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GeForce RTX 2080 Ti FEとTITAN Vと徹底比較

TITAN RTX検証、32万円超のグラボは本当に最強にして最速なの?

2019年01月17日 17時40分更新

ブーストクロックが高めなのに性能が低い理由は?

 ここまでの検証で高負荷環境になればなるほど既存のGPUとの差が開く傾向が明らかになったが、一部ゲームではフルHDのような低負荷環境ではRTX 2080 Tiのほうが高fpsを出すことも観測された。PUBGのように計測のブレが出やすいテストがあることは確かだが、ゲーム中のクロック推移も検証しなければ正確なところはわからない。

 そこで今回はエアコンの室温を24℃に設定した室内において、アイドル状態から「Battlefield V」を起動し、シングルプレイ状態で約30分放置した時にGPUの温度やクロックがどう推移するかをチェックする。温度計測の推移には「HWiNFO」を使用した。同設計のクーラーを採用したRTX 2080 Ti FEのデータと比較しながら検証しよう。

「Battlefield V」起動~プレイ中におけるGPU温度の推移。

 まずGPU温度だが、TITAN RTXのほうがRTX 2080 Ti FEよりも3℃高い78℃で安定した。TITAN RTXの設計上の限界温度は89℃なのでだいぶ余裕はあるが、今回の計測はバラック組み状態での計測なのでPCケースに入れた場合は十分にケースファンの風をあて、内排気クーラーの排出する熱風をケース外に積極的に追い出すよう務める必要があるだろう。

「Battlefield V」起動~プレイ中におけるGPUクロックの推移。

 続いてクロックだが、ゲーム起動直後のごく短い時間だけTITAN RTXがRTX 2080 Ti FEを上回るが、実際にプレイが始まって間もなくするとRTX 2080 Ti FEのほうがTITAN RTXよりも高いクロックを示す。PUBGなど一部ゲームで解像度が低い時にRTX 2080 Ti FEのほうが良い結果が出るのは、このクロック差が原因であると推測できる。解像度が上がってCUDAコアの多さが効く状況になると、TITAN RTXが輝き始めるのはこうした理由が考えられる。

 しかし、TITAN RTXのクロックが低くなる原因は、TITAN RTXがサーマルスロットリング状態に入った、というわけではない。実際、TITAN RTX側でPerformance LimitのThermalフラグが立ったかを追跡したところ、計測を終了するまでフラグが立つことはなかった。Performance LimitのPowerフラグ(GPU電力消費上限)はずっと立ちっぱなしだが、これはRTX 2080 Ti FEでも同じこと。

 以下のグラフはHWiNFOで読み取れるGPU Power(GPUの消費電力をセンサー情報などから算出したもの)を追跡したものだ。

「Battlefield V」起動~プレイ中におけるGPUパワーの推移。

 これによるとTITAN RTXはおおよそ276Wを中心に±5W程度、RTX 2080 Ti FEは254Wを中心に±5W程度の幅で安定している。ちょうどこれが各GPUのTDPにほぼ一致する。これ以上のパワーを絞り出すならPower Limit自体の引き上げが必要だろう。

然れどもTITAN Vは死なず

 ここまでの検証において、TITAN RTXはTITAN Vを圧倒的なパフォーマンスで上回っている。だが、RTX 2080 Ti FEのファーストレビュー時では、TITAN VはCUDAを利用したレンダリングパフォーマンスにおいてRTX 2080 Ti FEを寄せ付けぬパワーを見せた。では今回のTITAN RTXではどうだろうか?

 まずは「V-Ray Benchmark」のレンダリング時間を比較しよう。CPUでレンダリングする時間も計測できるが、今回はCUDAだけを使用する。

「V-Ray Benchmark」のレンダリング時間。バーが短いほど高速となる。

 CUDAコアが256基増えた程度のTITAN RTXでは、TITAN Vの記録を破ることはできなかった。CUDAコア数よりもメモリーバス幅が大きく寄与していると考えられる。

 これだけではV-Rayで使われているエンジンとの相性という理由も棄却できないため「OctaneBench」でも比べてみよう。いくつかのシーンを様々な手法でレンダリングする時間をベースにスコアーを算出するが、総合スコアーのほかに一番スコアーの重み付けの大きいパストレーシング法のスコアーも比較する。

「OctaneBench」の総合スコアー。V-Rayとは違い、バーが長いほど高速となる。

「OctaneBench」のパストレーシングテストのスコアー。4本のバーはレンダリングに使われているシーン名だ。

 OctaneBenchでもV-Rayほどではないが、TITAN VがTITAN RTXより良い結果を生み出している。CUDAコアの計算力自体はVoltaよりもTuringのほうが進んでいるのだから、TITAN Vのスコアーの源泉は5120基ものCUDAコアと、HBM2メモリーのもたらす圧倒的な帯域にある。ゲーム、特にDXRパフォーマンスではTITAN RTXに敵うべくもないが、CGレンダリングのような用途ではまだTITAN Vに分があることがわかる。

 最後に余談として、動画編集作業におけるVRAMの使用量について触れておきたい。筆者がよく利用する動画編集アプリと言えばAdobeの「Premiere Pro CC」だが、このPremiereではレンダリングや書き出し時にVRAMを消費する。特にカラーグレーディングや複数ストリームの合成などを行なうと消費量が増える傾向にあるが、問題はどの程度の動画編集ならTITAN RTXが輝くか……である。

8Kカメラが調達できなかったので、4K@60fpsの動画を4枚張り合わせて8K動画を制作。これを3ストリーム重ねて、カラーグレーディングや合成処理を施し、テスト用プロジェクトを作成した。

 今回試した範囲では、8K動画を3ストリーム使った動画を書き出す際に16GB以上のVRAM消費を確認できた。しかし、1回の書き出しに6時間以上かかる非現実的な設定になってしまったため、TITAN VやRTX 2080 Tiでの比較には至らなかった。また機会があれば再チャレンジしたいところだ。

この時のVRAM使用量は16GB。ただPremiereのVRAM使用量は絶対量ではなく、搭載しているビデオカードのVRAM搭載量に対する割合で上限が決まるようだ。

タスクマネージャーでもVRAM使用量が16GBなのを確認。ただし、H.264エンコーダーの問題かCPU負荷が常時100%に張り付かず、たった2分の動画なのに6時間以上かかるという“テストとしては大失敗”な結果に……。

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