任を取りたくないので、結局人がダブルチェックをした方がいいという発想になる。さらに悪しき習慣は、働き方でも負のスパイラルを生む。安定運用のため、夜間の作業が必要になるが、それを自社ではせずに、夜間をアウトソーシングをする会社が現れる」(名越氏)

 そもそもマニュアルがあり、アウトソーシングできるのであれば、システム自体で自動化ができるはずである。また、現実的な運用リスクを許容すれば、すべての業務において、システム化、自動化は可能だ。名越氏は、「パネイルは、自らがユーザー企業でもあるので、リスク評価まで含めてシステム化や自動化を実践することができた」と話す。

 「誰かが最新技術を活用した、新しいアプリケーションを提供しなければならないと考えた。電力にもインターネット技術を採用することで、もっと便利で使いやすい仕組みを実現することができる。そのために、まずは自らが電力の小売りを行い、実績を積み重ねた。おかげさまで、実績がないとは言われなくなった」(名越氏)

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