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マウスコンピューターがPC開発にかけた細かすぎるコダワリとは?

2018年12月18日 11時00分更新

――今回、配線するすべてのケーブルを黒色にしていますが、これも電源メーカーにお願いしたと。

黒岩 そうですね。デザイン面でリード線を黒色に統一することになり、電源も今まではレインボーカラーのリード線を使っていましたが黒色に統一させました。リード線の色は、電圧によって色が決まっていて、ひと目で分かるようになっています。このため、つくる側も難しくなっているのが今回のポイントです。単純に黒にするだけなんですが、信頼性を確認するために実際に電源ケーブルの加工を行なっている業者を訪ね、どういうふうに組み立てているのか、検査しているのか、全部見てきた上でこれなら大丈夫と判断し、黒色に変更しつつ品質も担保しています。

配線は見栄えにも関係するため、G-Tuneシリーズではすべて黒色に統一。電源も例外ではない

――ケーブルの色を変えるだけでも、かなり勇気のいることなんですね。

 正直やりたくないですよ(笑)。ものづくりから言ったらありえないですね。どの線が何ボルトの線なのかわからないので。

黒岩 つくる側は相当大変です。間違えないようにやって、検査も全数ダブルチェックするようにしていますので。

 電源の線は、作業指導も含めて何色の線をここに挿すという指示をし、作業者も身体で覚えてきているので、それを一気に替えなければなりませんでした。一歩間違えたら大変なことになるので、かなり文句を言われましたね(笑)。

黒岩 電源の内部の先端に行くと、色付きの収縮チューブで分けて作り込む必要があるんです。いままではそんな必要がなかったのですが、そういう一手間が加わっています。

――他社ではそこまでこだわった電源づくりというのは、あまり行っていないですよね。

 電源メーカーとヒアリングしている限りでは、そういった要望はないようですね。今回当社の方で、作業指導も含めて行なってきましたので、電源メーカーはおそらくほかのメーカーにこの技術を流用するかもしれません(笑)。品質管理も含めて。マウスの製品としてお客様に届けるときに納得のいく品質を要望としてだしています。海外のメーカーが同じようにこだわった品質を求めるかは、正直わからないですね。当社の要望を叶えるべく、時間をかけて作業しましたが、これはパートナー関係がしっかりしているからこそ成り立ったのではないかと思います。

優秀な電源メーカーは認証機関で一目瞭然

――電源に関しては、ユーザーも製品選びのポイントとして考えている傾向にあると思います。

黒岩 ユーザーは、より効率の高い電源を示す「80PLUS」の製品を求めるようになってきていますね。当社のデスクトップPCは80PLUS以上を取得したものを使っています。認証する機関のサイトへ行くと、有名所のちゃんとした電源メーカーは80PLUSを取得している数が多いです。もちろん当社が依頼しているメーカーもたくさん取っています。怪しいメーカーだと認証を取るのも非常にお金がかかるし、技術力も求められるので、取得できていないのかもしれません。認証が取れている数を確認すれば、電源業界が見えてくるのではないでしょうか。

――やはり品質と性能を併せ持たせるにはそうとうな技術力が必要と。

黒岩 効率が90%近くのところから、さらに上を目指すのは、とても大変になってきます。難しさが指数関数的に上がります。チタニウムやプラチナムを取れている電源メーカーは、それなりの技術力がないとできないですね。かといって安全性を度外視するのもダメなので、安全性を保ちながら効率を上げるのは大変なことだと思います。

――最後にマウスコンピューターが今後目指していることとは?

横関 今後も製品企画と営業部門、開発部門が蜜に連携して、ユーザーが求めるものを常に開発していきたいと思っています。今回のようにユーザーアンケートにも基づいて仕様を決めていくというのも新しい試みでもあり、今後もそういうことを取り入れつつ、続けていきたいですね。

 開発部門としては、営業部門からの要求もありますが、工場側、市場からの声にも耳を傾け、品質面にはこだわりをもって、安定してパフォーマンスが出せる製品を求めていきたいと思っています。そのためには、電源もそうですが熱的な設計も重要になってきますので、その点に関しては引き続き注力し、評価をしていきたいと思います。最近は、CPUもグラフィックスも熱い方向へ向いているので、なかなか難しい面もありますが、それらをどうやってきちんと動かせるようにできるか、今まで以上に追求してまいります。

 こうして開発の人にお話を伺っていると、安易な考えで自作をするより、こうしてしっかり検証され、安定したパフォーマンスが保証されているBTOマシンを選んだほうが、安心して利用できるだろう。マウスコンピューターの「そこまでやってるんだ!」というこだわりは、日本メーカーらしい気質と誇りを感じた。

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